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譲渡担保

1.譲渡担保の意義

譲渡担保は、実社会上の需要に即して全くの実定法上、その客体を担保化する制度的の外形を有しないところに、全くの契約として、事実行為として存在し、それらの事実の一部について裁判による権威付けと学説による整理が行われた結果の集積として存在していることに意義がある。(私は是こそが私法のあるべき姿ではないかと思う。)

仍、譲渡担保の意義とは、実際の取引における柔軟で実効性のある担保力の確保にある。

1.1.譲渡担保の経済性能の優位

従来担保法制における担保力は、民訴法および民事執行法に基づいて、抵当権の実行として保証されてきたが、是では、抗弁などがなされ又審判になった場合に経済上担保の効果を失ってしまうことになる。すなわち、強制執行を実行しようとしたときに抗弁がなされ、それについて裁判がなされるとなると証拠固めや裁判にかかる日数の経過による介在的価値の変動・損失が生じ結果として制度としての担保力は喪失する。譲渡担保であればこの点に於いて契約の解除を通告するのみで足り、その処理スピードにおいて圧倒的優位に絶つ上、訴訟費用を免れ得るなど経済上圧倒的優位に立っている。この点は特に有効な資産を有することがまれな中小零細企業対象の融資における担保の確保という意味ではまさに絶大な威力がある。そもそも実務上も、動産譲渡担保ではなく不動産譲渡担保が主流であることはこの点に起因していると考えられる。さらに私見ではあるが、本来、譲渡担保は不動産における強制執行を容易にするためにあり、動産は特に零細企業などの不動産資産を有しない脆弱財務体質企業への融資を可能とするために不動産における譲渡担保が転用されて現れたものである渡海するのが自然ではないだろうか。

1.2.譲渡担保の問題点

譲渡担保における問題は、いわゆる債権者による「丸取り」である。債権額を上回る価値のある担保物を、譲渡担保設定契約に基づく処分権能によってまるまる処分してしまうことである。仍公平性の問題がある(対内的効力の問題)。また、第三者に対してに如何にして対抗するかと言うことも問題である(対外的効力の問題)。これは特に動産に於いて問題がある。

2.譲渡担保の法源

譲渡担保の法源は、その法的構成によっても多少変動するが、基本的には当事者間の契約に基づき各種民法の条文が準用、類推適用される。

3.譲渡担保の法的構成

かような譲渡担保についてその効果について学説は法的構成を与えることによってより公平であるがうまみを失わない制度設計に腐心してきた。それを概観することで譲渡担保の問題点を更に深く観察したい。

3.1.信託構成

初期学説である信託的構成について解説する。この説においては、設定者から担保権者に対して確定的に所有権が移転した上で、私的保全のために担保権者設定者は信託義務を追うことになる。

3.2.所有権構成

中期学説である所有的構成について解説する。この説においては、設定者から担保権者に対して確定的に所有権は移転しない。所有権は分解的に把握され、それぞれがその一部を相互に持つことで大意等な関係になる。それによってお互いを牽制し、私的保全を図るのである。

3.2.1.授権説

授権説は、譲渡行為を一種の一度きりの授権行為として見なす。授権される内容は、担保物に対する支配権である。

3.2.2.二段物権変動説

物権が移転する段階を二段階としてとらえることで、所有権の分解的把握を説明する。譲渡において第一の物権変動が起こり、私的実行の段階になって第二の物権変動が起こり最終的に完全な所有権移転が完成するととらえる。

3.2.3.物権的期待権説

設定者、担保権者の所有権取得の期待権という形で所有権を分解して構成する。譲渡によって所有名義が担保権者に、所有権的処分権が設定者に残るとする。これによって両者は不完全な主流権をお互いに持つことでこれらが交叉することで、私的保全を図る。

3.3.抵当権構成

近時有力説である抵当権的構成は、譲渡担保における譲渡をデコイとしてとらえ、これはまさに担保権の設定であるとすることで、担保法の法体系に位置づけその保護の類推によって私的保全を維持する。

4.効力問題

譲渡担保はその行為を譲渡に化体しているために、どちらが確定的に目的物を処分できるか、つまりは当事者間の私的保全上の問題がある。つまり設定者間における権利義務問題としての対内的効力問題である。次に、その譲渡という外見から、それがまさに「譲渡」として外部からみられた場合に起こる対外的効力問題が存在する。これらを各学説において検討する必要がある。そのことを等して各学説の特徴を把握したい。

4.1.対内的効力

4.1.1.担保権者の権利義務

4.1.2.担保設定者の権利義務

4.1.3.不動産譲渡担保における公示方法

4.2.対外的効力

4.2.1.担保権者側第三者との問題

4.2.2.担保設定者側第三者との問題

また、共通問題として、譲渡担保の被担保債権の範囲などが問題になる。これらについては、所有権的構成の解説において合わせて解説する。

5.流動産譲渡担保

流動産譲渡担保は、担保目的物が流動産であるという特殊性から、まず流動産の把握問題が生じ法的構成もまた異なる方法が必要である。この点について言及する。

6.私見

以上の調査に基づいて、判例百選を参照しながら私見を述べる。

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