2004年11月に栃木県宇都宮市で行われる関東甲信越静ブロック造形教育研究大会での、私の提案要旨です。大会冊子に収録予定。PCを使った美術の授業の実践をまとめてみたものです。今に時代、PCを使わないクリエイターは多分いないでしょう。レオナルド・ダビンチ大先生がご存命であらせられれば、絶対PCを使っていたはず。しかも、マックを。しかし、よく考えればそれもここ7、8年のこと。爆発的に普及したということですよね。これだけポピュラーになたのだから、発想や制作の補助具としてPCを積極的に授業で使おうと言う趣旨です。大会の様子は後日アップします。
アイデアを練るツールとしてのパソコン
 千葉県立茂原高等学校  斉藤 望

1 提案理由
パソコンが広く普及した。特に映像はコンピューターによるデジタル処理が可能になったことで、新しい表現を獲得し、今いちばん熱いジャンルだ。
コンピューターを教育の場に取り込む試みは古くからある。しかし、美術教育ではどのような利用が可能なのだろうか。黒板とチョークのアナログ教具をデジタル機器に置き変えるように、デジタルな筆として活用すべきなのか。あるいは、映像のようにPCを使った新しいジャンルを積極的に開拓すべきなのか、悩ましいところだ。
本校では97年のパソコン室の更新をきっかけに美術の授業にPCを導入した。
使い始めた頃の障壁は、PCの起動・終了の仕方、アイコン・クリック・ドラッグ等の言葉、新規書類作成・保存など、基本操作を指導しなくてはならなかったことだ。この授業はいったい、美術なのか情報なのか、悩んだ。さらに、アプリケーションの使い方の指導に時間を取られ、自分がパソコンのインストラクターのような錯覚にすら陥った。限られた授業時間の中で、果たしてパソコンを使うメリットがあるのか疑問だった。しかし、この2.3年で生徒の殆どがキーボード入力のできるリテラシーを持ち、それらは解決された。ようやく、PC環境が整ったのだと思う。
そこで、平面構成という古典的な題材を、パソコンを使うことで、さらに掘り下げた学習ができるのではないだろうかと考えた。
構想を練る段階でパソコンを使えば、完成予想が簡単に立ち、しかも具体的にイメージできる。自由に、ストレス無く、修正・変更がシュミレーションできる。人間にはできないこと、例えば同じ物を2つ以上瞬時に作る、などPCの得意とするところだ。
これまで、紙と鉛筆で行ってきた事をパソコンで行えば、時間の節約にもなり、アイデアも出しやすい。(生徒は一度描いたものを中々捨てようとはしないものだ。)。アプリケーションの使い方の指導は最低限に抑え、造形のトレーニングをPCで効率よく行えるはずである。
 一方、「色の峻別」や、目標の色を「混色して再現すること」、「筆を使い正確に塗り別けること」など、美術の基礎技能にはこだわりたい。だから、出力をそのまま貼り付ける事はしない。構想はパソコンでバーチャルな世界で行う。制作は筆と絵具の実在を扱う。

2提案内容
上下に名前、側面に自分の顔が描かれた箱を作る。箱の各面は氏名の文字と顔で構成する。1年生の最初の課題として、絵の具の混色で目的の色を作る技術と、色彩の峻別、筆の使い方を習得する。
(1)構想を練る。  
自分の名前をモチーフにドロー系ソフト(paiter6)を使って平面構成する。文字の配置拡大縮小反転などの変形。レイヤーの上下・透明度の調整・配色の検討し完成をシュミレーションさせる。
(2)画像処理入力
デジタルカメラで撮影した自分の顔をパソコンに取り込む。背景を消して、画像を補正し、フィルタをかける。表情にあわせて色を置き換える。喜怒哀楽の4表情を作る。
(3)転写・着彩
 出力されたものを上からなぞり転写する。出力と同じ色を作り、着彩する。
彩度の高い色以外は限りなく同じ色で着彩し、正確に塗り別ける。
(4)組み立て
各面を組み合わせて接着し、完成させる。

3今後の課題
(1) 美術で使えるアプリケーション・周辺機器の確保
今年度本校のパソコン室が更新されるが、アプリケーションから周辺機器まで県内新統一仕様となる。リース契約なので、学校独自にアプリケーションを追加する事はできない。そうなるとPhotoshopやIllustrator、Flashなど美術科の定番が使えない大問題が浮上する。
(2)いつでもどこでも使える環境
 生徒は構成のアイデアを練るために、パソコン室へ移動して作業した。じかし、アイデアは浮かんだときに形に残すのがベストだ。紙と鉛筆でメモを取るように、もっと、気軽に生徒が使える環境を構築できないものだろうか。PDAや、カメラ付携帯など活用したい機器だ。

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