男と女の掛け合い。 |
男・・マリーアはブエノスアイレスの娼婦。不思議な構成のタンゴ・オペレッタ(軽い歌劇。)。聖書のパロディーでもある。娼婦マリーアは、二日酔いの神様が、世界創造のある日手元が狂って間違ってつくってしまった出来損ない。 |
女・・このタンゴ・オペレッタは。女の痛みへのオマージュ(敬意)。そのことで欲情する男へのいたわりでもあるオペレッタ。マリーアとはタンゴのことでもあるんだわ。これは。 |
男・・このタンゴ・オペレッタがすごいって、すぐわかる。いきなり聴き手を核心に導くんだ。俺がさっき読んだ歌詞のはじまりを覚えてる?「今がそのとき」、これが冒頭なんだぜ。「今」という時、つまり現在が「そのとき」、定められ予告されている時になるんだ。つまり、「今」という現在は過去の予言の成就なんだ。 |
女・・予兆は記憶の回復としてある、ってことかな。 |
男・・We are so sad, because we are so poor as to
need own enemy.
We must create own enemy, because we are so poor as to protect
ourselves. |
女・・日本語で言ってみて。もう一度 |
男・・ぼくらはひどく悲しい。自分の敵を必要とするほど心が貧しいから。ぼくらは自分の敵をつくらねばならない。自分を守らねばならないほど心が貧しいから。 |
女・・汝の敵を愛するほどの愛は私たちに与えられていないのね。 |
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◎2月20日、ワイアート
ギャラリーで展覧会作家の清さんと近畿大学の芸術学科の4年生で在日3世の馬 侑子(マ ユジャ)さんのとの掛け合いの朗読があった。同じ仲間のノイズ音響と影絵のパフォーマンスが斬新で単調になりがちな台詞に書き割り的な効果をプラスした。清さんの丁寧さと懸命さ。馬さんの朗々として艶っぽい言い回し。それらのコントラストが印象的だった。 『娼婦、二日酔い、女狂い、子宮、神の子種、聖処女マリア、欲情する男、みだらな高まり、淫らな、セックスの欲望、エロス、強姦、乳房、雄の欲望、性欲、愛と嫉妬』全編を通じ性を喚起する過激な言葉で終始するが、そこに清
眞人が描く人への細やかな愛情と豊かな表現世界の原風景と源泉がある。 |