今年から藤本卓氏が加わり、にぎやかになりました。中城氏は額縁まで空豆型のばりばり変形絵画で、しっかり、中城ワールドを展開させました。氏のアイデアは尽きるところを知りません。確信犯的なところがあって、鑑者の反応を予想して楽しんでる節があります。山本氏はこの後にも個展を控え、寝る時間を惜しんで描きまくっていました。枯れた感じで、余白や間の取り方が上手く、いつもながらさすがです。予備校の生徒さんがたくさん来て、先生の絵を穴の空くほどじっくり見ていました。藤本氏は会期中子供さんを連れて、和やか。絵の中の世界そのままでした。

 私はと言うと、職場の百周年記念行事とばっちり重なり、忙殺されながら制作していました。今年は高3の担任を持ったので、生徒と日常で接して考えたことや感じたことをテーマにしました。彼らの瑞々しい感受性や思春期の不安感を、一歩下がった所から見て表現しようと考えました。できることとやれないことのギャップ。希望と挫折。単調な日常への焦燥感。自我が現実と折り合いを付けながら形成されていく様。私自身の過ぎた時代へのノスタルジーも幾分重なっています。考えることはたくさんあったのですが、上手く絵にできず苦労しました。また、会期中、私の大学の同級生で主体会員の佐賀勝美氏夫人真理子さんとが来場し再会。びっくりしました。現在は岩手県教育委員会指導主事の要職に在らせられるとのこと。しばし、昔話が咲きました。また、私のマックの師匠、麻生薫氏も来てくださり感謝です。


「光の方向」P15

古い映写機とダーツ。その上に3人の人物。3人とも光のさす方を気にしている。古い建物の中庭が見える。時の経過のイメージを表現しようと思いました。

「過ぎ去る風景」F30

「ここは何処ですか?」「なぜ、そんなことを聞くのですか。ここが何処だっていいじゃありませんか。たとえここが布の置かれたテーブルの上でも、崖でも、場所は何処でもいいのです。どうせ、今いる場所は誰も知らないのですから。確かなことは、それが見えている私がいることだけですから。」

「気配」F6

今回の共通テーマ「気配」で1点制作する約束でした。最後まで絵が決まらず難航しました。昨年の主体展に大野五郎先生が出品された「あれま、ヒコーキ」が下敷きにあります。絵もタイトルも良くて、あんな絵を描きたいとずっと引っかかっていました。

「T氏のノスタルジー」 SM

山本氏がこのモデルは種倉師匠だと言っておりましたが、違います。うちの親父がモデルです。勿論こんなクラシックカーは乗ってませんし、本人とはまるで違います。昭和30年代の写真が下敷きです。ハンチングを被って、他人のシボレーの前で自分の車のようにポーズしている青年の写真です。子供の頃見た写真ですが、その不良青年がモデルです。何となく、決めて描きました。決まってからは、箔を置いて、ハッチングしてスイスイ描けました。

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