◆大阪の中心、淀屋橋から東へ歩いて5分、
ビルの9階に現代美術の本格派の企画画廊、ギャラリー風がある。
『コラージュを含む和紙の絵画』とはどのようなものか。案内状では伝わってこなかった永山裕子氏の作品のイメージを直接、この目で確かめようと展覧会の初日に訪ねた。
蓮の花びらが風で落下するのを描いた作品『東のかぜ』は
法隆寺金堂の壁画を連想させる。何がどうと名状しがたい絵だが、花びらの明るい赤紫、緑青のようなグリーン、古色との配色が調和し旋律を醸し出す。しばし作品に惹かれる。
そのうち蓮の花びらがまるで、散華でもするかのように動きだす。作者の相当の表現力と構成力を思う。
最初、出来上がりの作品の倍の大きさで、制作を進めていたが、例えば『飛天』を描こうとしたが、しかしあまりにもそれらしくなるので意図に合わずやめたりしているうちに、最後に今のサイズに落ち着いたとのことだ。その間、何を削ぎ落としてきたのだろうか。
ギャラリー正面に架かる作品『水の上と下』は
雁皮紙に蝉やあげは蝶の羽、鳥の翼、天草、金紙、石膏と胡粉を混ぜて作った白い半球体のモチーフが風に舞うようにコラージュされ描かれている。それらは羽の透明感、軽さ、神秘性、飛翔をイメージさせる。
各々のモチーフを固定することによる雁皮紙の伸縮が、作品全体に偶然的な統一のある波を起こしている。離れて見ると心地よさと軽い緊張の造型を見ることができる。この作品で永山裕子氏が表現したかったものは、目に見えないものそれは、空気であったりする。ここでも、動きを感じさせる表現力は卓越したものだ。
話は一転、作者は中学3年の時、クラス担任と進路相談をした折、「絵の方に進みたい」と言ったら、画廊巡りを勧められそれから毎週授業を抜けて先生が教えてくれた銀座の画廊を回ったそうだ。(勿論公欠扱いです。)
恵まれた環境から東京芸大に進んだ彼女は、面白いことにラグビー部のマネージャーになり、愛知芸大でラグビー部の主将を努める奈良美智氏と合同合宿で出会い友人になる。ある有名塾の美術コースで共に講師をしたり奈良さんのスケッチのモデルになったこともあるとか。
『水の上と下』の作品では、立秋の頃、蝉の羽が欲しくて探していた時、蝉が力尽きて道に落ちているがまだ少しの生命を燃やしわずかに動く様子を見ていると、横に同じように獲物を狙っている猫がいたと笑って話してくれた。
天性の才能とオーラを発する作者のさらなる飛翔を期待したいものです。
○雁皮紙:薄い上品な和紙/がんぴし)
|