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1.譲渡担保の実務

譲渡担保は実務から生まれた。よって譲渡担保の実務を知ることは重要なことである。学説は、譲渡担保について法的構成を与えることによる設定者と担保権者の公平を譲渡担保のうまみを失わずに実現しようとした物であることは前述の通りである。

1.1.譲渡担保設定契約

一般的な譲渡担保設定契約を資料として添付した。これを事例として解説したい。

1.1.1.不動産譲渡担保契約

本件契約は、消費貸借契約とそれに対する担保として当該不動産の譲渡および、使用借契約を結んでいる。ここでの使用貸借契約は、賃料として消費貸借の弁済を受ける意味ではなく、単に借家権の発生を封じるために設定されているにすぎない。よって譲渡担保設定契約としての重要な条項は2条および3条である。3条一項によって設定者の受戻権・取戻権を、同2条によって担保権者による私的実行と清算義務を規定している。

1.1.2.不動産譲渡担保の登記実務

契約書にもあるように、登記原因を譲渡担保設定契約とした所有権移転登記と解除権留保特約の附記登記を行う。この際、債権やおよび債務者そして債務内容が同じく登記される。

1.1.3.私的実行が行われた場合

譲渡担保実行の条件がそろうと、担保権者が譲渡担保実行通知を配達証明郵便によって設定者に対して発送する。その上で目的物引き渡しが行われて換価される。その上で清算されることとなる。私的実行が行われた場合、附記登記が抹消される。

1.1.4.弁済が完了した場合

弁済完了の場合、不動産譲渡担保契約が終了したことを原因とする所有権移転登記が行われ、附記登記は抹消される。


1.2.1.動産譲渡担保設定契約

1.2.2.動産担保設定契約(処分清算型)

本件契約では消費貸借契約とそれを担保する動産の譲渡契約が結ばれている。1条および2条によって消費貸借契約が、3条以下は譲渡担保契約を定めている。3条一項において設定者の受戻権・取戻権を規定し、3条2項によって私的実行と清算義務を規定している。また、4条によって動産の非占有担保化による担保物の私的保全のための対策として担保権者側の権利を規定している。4条一項について設定者の善管注意義務を、4条2項によって公示のための手段を施す義務を設定者に負わせている。5条に規定する使用貸借契約は不動産譲渡契約におけるのと同趣旨である。


1.2.3.動産譲渡担保における実務

動産譲渡担保については確固たる公示手段がないので、目的物に対してネームプレートを打ち込み、また債権者および債務者、債務内容を記し、譲渡担保契約をした旨を記した公正証書を作成する。(登記簿を備えた動産、自動車などについては、不動産同様の登記を行う。ちなみに、債権を譲渡担保物とした場合、商業登記に債権を譲渡担保設定契約に基づき譲渡した旨の登記を行う。)

1.2.4.私的実行

譲渡担保契約に基づき譲渡担保実行の条件がそろうと、担保権者が譲渡担保実行通知を配達証明郵便によって設定者に対して発送する。その上で目的物引き渡しが行われて換価される。その上で清算されることとなる。

1.2.5.弁済がなされたとき

譲渡担保契約が終了し、公正証書は破棄され、動産に対して行われていた登記などは抹消され明認方法としてのプレートも破棄される。

1.3.1集合動産譲渡担保契約

1.3.2.集合動産担保設定契約書

本件契約において、証紙貸借契約とそれを担保する集合動産譲渡担保契約が締結されている。集合物譲渡担保契約は担保物の変動が予定されている。従って集合物の特定およびその管理が債権者つまり担保権者にとって非常に重要である。1条によって集合物の保管場所の特定を、2条において消費貸借契約が設定されている。3条において譲渡担保が設定されているが、3条によって担保物の私的保全がなされているのは動産譲渡担保契約における同一であるが、4条および5条によって集合物に対する状態監視を規定している。これによって集合物の変動状況を監視できる。7条によって集合物の特定時と私的実行を規定した上で、同条2項に清算義務を規定している。

1.3.3.集合動産譲渡担保の実務

集合動産は流動することが前提となっており、日頃の流動状態の確認が重要である。多くは倉庫の中にある在庫商品を供することが多いので、定期的に帳簿などのコピーや集計表の報告を設定者に要求する。また、集合物の性質によっては困難であるが、保管場所における明認方法はとしての表示は不可欠である。このときも動産譲渡担保と同じく公正証書を作成する。

1.3.4.私的実行

動産譲渡担保と同じく処理される。

1.3.5.弁済が完了したとき

弁済が完了したとき、契約が終了され公正証書は破棄され、明認方法として行われたことも元に戻される。

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