06年第一回定例会(2月23日から3月24日までの30日間)

1、本会議質問

○一般質問  伊藤 和彦議員

障害者支援対策について問う

○伊藤和彦議員 私は初めに障害者支援対策について質問します。

【自立を阻害する「自立支援法」】
 自民・公明両党が昨年10月、日本共産党などの反対を押し切って可決・成立させた障害者自立支援法が今年4月から順次施行されます。障害者福祉サービスや公費負担医療制度は、4月1日から原則定率1割の負担になります。その結果、通所施設の場合で19倍の値上げになるなど、障害者は大幅な負担増にさらされます。政府は所得の低い人などを対象に上限額を設けましたが、大幅な負担増に変わりはなく、障害者が福祉サービスや医療を受けられなくなる懸念が強まっています。
 こうした負担増から利用料が払えず、サービスが受けられなくなる事態が起きないようにすることが何よりも重要です。国の責任は明らかですが、住民に身近な自治体で障害者の暮らしと人権を守るため、独自の負担軽減策を初め、一歩でも二歩でも可能な改善を図ることが必要と考えます。

【負担軽減策を】
 京都市や横浜市など、各地で独自の負担軽減策を打ち出し、荒川区でも障害者自立支援法の施行に伴い独自に利用料負担10%を3%に、食事代負担を半額にする助成をすることなど、4月から実施します。荒川区では、在宅サービス利用者の利用負担については、@収入の認定範囲は本人から同一世帯に拡大されるが、家計の実態はこれまでと変わらないこと、A現在、ほとんどの利用者が無料であることを踏まえること、国及び都の利用者負担軽減策のみでは、家計に与える影響は極めて大きいと、支援の必要性を示し、所得制限を設けず、在宅サービス利用のすべての障害者を対象にしております。
 足立区でも5割前後の障害者は、国や都の軽減対象にならないとも予測されています。区は我が党の12月議会質問で独自の軽減策を拒否しましたが、これまでの態度を改め、荒川区のような立場に立って障害者負担軽減策を講じるべきと思うがどうか、区長の考えをお聞きしたい、答弁を求めます。

【通所施設について】
 次は在宅障害者支援の要となる通所施設について伺います。
 区内の法内通所施設は4月からすべて応益負担・食費全額自己負担となります。今まで多くの障害者が給食費は無料で作業所に通い、月8,000円から9,000円の工賃を受け取っています。しかし、今後は国基準で一食650円の食費と、3万7,200円を上限とする応益負担(利用料)で5万円を超える負担となる場合もあり得ます。
 26歳で区内の通所施設を利用している障害者の母親は、「今でも大変なのに、負担が増えれば、本人の働き分以上にお金がかかり、食事代が650円もかかり、生活がやっていけない。法律が変わると聞いて不安が増しています」と話していました。また、通所施設の職員は、「サービスを受ければ本人の負担が増えるので、利用者は通所の日数を減らすことにもなりかねず、施設での必要な支援を受けることができなくなる」「知的障害者は食事が大事なのに栄養管理が心配だ」と話しています。これでは作業所に行かずに、在宅で過ごす障害者が増えることは目に見えているではありませんか。障害者の通所を支える食事の負担を軽減して自立を支援する考えはないか。
 現在、通所施設利用者は95%が無料ですが、4月からすべて有料になり、平均で19倍の負担増と言われています。障害者の通所を励ますために、区としてこうした負担増をやわらげ、障害者の負担増を抑えるため「(仮称)障害者通所激励手当」を支給する考えはないか、答弁を求めます。

【法外の作業所・ガイドヘルパー等について】
 次に、法外の作業所についてです。
 自立支援法対象外の日の出・東六月など7作業所については、現在、利用は無料です。そこに利用者が殺到することも予測されますが、負担増を招かないよう、当事者とよく相談することが大切と考えますが、どのように検討がされているのか。
 作業所はこれまで困難な条件の中で、障害のある人の活動拠点として大きな役割を果たしてきました。これを機会に作業所増設の支援を進めるべきと思いますがどうか、答弁を求めます。
 次に、地域生活支援事業に移行するサービスについて伺います。
 自立支援法では、地域生活支援事業が新たに設けられ、その運用は自治体の裁量に任されます。ガイドヘルパー・手話通訳、デイサービスなどは地域生活支援事業に入ることになり、10月から実施されます。負担増によるサービスの利用抑制によって、障害者が家から外に出て活動する自立への道が閉ざされることがあってはならないと考えます。
 区の裁量のもとで実施できるガイドヘルパー・手話通訳、デイサービスなどは、区が目安としていた今までの時間を減らさないよう、サービス量を保障するとともに、大幅な負担増が生じないようにすべきと思うがどうか。

【精神障害者の施策について】
 次に、精神障害者の既存のサービスについて伺います。
 まず、通所訓練施設など、精神障害者の施設、作業所についてですが、最大5年の経過措置があります。現在の負担の少ない制度を極力続けるべきと思うがどうか。
 次に、公費負担医療のうち、育成医療、更生医療、精神通院医療の3つの制度がこの4月から自立支援医療へと変わります。公費負担医療制度は、日本の医療保険制度を医療保障、生存保障の立場から補完する制度として社会保障、社会福祉充実の運動の中で生まれてきたもので、それぞれの目的から独自の役割を果たしてきたものです。
 精神障害者の担当医師は、「うつ病など薬を飲み続けることが大事なのに、負担1割になって治療を中断してしまえば元に戻ってしまう」、障害者団体からは「負担増の先行き不安などで自殺未遂も起きた」と心配の声が寄せられています。
 公費精神障害者通院医療費助成制度は、このほど東京都が単独補助を決め、関係者から歓迎されています。これによって区内でどのくらいの利用者が今までどおり通院できると推計しているのか。また、世帯非課税が要件となり、対象外になる障害者もいると聞いていますが、今までどおり無料で受けられるよう、都に対し強く意見をあげるべきと思うがどうか。

【就労支援について】
 次に、就労支援について質問します。
 自立支援法は訓練等給付による就労支援の強化があげらていますが、区は障害者作業所施設事業のAふらんきへの補助を廃止し、NPOが採用していた職員の人件費を削減しました。Aふらんきは、区内の障害者が通う36施設と連携し、共同受注、製品開発などで間接雇用を支えるための事務局を専任体制にして障害者の就労支援を安定的に進められるように区の補助を復活すべきと考えるがどうか。
 現在、障害者保護雇用事業(Jステップ)として、一般就労が困難な知的障害者を援助者とともに区内公共施設などの清掃で雇用・就労支援を行っています。知的障害者の働く意欲を支え、就労の場としてJステップ支援事業を拡充すべきですがどうか、以上、答弁を求めます。

青年雇用対策について

 次は青年雇用対策について質問します。
 小泉政治のもとで非正規雇用が増え、労働者の3人に1人、若者の2人に1人は不安定雇用のもとに置かれ、極端な低賃金や無権利状態に置かれています。23歳のある青年は、「派遣を始めて4年ほどたったが、もう6回職場を変わった。1週間前にそろそろ契約が終わると言われ、また、求人誌で職探しを繰り返す。時給900円で月14万円、使い捨てだなと感じる」と話し、25歳の青年は「コンビニのバイトをやって5年、時給750円で、深夜は950円、月約12万円。このままの収入で40歳くらいになったらどうなるのか」と言っていました。
 若者が今直面しているのは、人間らしい雇用が根本から破壊されている生活の苦しみだけではありません。生活悪化の責任を、青年自身の自己責任であるかのように強制され、思い込まされ、人間としての誇りや尊厳を傷つけられ、自己を否定するような、この二重の苦しみであります。
 欧米の青年政策の基本は、いかに職業的に社会に出ていくかに焦点があてられて、イギリスでニート対策というのは、義務教育終了後、進学もせず、就職もしなかったら、全員、職業訓練を受けるようにするという政策です。日本の場合は、学校での進路指導を通じて行われ、企業と学校との信頼関係の中で、企業が安定的に若年労働力を確保する形が高度成長期に確立し、最近まで基本的に続いていました。これが90年代以降崩れ、国の日本型経営の転換と構造改革政策の中で雇用の流動化が推し進められてきたのが実態です。
 人間を使い捨てにする非正規雇用の急増、長時間労働の蔓延、就職難などを打開することは、若い世代の切実な願いであるだけでなく、日本社会全体の現在と未来にとっての大問題であると考えます。
 我が党はこれまで青年雇用対策の確立・強化を一貫して取り上げ、ヤングジョブセンターの継続、機能拡充などを求めてきました。区は就労支援策としてあだち若者サポートステーションを設置し、ニート、フリーター等の自立支援のための事業を実施するとしています。
 私は先日、立川のNPOの育て上げネットを調査してきましたが、青年の置かれている状況・把握や捉え方、社会との接点のつくり方など学んできました。ここでは青年自身が自分のスタイルでやりたい仕事を見つける、自分の適職を知る、就労への一歩を踏み出す支援など、さまざまな事業を展開しています。
  青年の話をじっくり聞くことなど、青年の置かれている実態を区が聞き取り調査などでしっかり把握すべきだがどうか。また、調査結果をあだち若者サポートステーションなど、就労策に生かすべきと思うがどうか。
  青年がみずからの権利を知ることは、就労条件改善と生活向上の上で重要であると考えます。このほど東京都がポケット労働法を作成したと聞いています。区は青年の雇用と権利、労働条件を守るために、都から版権の提供を受けて増刷し、ポケット労働法をあだち若者サポートステーションの就労相談室を初め、区内諸施設に置くことや、区内専門学校、高校を卒業する人、成人を迎える人に配付するなど、機会をとらえて啓発、普及を進めてはどうか。
 区はニート対策を進めるとして、生活保護世帯の若年層などを対象としているが、就労指導の強化だけが目的とならないよう、対象となる青年の実態に即した対応をすべきと思うがどうか、以上答弁を求めてこの場からの質問を終わります。

答弁

○丸山 亮福祉部長 障害者支援対策のうち、10%負担及び食事代についてのご質問に一括してお答えいたします。
 区単独の負担軽減措置の実施につきましては、制度の詳細が示されていない状況の中で、他区に比べて障害者数の多い足立区において、どのような対応ができるかにつきましては、今後、国から示される政省令を考慮した上で検討してまいります。
 通所施設に通う障害者の支援につきましては、すでに送迎バスの運行経費や、重度加算配置人件費の助成など、区単独で必要な支援をしておりますので、ご提案の趣旨の手当を支給する考えはございません。
 次に、法外の作業所に利用者負担を求めるかどうかにつきましては、法内施設利用者との公平性を考慮しつつ、各運営団体と協議しております。
 また、作業所増設への支援につきましては、養護学校の卒後対策として、障害者自立支援法の動向を踏まえつつ、日中活動の場を整備する法人・団体等、引き続き支援してまいります。
 次に、地域生活支援事業に位置づけられる各サービスにつきましては、これまでは支援費制度の中で、個々の状況に応じて支給量を決定してまいりました。10月からの事業開始に向け、これまでの実施状況を踏まえつつ検討してまいります。
 利用者負担につきましては、障害者自立支援法に基づくサービスとの公平性を考慮しつつ、どこまで負担を求めるか、検討いたします。
 就労支援についてのうち、まず、Aふらんきについてお答えいたします。
 Aふらんきは平成15年2月にNPO法人格を取得し、NPO法人足立障害者相互支援ネットワーク会として新たに発足しました。その事務局体制整備を支援するため、時限的に2年間の人件費補助を実施し、16年度で終了したものです。
 障害者の就労支援については、今後、障害者自立支援法及び障害者雇用促進法改正に伴い、さまざまな就労支援策の拡充が予定されており、それらを活用し取り組んでいくとともに、NPO法人の健全な経営については、NPO活動支援推進室と連携し、相談支援を行ってまいります。
 次に、Jステップについてお答えいたします。
 障害者の就労支援については、障害者雇用促進法の改正等により、障害者の一般就労を進める動きが進んでいます。そのため就労定着支援に力を入れて、一般企業への障害者雇用をさらに進めていくことが重要課題であると認識しております。 社会福祉協議会が行っているJステップにおいても、一般就労に向けての努力をするとともに、就労の場の拡大に向け、区としても支援してまいりたいと存じます。
○神谷達夫衛生部長 私からは精神障害者の既存のサービスについてのご質問にお答えいたします。
 まず、作業所の経過措置ですが、現行制度では、法外の施設は利用者の負担はないが、職員の身分が不安定で、補助金給付も不安定な状況にあります。
 一方、新しい障害者自立支援法で法内施設に位置づけられれば、職員の身分が安定し、給付金も確保されますが、利用者に対し、法律上利用負担が生じてきます。
 支援法に規定する制度への移行までに5年間の経過措置がありますが、経過措置を続けるか、新法に位置づけられる施設に移行するかについては、個々の作業所がこれらの内容を勘案し、判断すべきものと考えております。
 次に、東京都の精神障害者通院医療費の自己負担に対する補助の影響は、現在、法改正に伴う約1万件の更新申請を受け付けている最中であり、現段階で推計することは困難と考えております。世帯で一定以上の所得があるため、自己負担が生じる対象者がおられることについては、法制度上の問題であり、やむを得ないと考えており、都に意見を述べる考えはございません。
○坂本寛文産業経済部長 私からは就労支援策外のご質問にお答えいたします。
 まず、聞き取りについてですが、あだち若者サポートステーションを中心として、若年者の就労支援策を進めていく中で、施設に来所する若者の実態を把握しながら就労支援策への反映を考えており、聞き取り調査については考えておりません。
 次に、ポケット労働法につきましては、6月に発行が予定されています。有益な冊子とは思いますが、経費の負担が必要になりますので、有償頒布も含め、版権取得について検討してまいります。
 最後に生活保護世帯の若年層に対する就労支援につきましては、福祉部において委託するものですが、専門知識と経験を積んだ実績のあるNPO法人と契約する予定です。契約の中では、就労とともに就学や復学を支援することも目的としておりますので、卒業後の自立に役立つよう、個々の実態に即した対応を図ってまいります。
 私からは以上でございます。

再質問

○伊藤和彦議員 私の質問にちゃんと答えていただけない分もありますので、再質問をさせていただきます。
 全体として非常に冷たく答弁されましたけれども、自立支援法の問題です。これは国の制度がまだ定まらないということはよく知っておりますが、私の質問は、そういう同じ条件の中でも、荒川区では、非常に画期的な救済策、支援策を講じました。これを足立区も同じような立場で講じなさい、区長の考え方を聞いているわけです。私はあえて言えば、区長の政治姿勢を問うておりますので、その点でのお答えをいただきたい。
 それから青年の問題ですけれども、今の青年の置かれている状況は、多分皆さんもご存じだと思いますが、今質問したとおり、青年の話をじっくり聞く、こういう調査が今必要だということなのです。これは私、立川でNPOの立ち上げネットのところへ行きましたけれども、そのことは非常に大事だと痛感いたしましたので、私の質問は、深刻な実態を区がきちっと調査して把握すべきだという点のお答えをいただきたいと思います。

再答弁

○丸山 亮福祉部長 自立支援法関連の再質問にお答えいたします。
 他区に比べて障害者数の多い足立区において、どのような対応ができるかについて、国から示される政省令を考慮した上で検討してまいります。
○坂本寛文産業経済部長 伊藤議員の再質問でございますけれども、平成16年第1回定例会で伊藤議員から同じ質問をちょうだいしておりまして、ここで若年者雇用の改善については、「ハローワークのヤングコーナー、あだちワークセンターのカウンセリングを通じ、カウンセラーの蓄積した経験、ノウハウを個々の若者に反映し、一人ひとりに合った就職が効果的であることはわかっている。足立区の進めている実態把握を踏まえながら、地道な一人ひとりの若者へ、若年者に適合したカウンセリング、これが改善する道だ。したがいまして、現行の実態把握で必要十分と考えている」というふうにお答えしたのですが、今回も伊藤議員おっしゃられるように、青年の話をじっくり聞く、そして理解するノウハウというのは、まさにあだち若者サポートステーションのNPOが力量を持っているわけでありまして、そこでじっくり聞いているということが一番大事でありますので、聞き取り調査を単純にするということは考えていないということでございます。