◎以前シティギャラリーを訪ねた折、たまたま旗谷氏の常設展示をしていが、そのとき7月にまとまった個展をすることを聞き楽しみにしていた。過去、何度か他のギャラリーで小品を見ていたが、これだけの数と大きさの作品が揃い、作者の画家としての軌跡も同時に垣間見ることができた。写真のコラージュ表現でありながら、リアルなドローイングもあり本物のアクセサリーを使ったりの気ままで不思議な表現でやたら心に残る作品で充実した時間であった。
展覧会の最終日に作家の旗谷吉員氏が搬出に来られるのに合わせて取材をした。
旗谷氏とは初対面同様であったので、アートナビのことや以前何度か氏の作品を見ていること告げると、それまでの緊張の表情から打ち解けた会話になりコラージュ作品についての解説などを丁寧にしていただいた。途中、写真のような美人の友が鑑賞に訪れたので彼女に旗谷氏を譲ったが、熱心に説明をされてる言葉の中で「自分の作品は構成が中心」と話していたのが印象的だった。
また、個展は会期末を選んで観に来るというギャラリストに旗谷作品の魅力を尋ねてみると、「素朴なドローイングとリアルな写真で名画を表現している」「単なるまとめるだけのコラージュや構成でなく、一つ一つのパーツの写真をよく見つけ、絵にされるものだ」「今のコマーシャル写真や雑誌の切り抜きが名画のポーズの一部になったりして面白い」「どこかで見たことのある原画を知っているとユーモラス」「それが旗谷作品のスタイルになっている。」等の的確な作品評を聞いた。
実際、旗谷作品がここまで来るのに27年の歳月が流れている。それだけに独自の技法と表現のコラージュ作品を完成させた。学生時代のデッサンの時間に小磯良平氏に批評されたことがコンプレックスになったのかデッサン大好き、上手い旗谷吉員氏はその後、デッサンが途中で分からなくなり行き詰まり写真の世界に入りカメラを持つようになった。
作者よると、印象派が日本の浮世絵に啓発されて、そのエッセンスを彼らの作品の中に取り入れ新機軸を打ち出したように、自分も写真を使うことで西洋絵画コンプレックスを克服したい。簡単にいうと自分の中の写実コンプレックス、写真のようにリアルに描かないと上手くないというコンプレックスは写真を使うことによって克服できるという。
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