新国立劇場の
バックステージツアー
   参観の記             2003年10月実施
 
 新国立劇場のバックステージ見学会に参加した。
ズーッと昔、演劇サークルで、セットの組み立てを舞台裏でやったりしたことがあった。時は今、21世紀、コンピュータ制御による超現代的空間に変貌しているだろうことは想像していたが、それは本当に素晴らしい劇場であった。
 
 案内を担当して下さった富永さんは、もと俳優座劇場の支配人をつとめられた方で、わかりやすく、かつ熱っぽく説明して下さったのが印象的であった。
 
 新国立劇場の中には、大中小の三つの劇場が組み合わされた設計となっていた。
 
 大劇場はオペラ、バレー専用で、とくに画期的なのは、客席の壁、天井すべてを厚いムク材で仕上げてある点。オーケストラの音、オペラ歌手の肉声がより美しく響くよう設計されていること。つまり劇場全体が楽器の役割を果たしていると言っても過言ではないだろう。世界のオペラ劇場のなかで、ミラノ・スカラ座やドレスデンのデンハー劇場と肩を並べるというからスゴイ!
 
 中劇場は、先日前進座の公演を観たが、今回は舞台裏の奥まで見とおすことができ、そのカラクリがよく見えた。舞台転換の早さはこの舞台裏にあったのだ。
 
 小劇場は、小回りのきく空間として設計されており、座席の移動はもちらん、舞台をせり出し、四方見の形での上演も可能とのこと。ファションショーなどにも転用するというから驚きである。
 
 とにかくこの三つの劇場に共通していえることはバックステージ空間の広さだ。客席より断然広い贅沢な作りとなっている。これによりオペラなどの華麗な舞台は私たち観客の心をとらえて離さない。
 
 ちなみに、劇場維持には国費、入場券、企業の援助によると聞いたが、この国の芸術をより豊に育むため、私たち観客もその一端をになっているのかも知れない。
(阿部))