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Artnavi Report 特別展「祈りの道〜吉野・熊野・高野の名宝〜」関連イベント
世界遺産登録記念国際シンポジウム「紀伊山地の霊場と参詣道」
日時:2004年7月24日(土)開演 午後1時30分 会場:NHK大阪ホール
主催:三重県、奈良県、和歌山県、世界遺産登録推進三県協議会、
大阪市立美術館、NHK大阪放送局、NHKきんきメディアプラン、毎日新聞社
後援:文化庁、社団法人ユネスコ協会連盟

2004年(平成16年)7月24日、大阪は天神祭の宵宮で連日熱帯夜が続く中。大阪・中央区のNHK大阪ホールで『世界遺産国際シンポジウム(紀伊山地の霊場と参詣道)』が開催された。これは大阪市立美術館で8月10日より開催される特別展「祈りの道〜吉野・熊野・高野の名宝〜」の関連イベントで、参加者は事前に希望者を募る方法で満席になった。入場者の顔ぶれは、年令、男女に偏りがなく、広く青年層から中高年まで幅広く参加していた。また世界遺産に指定されたご当地の県や市町村の自治体や社寺等の関係者もこぞって参加されたようだ。(吉野・金峯山寺(きんぷせんじ)田中良典宗務総長の姿もあった。)
事前に関係者から文化庁長官の
河合隼雄氏がこの講演に非常に意欲的であると聞いていたのでどのようなスピーチを聞けるか個人的にも楽しみな講演となった。
(ストリート・アートナビ 中田 耕志)
(いのち)の森、未来への道標(みちしるべ)
平成16年7月1日、日本固有の山岳宗教である修験道の
霊場「吉野・大峯」、自然崇拝に起源する神仏習合の聖地
「熊野三山」、そして真言密教の根本道場「高野山」の3つ
の霊場をもつ悠久の山岳地帯「紀伊山地」が、「紀伊山地の
霊場と参詣道」という名称でユネスコの世界遺産に登録されました。



わが国にとってかけがえのない“自然遺産”であり、人類
共通の“文化遺産”でもある「紀伊山地」。
本シンポジウムでは、その奥深い魅力を紹介しながら、この
「日本の宝」を「人類共通の宝」として次世代に伝えていく
ために何をなすべきかを、国際的な視点から探っていきます。


第一部 基調講演「日本の自然と文化」
◎講師:
文化庁長官 
河合 隼雄(かわい はやお)
1928年兵庫県篠山市生まれ。臨床心理学者
1952年京都大学理学部数学科卒業後、スイスの
ユング研究所に留学。日本におけるユング心理学の
研究を確立。
京都大学教授、国際日本文化研究センター教授を
経て、1995年から同研究センター所長。
2000年文化功労者受章。2002年文化庁長官就任。
第一部は文化庁長官 河合 隼雄氏の基調講演だが、面白いのは氏が青雲の志を抱いたころ、日本は先の大平洋戦争に負けた頃だった。それまでの日本は神も仏も一緒だった。(『神風』が吹くこともなく)戦争に負けた体験が契機になって、長官は
米国の科学的知識を学ぶことで日本に役に立ちたいと考えた。さらにスイスのユング研究所に留学、日本におけるユング心理学の研究を確立した氏が語るには、現在の一神教や多神教の宗教はその特徴や現象面では多様だが、その根本を尋ねていくと宗教として相互に共通する普遍的なものがあることに気付く。だから今回の世界遺産を含む日本文化の凄いことは日本の固有的なものであるばかりでなく、世界的に普遍的なものとして(他の国々にも通用する)認められた。世界に繋がっていくそんなところで評価されている所に値うちがあるからだと話された。
また、修験道では教典は要らない「松風を聞け」という言葉を引用しながら、聴衆に自然科学を大切にしながら自然を満喫し、自然と一体化することを勧められた。

「日本の自然と文化」をテーマに:

・修験道では「松風」が教えてくれる。
(修験道:日本独自の宗教で、山岳修行によって超自然的な力を得ることを目的とする。)
・日本の宗教は一神教から多神教までの多様性がある。
・今回の文化遺産は日本の文化はすごいことを米国やヨーロッパなどの
世界中が認めたこと。

・宗教の根本は普遍的なものでヨーロッパ等と共通する
ところがある。宗教性の本質とは何かを考えると。
外国人から見て日本人の信仰は
例えば、滝を拝んでいるのか、水を拝んでいるのか、また水ならどこまで
拝んでいるか、曖昧な様子に見えるらしい。
昔は、人間も自然も一緒で、花も草も石も自分も一緒だった。
思わず手を合わしたくなる存在「山川草木」をひっくるめた自然が
その対象となる。西洋的な自然(nature)に対して
日本の自然(じねん)は自ずから然りである。
・紀伊の参詣道は、手を合わせたその場所が一番大事。
道のどこも大事。その人がどう考えてるか佇まっているかによって
大切な場所になる。どこか道の途中を歩いていても値うちがある。
それでいいのではないか。
修験道の険しい道を気に入ればそこに行けばよい。
自分はぶらぶらと歩きたい人はそうすればよい。

・曼陀羅では高野山の曼陀羅には胎蔵界曼陀羅と金剛界曼陀羅が
あって、中心に大日如来があってそれを取り囲む図になっている。
熊野詣の曼陀羅、那智の滝の曼陀羅、チベット密教(多く有るが)
の曼陀羅と色々あるが、一種の世界観を表している。
日本の曼陀羅には、自然界のものが多く出てくる特徴がある。
(木や石、滝や日月など)
・自分が学生の頃、神や仏を一緒にして戦争に負けた体験が
契機になって、米国の科学的知識を学ぶことで日本に役に立ちたいと考えた。
米国に行くと「カール・グスタフ・ユングの心理学」を学び、曼陀羅が
世界に通用すること気付いた。
・ベトナム戦争を通じ、欧米人は人間の心は広く深いこと
また東洋の精神の深さを知る。

・本当にすごいものは、普遍性がある。
修験僧は教典は要らない「松風を聞け」と言う。

・神、人、自然→キリスト教でははっきり物事を区別する。
それが、自然科学を発達、発展させてきた。
・しかしキリスト以前のケルト文明(ヨーロッパ、とくにアイルランド)にあって
ケルト人は文明を発達させたが文字がなかった。
文字があると風が神であると限定してしまう。

・修験僧は松風の音でそれをやっていた。自然を大切にすることで。
現在は自然を人間から切り離し、結局は人間の心を失っているのではないか。

・この世界遺産は日本の固有的なものであると共に、
世界的に普遍的なものとして(他の国とも通用する)世界に繋がって行く
そんなところで評価されている所に値うちがある。

・ヨーロッパの近代科学も大事だが、人間を自然から切り離すことを
あまりやりすぎると、切れてしまって(公害等の)失敗がおこる。

・人間と自然は微妙な関係。(ヨーロッパ人は一度、人間と切り離してしまう科学。)・科学技術、自然観察ばかりでなく。自然と繋がっていかないとダメ。
歩いてみる。ぼーっと立ってみることで自然との一体感、恐れの体験をしてみる。
それが、あの場で体験できる。
・自然科学を大切にしながら自然を満喫し、自然と一体化する皆さんを
お迎えしてくれる。
・世界遺産として認めてもらったものを大切にしたい。

アナウンサー:「私も紀伊山地にいって、松風に耳を澄ませたい。」

取材・写真・Web Design:2004年7月24日/掲載:8月2日
ストリート・アートナビ 中田耕志
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Osaka Municipal Museum of Art
「紀伊山地の霊場と参詣道」世界遺産登録記念
特別展[祈りの道]〜吉野・熊野・高野の名宝〜
会期:2004年 8月10日(火)〜9月20日(月・祝)
会場:大阪市立美術館 
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