はねつき大会への道
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この記事は1997年の「こども会だより」3月号から5月号までに連載されたものを、そのまま掲載しました。「こども会だより」のバックナンバーについては、メールでお問い合わせください。
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「はねつき大会への道」・第1章 Vol.1
突然、育成会長がはねつきをやると言いだした。外の掃き掃除をしていた時のこと。ふとった雉鳩がバタバタと飛び立ち、1枚の羽が「フォレストガンプ」の映画のようにひらひら落ちてきたのを、ほうきで打ち込んだのだ。が、おおきく空振りしたらしい。頭にきて、羽をあげてはまた打つ。すると羽はほうきに絡み付いて、もう掃除どころではなくなっていた。
「羽子板はいくらで、どこで売っているの?」日本古来の伝統的な[はねつき遊び]はすたれにすたれ、羽子板は飾り物のみの姿となって、むくろじの種など打つこともない。いまさら子ども達に古臭いはねつきをやらすなんて、知ってか知らずかとんでもないことを言う。数日たって、「桐の羽子板と羽がついて、1700円。甲州屋にあります」ハッハッハ、ざまあみろ。子ども会財政逼迫のおり、10セットも買えないではないか。こうして私のお正月は、静かに落ち着いたものになると胸をなでおろしたのでした。
「はねつき大会への道」・第2章 Vol.2
さかのぼること数ヶ月前、ドッヂボールトーナメント抽選会と夏の懇親会を兼ねた日のことだ。数十チームの強豪を相手に、弱小子ども会のドッヂチームの運命は、昨年の覇者との1回戦試合と決まった。くじ運の悪さに悪酔いした育成会長は、佐藤体育委員長に、はねつき大会の参加を約束させられて帰ってきた。
「やってみれば、けっこうおもしろいよ」参加チームも少ないし、優勝トロフィーやメダルの手に入れやすさもドッヂほどではないとのこと。東京新聞杯の魅力と佐藤さんの口のうまさにうまく丸め込まれて、子ども会の財政状態や実力をも考えずに安請け合いをしてしまったらしいのだ。「1700円の羽子板は無理だけれど、1000円で6枚の羽子板ならどう?」どういうこと???。板を買って自作するので、ついては曲線切りができる電気ノコを買うという。頭が混乱すると同時にめまいがしてくるのを覚えた。

「はねつき大会への道」・第3章 Vol.3
工作はうまれつきうまくなさそうだった。
不器用なのだ。予算に恵まれない小さな子ども会では、できるだけ手作りをしないと器材や物が揃わないのだ。バーベキューコンロ、立脚テープルなどすべて手作りである。夏休みに作ったダンボール舟「どろ舟」は、デザインはまあまあだったが、設計ミスでバランスが悪く、ほとんどが沈没した。子ども達の抗議やお母さん方の怒りは、彼が首をかしげてゴマシオ頭を掻くだけでごまかされた
こんどは羽子板だ。グリッブは同じ太さで、打面の広い大きな羽子板の製作にかかる。確かに大きい。重さが市販の物とほぼ同じなのは、軽い材質を使っているかららしい。「大きければ羽に当たる確率が高い」こんな単純な理論で本当によいのか。不安がよぎった。そう思っているあいだにも板はどんどん切られ、整形されていく。「意外と器用に見えるね」30枚の新しい羽子板と、切り粉で髪から不精髭まで真白になった羽子板職人を見たとき、「ふっ」と、かすかにこれはなんとかなるかもしれないと思った。
はねつき大会への道・第4章 Vol.4
「サーブは下から打つこと。サーブの打ち返しも下から打つこと。」子どもの新年会は、はねつきの練習となった。多摩川河川敷に、はねつき用コートを書きセンターネットのかわりにリボンテープを結ぶと、猛烈な北風にテープがビュンビュン鳴った。打った羽はどこへ跳んで行くかわからない。ましてや、子どもたちは、サーブさえ特製特大の羽子板に当たらずに空振りするのだ。
(最近はねつきをやったことありますか?バドミントンと違いなかなか難しいのです)サーブでこの程度なのだからラリーなどは・・・。これは大変なことだ。と後悔しつつ、でも、まっ、参加することにも意義があるっていうし、根っからの楽天家で行こう。へんな安心感が芽生えてきてしまった。
はねつき大会への道・第5章 Vol.5
「参加することに意義がある」と言っても、子どもたちはいざ負けると、泣いたりわめいたりして思いきり悔しがる。応援の大人たちも言わずもがな想像がつく。1年生は間違いなく涙ポロポロを覚悟しなければならない。
朝、8人の選手を大会場まで引率して行くワゴンの準備をした。寒さと気の重さで、今にもとまりそうなポンコツエンジン音がなる。いったい子どもたちに何と言って励まそうか。「試合に出られるだけで、たいしたものなんだよ」と、もうすでに負けている言葉ではだめだろうか。「元気に勝って来い」などと言うのもかわいそうな気がする。
8時近くになるとポツポツ選手たちが集まりだした。それにしても育成会長と対照的に、朝早くから元気なこと。少しの時間を惜しんでおにごっこやおしゃべりをして遊んでいる。そうか、元気が一番。今日はおおいに、はねつきで遊んで、楽しんでこよう。それしかないか。車は府中街道から246へ、はねつき大会への道を進んだ。