足立区国民保護協議会関連条例 反対討論

伊藤 和彦議員


 ただいま議題となりました、第10号議案 足立区国民保護協議会条例、第11号議案 足立区国民保護対策本部及び緊急対処事態対策本部条例に対して、日本共産党足立区議団を代表して、反対の立場から討論を行ないます。
 この2つの条例は、2004年6月、自民、公明、民主3党の賛成で成立した、有事法制を具体化する、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」に基づき、足立区国民保護計画を作成し、この計画を実施するための組織を立ち上げるための条例であります。有事法制とはアメリカの海外侵攻戦争に追随して、日本も参戦していくための法制で、平和憲法と相いれないものです。
 国が作成を求めている国民保護計画とは、着上陸攻撃(本土決戦)や航空攻撃(本土空襲)など武力攻撃事態と、自爆テロ・サリン散布・原発攻撃などの緊急対処事態を想定し、64万足立区民の東京都外への避難を含む避難計画を組上げるものです。 しかし着陸上陸進行・本土決戦などの武力攻撃事態は現実には考えられず、政府でさえ「防衛白書」で日本への武力侵攻がないことを認めています。
 仮に緊急事態が起きたとしても、その判断は誰がするのか、政府が事態を認定して緊急事態対処方針を決定し、避難措置を指示し、都道府県が避難指示を出し、区市町村が避難実施要領を作成して、やっと、住民が避難を開始できると言うものです。しかも区は「そういう事態が発生したら区として災害対策本部などで活動できる」と答弁しました。
 実際、想定されている「国民保護協議会」は、区の防災対策本部のメンバーとほぼ同じであり、区で対応できるというならつくる必要がないものです。国の言うマニアルどおり「保護計画」を作っても、その時々の事態により、住民の避難、誘導も逃げる方向も変わることになり、現実的ではありません。
 また、「法定事項であり自治体で考える余地がない」つまり、国がつくれと言うから作ると説明しました。しかも、国が言っている「2007年3月までにつくる」というのは政府の希望であり、自治体が従う必要はありません。
 国民保護法に基づき高知県大月町が提案した国民保護計画などのための2つの条例は「いまの時期に、武力攻撃などを想定した国民保護法は、時代錯誤。現実離れしている。平和憲法と相いれず、憲法無視だ」と3月16日、町議会で否決されています。同じく土佐市議会は、昨日、全会一致で「国民保護法」に基づく2つの条例を継続審議とし、廃案になると報道がありました。
 このように、この条例が規定するありえない武力攻撃事態が問題であり、実際には何の役にも立たない国民保護計画も、計画ができて訓練が繰り返されれば戦争やテロへの不安や疑心暗鬼を拡大し、地域社会を臨戦態勢化していくもので、それは海外派兵の後方を固め、直接戦闘に加わらない一般国民の「銃後の社会」を生み出して行くことを意味するものです。
 国民保護計画に関する問題でも議会での議決事項は、この2つの条例だけで、その後は議会に示されても議決事項にならず、議会「報告事項」になって、一人歩きをしてしまうものであります。地方自治体が有事法制に組み込まれることは自治体が憲法破壊の道具にされることになります。
 イラク戦争と有事法制強行から3年、武力で平和が創造できないことが白日のもとに明らかになりました。自治体やNGOの国際世界での活動が広がるなかで、平和の創造や紛争の解決のために自治体が果たす役割も大きくなっています。いま、足立区がすすむべきはこんな憲法破壊と臨戦態勢化の道ではありません。このことを指摘し、討論を終わります。