東京労演

2003年 下半期 作品紹介


 

   七  月
 
 
●ミュージカル『レ・ミゼラブル』
            (東宝)
 作/アラン・ブーブリル&クロード
=ミッシェル・シェーンベルク 潤色
・演出/ジョン・ケアード、トレバー
・ナン 訳/酒井洋子 訳詞/岩谷時
子 出演/山口祐一郎 内野聖陽 高
嶋政宏 高橋由美子 他   帝 劇
 
 牢獄から出たジャン・バルジャンが
貧しさから銀の燭台に手をのばす。有
名なシーンから始まり、「人はどんな人
をも愛せるか」「この世に絶対的な悪は
ない」という人間愛をテーマに舞台は
息もつかせぬ展開をみせる。愛し、闘
い、傷つき倒れ、なお、愛を信じ明日
に託す、感動のフィナーレ。
 今まで数回例会として取り上げられ
、ミュ−ジカルの傑作と言われている。
今回は新しいキャストによる再演。見逃
した方はぜひ今回の公演を。
 日程により出演者が異なります。
 
●『伯爵夫人』
   (俳優座劇場プロデュース)
 作/グレゴリー・マーフィー 訳/
名和由理 演出/高瀬久男 出演/藤
本喜久子 若松泰弘 城全能成 有川
博 川口敦子 鶉野樹理 佐川和正
            俳優座劇場
 
 「伯爵夫人」と呼ばれる美しい妻エフ
ィー。美術評論家としてその地位を固
め、ロイヤル・アカデミ−(王立芸術
院)でも認められている夫ラスキンとの
暮らしは幸福に見えたが、夫婦には決し
て人には明かすことのできない秘密が
あった。
 ある夏。都会を避けた夫婦のスコット
ランド旅行に、ラスキンに見出された若
き画家ミレーも同行する。才能に溢れ、
芸術への思いに燃えるミレーの存在は、
ラスキンのみならずエフィ−にも影響を
与え始めていた。
 スケッチのレッスンをきっかけに互
いへの思いを育みだすエフィーとミレ
ー。友情と信頼を語るミレーとラスキ
ン−−−。
 渓谷のコテージで交錯した三人の思
いは、それぞれの愛を求め揺れ動き、
やがて19世紀のロンドン社交界を騒
がせるスキヤンダルへと発展するーー。
 
●『若夏(うりずん)に還らず』
  −森口豁「最後の学徒兵」より−
            (文化座)
 作/堀江安夫 演出/佐々木雄二
出演/津田二朗 橘憲一郎 小金井宣
夫 伊藤勉 阿部勉 青木和宣 田村
智明 鳴海宏明     三百人劇場
 
 苛烈な沖縄戦の最中、石垣島で起き
た海軍による米兵捕虜3名斬殺事件。
その執行者として、戦後、B・C級戦犯
となり、処刑されたある学徒兵がいた。
北国生まれ、水産学を究めんとした質
朴な学生が、学徒兵として動員され、
南島で対面した事件の真実とは? ま
た、戦火をくぐりぬけ、生還した彼が
何ゆえ、戦後5年をして、巣鴨ピリズ
ンで処刑の日を迎えなければならなか
ったのか? 不条理な運命に翻弄され
ながらもそれを素直に受け入れ、寡黙
に死んでいった学徒兵、しかし、本当
に彼は思い残すことなく円寂の境地で
死んでいったのか?
 「最後の学徒兵」彼の心に潜む「真
実」を知るために、(私)の長く苦悩に
満ちた旅が始まった・・・・。
 



 

   八  月
 

 
●『さあどうする!?』  (NLT)
 作/レイ・クーニー 訳/黒田絵美
子 演出/グレッグ・デール 出演/
川端・二 加納健次 渡辺力 阿知波
悟美 伊東弘美 他
 アメリカ下院議員のリチャードは議
会開催中というのに、議事堂隣のワシ
ントンホテルのスイートルームで敵対
する野党議員の美人秘書ジェーンと情
事を楽しもうとしていた。しかし、二
人がチェックインした部屋の窓にはな
んと男の死体が!
 ともかく死体を部屋から移そうと隠
蔽工作に慌てふためく。しかしうまく
でっち上げたつもりが、次々と部屋を
訪ねてくる人たちに思いつきのウソで
対応するために事態は収集がつかなく
なって大混乱。
 そして、動くはずのない死体がいつ
の間にか無くなって……。
 はたしてこの隠蔽工作はうまくいく
のか?!        俳優座劇場
●『ミュージカルはだしのゲン』
          (木山事務所)
 作/中沢啓治 脚色・演出/木島恭
 出演/田中実幸 前田昌明 田中雅
子 本田次布 広瀬彩 西村舞 大宣
見輝彦 勅使瓦武志
 今夏で8年連続の公演で、今や恒例
のミュージカルです。公演のたびごと
に改訂を加えて、ようやく和製ミュー
ジカルの傑作として定着し、実に多く
の観客に支持されています。広島で被
爆したゲンの家族が、原子野の中で青
麦のようにたくましく生きて行く姿を、
描いた作品。
 われわれが失ったものは? 現在に
続く悲しみは?そして未来への希望と
は? 今こそ「ゲン」の元気に、見る
人びとが励まされ、平和の大切さをし
みじみと実感するでしょう。
         新国立劇場小劇場
●『九月になれば』
       (テアトル・エコー)
 作/ジミー・チン 訳・演出/酒井
洋子 出演/入江崇史 火野カチコ
杉村理加 牧野和子 島美弥子 小宮
和枝 太田淑子 丸山裕子
 廃校寸前のグエンドリン・カイト女
子学校の職員室。建物の危険さ、教育
内容の古さを告発する2通の密告書に
より、教育庁から役人が調査にやって
くる。裏切ったのは誰か?
 疑心暗鬼になってお互いに詮索しあ
う先生たちは、やがてさまざまな葛藤
を通じて、この学校がどんなに素晴ら
しいか、職員がどれほど心をこめて古
き良き教育を守っているかを思いおこ
し、何としてでもこの学校を再建して
いこうと決意する。
 ニール・サイモンを日本に初めて紹
介し、日本における今日のサイモンブ
ームを築き上げたテアトル・エコーが、
酒井洋子とともに、現代イギリスの多
才な喜劇作家ジミー・チンを初めて日
本に紹介いたします。
       恵比寿・エコー劇場



 

   九  月
 

 
●『音楽劇 楢山節考』 (手織座)
 作/深沢七郎 作曲/小山清茂 脚
色/三枝嘉雄 演出/宝生あやこ 出
演/宝生あやこ 真田五郎 汐見直行
 古後信二
 音楽劇「楢山節考」は、79年の初演
以来ロングランを続け、81年度の芸術
祭優秀賞を受賞した、正に劇団手織座
の代表作です。
          紀伊國屋ホール
●『キジムナー・キジムナー(仮題)』
           (青年劇場)
 作/高橋正圀 演出/松波喬介 出
演/未定
 「不登校・引きこもり」の高校生が
主人公。そして舞台は沖縄。
 「引きこもり」と「沖縄」。この極
めて今日的な二つのテーマを高橋正圀
氏が社会派人情喜劇というお得意の料
理法で「笑いと涙のチャンプルー」に
して皆さんにお届けします。<癒しの
島>に居ながら癒されない僕と、古く
から沖縄の人々の生活と心の中に生き
続けてきたキジムナーとの交流を通じ
て、現代日本が抱える「心の痛み」を
考える作品です。
      紀伊國屋サザンシアター
●『死と乙女』     (地人会)
 作/アリエル・ドーフマン 訳/水
谷八也 演出/ 木村光一 出演/風
間杜夫 余貴美子 立川三貴
 今、世界的に注目されているアリエ
ル・ドーフマンの作品。
 やっと民主主義を手に入れたばかり
のある国。ポリーフは夫ジェラルドと
共にまだ軍事政権時代に反政府的な行
動をとっていた。秘密警察に拉致され、
レイプされたポリーフ。それは今もっ
て身体、精神ともに傷となって残って
いる。ある夜、車のパンクで立ち往生
していたジェラルドを通りすがりの医
者ロベルトが助け、家まで送ってくれ
た。その声にポリーフはいまわしい過
去を思い出し、復讐を思いたつのだが
……。  ・紀伊國屋サザンシアター・
 

 


 

   十  月
 
 
●『二人の長い影』    (民藝)
 作/山田太一 演出/高橋清祐 出
演/南風洋子 水原英子 津田京子
安田正利
 山田太一初の民藝書き下ろし。敗戦
で朝鮮から引き揚げてきた女性の思い
が、戦争と人間のドラマを映しだして
いきます。北朝鮮北部で敗戦を迎え、
両親を失いながらも13人の孤児たちの
面倒をみながら歩いて南へ。逃避行の
末、博多港にたどり着いたのは46年の
6月でした。そして昨年、シベリアに
抑留されて音信不通となった婚約者と
57ぶりに日本で再会するのです。「あ
の戦争を現代の人間ドラマとしてきち
んと描きたい」という意欲の山田戯曲
を、旧満州からの引き揚げ体験をもつ
南風洋子が心をこめて取り組みます。
     紀伊國屋サザンシアター
●『チャーチ家の肖像』・(木山事務所)
 作/ティナ・ハウ 訳/福田美環子
 演出/勝田安彦 出演/内田稔(昴)
松下砂稚子(文学座)水野ゆふ(木山
事務所)
 ニューヨークで83年に初演され、数
々の受賞に輝いた作品で本邦初演。
 かつてピューリツァー賞を受賞した
ほど、有名な詩人の父とその妻と画家
であるその娘。老いて行く父と母を見
つめる娘の気持を、娘が二人の肖像画
を描くプロセスを通して、繊細にユー
モラスに表現した傑作。老いて行く人
生の黄昏と、娘の輝く希望を対比させ
て、生きて行くことの哀歓を詩情豊か
につづり、どこにでもありそうな夫婦
と娘の愛情がしみじみと胸を打つ。
           俳優座劇場
●『まんがら茂平治』  (前進座)
 原作/北原亜以子 脚色/尾崎将也
演出/高木康夫 出演/中村梅雀 瀬
川菊之丞 今村文美 妻倉和子 他
 幕末の江戸は神田鍛冶町の貧乏長屋
に、一人の奇妙な男が住んでいた。名
前は茂平治。この男、あだ名を・まん
がら・という。まんがらとは、万のこ
とを言っても本当のことはからっぽと
いう意味だ。
 茂平治の周りにはいつも様々な人が
集まってくる。嘘はついても、人情に
厚く、人をだまして自分だけ得をしよ
うというところがないからだ。行きず
りに助けた女に惚れてしまったことか
ら運命は大きく動き始める。この女、
実は倒幕派の女テロリストだったのだ
。いよいよ江戸の町に戦火が及ぼうと
したとき、茂平治は一世一代のまんが
ら勝負に出る。愛する人々、そして愛
する江戸の町を守るために……。
   新国立劇場・前進座劇場



 

   十一  月
 

 
● 『リチャード三世』 (文学座)
 作/W・シェイクスピア 訳/坪内
逍遥 演出助手/西川信廣 演出/レ
オン・ルービン 出演/江守徹 外山
誠二 清水明彦 他
 舞台、テレビ、映画と幅広い分野で、
俳優として多彩な活躍を続け、演出・
翻訳・劇作と豊かな才能をマルチに駆
使して観客を魅了する江守徹が挑む久
々の主演作品。ロイヤル・シェイクス
ピア・カンパニー演出助手やブリスト
ル・オールドヴィック劇場芸術監督な
どを経て、現在ミドルセックス大学教
授としても活躍しているイギリス人演
出家レオン・ルービンを演出に迎え、
本格的かつ斬新なシェイクスピア作品
をお届けする。
    世田谷パブリックシアター
●『吉例顔見世大歌舞伎』 (松竹)
 出演(予定)/尾上菊五郎 中村吉
右衛門 市川團十郎 片岡仁左衛門
            歌舞伎座
● 『心と意志』 (知人会)
 作・演出/坂手洋二 出演/平田満 
渡辺美佐子 金沢碧 神野三鈴 内田滋
啓 山中麻由 ほか
 
 1989年2月24日、みぞれ混じり
の冷たい雨が降る寒い朝。昭和天皇の「
大喪の礼」が新宿御苑で行われた。テレ
ビでは「軽薄番組」の放映が中止され、
幾つかの劇場は上演が中止された。
 「自粛」の強要は「思想・心情・表現
の自由に反する」として同じ新宿区内で
「昭和大噪」と名付けられた、音楽、舞
踊、演劇、パフーォマンスによる「お祭り」
のイベントが行われた。
 ところがこの日、その計画の中心人物だ
ったにもかかわらず、家を一歩も出ず、閉
じこもっていた若者がいた。
 ちょうどその頃、かって自主映画のムー
ブメントに関わっていた彼の父親は、新た
に映画を作ろうとしていた。
 そしてこの「休日」にその第一歩を踏み
出そうとしていた。
 この劇は、その一日、彼らの家庭で起き
た出来事を描くものである。
 



 

   十二  月
 

 
●『信濃坂』       (民藝)
 作/吉永仁郎 演出/高橋清祐 出
演/奈良岡朋子 日色ともゑ 伊藤孝
雄 里居正美
 江戸時代末期、葛飾北斎と滝沢馬琴
はそれぞれの分野で頂点に登った巨星
であり、互いに友人でもあった。彼ら
の死後、両家には齢の近い中年女が残
された。馬琴の早死にした息子の嫁お
路と、北斎の娘でやはり独り身のお栄
であった。そのお路が義父の「馬琴日
記」を引き継いで残した「路女日記」
をもとに、亡夫の遺書に忠実に、多事
多難の日々を克明に綴った記録の行間
から、吉永仁郎が創り上げる人間模様。
            三越劇場
● 『紙屋町さくらホテル』
           (こまつ座)
 作/井上ひさし 演出/鵜山仁
出演/辻萬長 土居裕子 木場勝巳 
森奈みはる 久保酎吉 河野洋一郎 
大原康裕 栗田桃子 深澤舞 ほか
 
 昭和20年5月、広島。「紙屋町ホテル」
には、移動演劇隊「さくら隊」の2人の俳優
が寄宿していた。新劇の団十郎と異名を
とる名優丸山定夫と宝塚少女歌劇出身の
大スター園井恵子である。
 明後日の公演を前に、「無法松の一生」
の稽古が始まる。ホテルに滞在していた客
も含めた寄せ集めの一座の珍妙で真剣な
稽古が・・・。
 1997年、新国立劇場開場記念公演として
書き下ろされ傑作。
            紀伊国屋ホール
 
● 『カゾク カレンダー』 (青年劇場)
 作/藤井清美 演出/鈴木完一郎
出演/山野 史人太田 佳伸 泉 晶子 
津田 真澄 小林さやか 
 
多難の日々を克明に綴った記録の行間
 1988年12月、東京郊外船越家。
今日はローン繰上げ完済パーティ。
 家族の為に建てたこだわりの注文住
宅、それは父秀男が必死に働いた証。
 定年を控え、ようやく訪れる穏やか
な生活・・・。全ては上手くいくはず
だった。しかしどこかで歯車が狂った
のか、妻千寿子は親の介護を口実に実
家住まい、息子英明は一人暮らし、今
は娘左織と二人だけ。それでも今日は、
妹鶴田佳美も訪ねて久々の団欒。だが
嬉しさを隠しきれない秀男を前に、妻、
息子、娘は次々と爆弾宣言を始めると・ ・・。そして5年後、10年後、200 3年、船越家が巡る新たな歴史、過去と 未来の過去と未来のカゾク カレンダー。             本多劇場

    
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