東京労演
     2004年 上半期 作品紹介


 

   一  月
 
 
●『雪の花道』   (三越劇場)
    脚本/梅林喜久生 演出/中畑八郎 
    出演/藤田まこと 小林綾子 坂上忍
       三沢あけみ 他
               於いて 三越劇場
 
 大正末期、浅草六区は無声活動写真が花盛りで、特に人
気を誇ったのは活動弁士たちだった。中でも、大正館の主
任弁士を勤める錦城光声はダントツの花形であった。
 大正館の新米お茶子・絹江は、その光声の人柄と美声に
魅かれ、親子ほど都市の離れた彼に淡い恋心を懐くのであ
った。そして光声もまた……。
 20年前、売れない旅役者だっ光声は、活弁に活路を見つ
け、病気の女房と幼い女児を大阪に残して上京、修行を重
ね一流になったが、まだ駆け出しの巡業中に女房は病死し、
残された幼い子供は皆目行方が知れなくなった。
 時は流れ昭和に入ると、活動写真の革命・トーキー時代
の幕開けだった。仕事を失った弁士達は、それぞれ新しい
仕事を見つけ、離れていく中で、一人光声は活弁に生命を
かけていたが。
 「無声映画」の活弁と、当時の「流行り歌」を交えて綴
る浅草ろまん。
 
●『風の中の蝶たち』 (文学座)
    脚本/吉永仁郎 演出/戌井市郎
    出演/加藤武 北村和夫 他
           於いて 紀伊國屋サザンシアター
 
 明治の半ば、関東の多摩丘陵の一隅に自由民権運動にこ
れから夢と人生を託そうとした者たちがいた。後に詩人と
なる北村門太郎(透谷)、富農の出自で大学を目指す石坂
公歴、その姉・美那、民権運動の壮士・大矢正夫。彼らを
取り巻くのは、粘菌探しに没頭する南方熊楠、若い壮士た
ちに慕われる老人・秋山国三郎、自由党の磯山清兵衛、女
壮士・景山英子。更に彼らを追う警視庁の密偵と、それを
阻む闇ノ目組との死闘。 理想に突き進もうとしなが
らも、日本が近代国家たらんとして吹き荒れる嵐に翻弄さ
れ逡巡する蝶たちの明日は……。
 
●『三屋清左衞門残日録        
        〜夕映えの人〜』(俳優座)
    原作/藤沢周平 
    脚本/八木柊一郎 
    演出/安川修一 
    出演/可知靖之 児玉泰次 川口敦子 他
            於いて 紀伊國屋ホール
 
 北陸のある小藩。前藩主の用人であった三屋清左衛門は
現藩主への交替に伴って隠居し、家督を長男又四郎に譲っ
た清左衛門は晴れて自由の身となった筈だが、何故か安堵
のあとに強い寂寥感がやって来る。隠居の身となった清左
衛門は「残日録」と名づけられた日記に己の行動とともに
心の内側も綴ってゆく。
 ある日、清左衛門は奉行の佐伯熊太に頼み事をされる。
かつて前藩主のお手が一度だけついたおうめが相手のわか
らぬ子を孕んでいるというのだ。組頭の山根備中はそのふ
しだらなおうめを罰しようというのである。しかし、清左
衛門は藩主からおうめに以後勝手たるべしという書類が出
ていたのを覚えていた。山根備中に毅然たる態度を示した
清左衛門は、いつの間にか派閥争いに巻き込まれる。
 なにかと慌ただしくなった日常の中で心休まるのは、小
料理屋「涌井」での一時であった……。
 



 

   2   月
 

 
●『まぼろしの明石原人』(民藝)
    作/小幡欣治 演出/丹野郁弓 
    出演/日色ともゑ 伊藤孝雄
            於いて 紀伊國屋ホール
 
 後に「明石原人」と呼ばれることになった人類の骨は、
1931年に明石の海岸で発見された。発見者はアマチュ
アの考古学者、直良信夫。
その数奇な人生を支えたのが妻の音だった。おりしも満州
事変が勃発し、国史教育は神代から始まる皇国史観に貫か
れていた。当時の考古学・人類学は研究成果を発表できず
にいた。しかも世紀の大発見である明石人骨は、1945
年の東京大空襲で焼失して……。
                 
●『ミュージカル アテルイ(北の燿星)わらび座)
   作/高橋克彦 脚本/杉山義法  
   演出/中村哮夫            
   出演/アテルイ(安達和平)田村麻呂(近藤進)
      佳奈(椿千代)タキイ 丸山有子)
      モレ(和田覚)ヒラテ ( 本みろ)
      モロシマ(平野進一)
      アラハバキ(黒田ふみ)
            於いて 東京芸術劇場中ホール
 
「アテルイ」とは1200年前、現在の岩手県に実在した
人物。黄金を求める大和朝廷は蝦夷の征圧を企てる。度重
なる侵攻に蝦夷は人間の誇りをかけて立ち上がる。その若
きリーダーがアテルイだった。群舞の迫力、和太鼓の連打、
合唱の美しいメロディーにのせて、世界や人間のあ るべき
姿を描く愛と友情にあふれた「今に問う」骨太い人間ドラマ。
 
●『世紀末のカ−ニバル』 (地人会)
    作/斎藤憐 演出/木村光一
    出演/渡辺美佐子 花王おさむ 順みつき 
       鈴木順平
         於いて 紀伊國屋サザンシアター
 
 ブラジル移民の1世〜3世、それぞれの目に写る「日本」
とは……。
 異郷での疎外感を受けながらも明るく懸命に生きる日系人
と、彼らを取りまく日本人の姿から「現代」を描く斎藤憐の
最新作。
 



 

   3   月
 

 
 
●『千年の三人姉妹』 アートスフィア)
    作/別役実 演出/藤原新平
    出演/楠侑子 三田和代 吉野佳子
       金内喜久夫 大浦みずき 他
         於いて アートスフィア
 
 平安朝から現在へ、流転の千年を生き続ける「女たち」、
日本の三人姉妹の歴史を通して、日本人の心の在り方と時代
を現代に重ねて描く人間喜劇。
 
●『殺陣師段平』(青年座)   
    作/長谷川幸延 演出/鈴木完一郎
    出演/未定
         於いて 紀伊國屋サザンシアター
         
 島村抱月、松井須磨子らの芸術座を退団した沢田正二郎は、
大正元年、歌舞伎と新劇の中間の大衆演劇を目指し、新国劇
を旗揚げする。新国劇の頭取(楽屋の世話係)の市川段平は、
元は歌舞伎の殺陣師だった。沢田のために役に立ちたいと願
い、ようやく活躍の場を与えられた「国定忠治」は大阪で大
ヒットして東京へ 進出することになるが、沢田は段平の殺
陣を客寄せの道具としかとらえなかった。殺陣に命をかける
段平は沢田のもとを離れる決意をする。大阪では髪結いで生
活を支える妻・お春が……。           
 
●『天国までの百マイル』 (文化座)
    作/浅田次郎 脚色/八木柊一郎
    演出/原田一樹
    出演/佐々木愛 有賀ひろみ 鳴海宏明
       米山実 他
         於いて 俳優座劇場
 
 母の命を救うため、天才的な心臓外科医がいるというサン
マルコ病院をめざし奇跡を信じてオンボロの車で百マイルの
道のりをひたすら駆け抜ける。道中、さまざまな人と出会い、
また出来事に遭遇するうちに、安男は無償の愛情、友情、人
の善意、医師の良心などに支えられながら生きているのだと
気づいていく。   
 



 

   4   月
 

 
●『太鼓たたいて笛ふいて』 (こまつ座)
    作/井上ひさし 演出/栗山民也
    出演/大竹しのぶ 木場勝己 梅沢昌代
       松本きょうじ 阿南健治 他 
         於いて 紀伊國屋サザンシアター
 
 林芙美子。。『放浪記』による大成功は、その後の破天荒
な人生のほんの序章にすぎなかった。
 非合法政党との関わりを疑われて留置されたかと思えば、
たちまち180度の大旋回、従軍文士として出かけ、従軍記
を内地に書き送り、軍国日本の宣伝ガールになった。しかし、
戦争末期、信州に疎開、ぱったりと小説の筆をとめた。
 そして戦後。戦さの傷跡を抱えて苦しむ人びとの物語を、
書きつづけ、こんどは反戦文学の重要な担い手に。
 劇しく移り変わる時代の中を、常に先陣切って急ぎ足で走
りつづけた林芙美子の半生から、浮かび上がってくるものの
正体とは?
 
●『足摺岬』 (俳優座)
    作/田宮虎彦 脚色/堀江安夫
    演出/袋正 出演/浜田寅彦 児玉泰次
       渡辺聡 美苗 斉藤深雪 他
         於いて 俳優座稽古場
 
 物語は昭和の初期、絶望した帝大生、間宮は、足摺岬で自
らの命を絶とうとこの地を訪れた。胸の病いが再発し、清水
屋に投宿することになった。病いの淵に苦しみ、死と向き合
う頑なな心を開かせてくれたのは、その清水屋の人たちだっ
た。同宿の二人の老人、女主人も「過去」を背負っていなが
ら、いや深い傷があればこそ、間宮を見守ってくれた。宿の娘
も献身的につくすのだった。
 
●『エリザベート』(帝劇)    
    脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ 
    音楽/シルヴェスター・リーヴァイ 
    演出・訳詞/小池修一郎 
    出演/一路真輝 内野聖陽 山口祐一郎 
       高嶋政宏 鈴木綜馬 村井国夫
       初風諄 他
         於いて 帝劇

 



 

   5   月
 
 
                    
●『 裙模様沖津白波・舞踏「供奴」』  
          (前進座)    
    作/鶴屋南北 改訂/小池章太郎   
    出演/中村梅之助 嵐圭史 藤川矢之輔 
       瀬川菊之丞 中村梅雀 河原崎國太郎 他
 うら若い芸者、女形役者、男姿の盗賊首領、三味線の女師
匠と、河原崎國太郎が変幻自在の変身に挑みます。
           於いて 国立劇場大劇場
 
●『慶応某年ちぎれ雲』 (木山事務所)
    作・演出/福田善之 
    出演/旺なつき 林次樹 田中雅子 水野ゆふ
       長谷川敦央 田中実幸
       須田真魚(俳優座)菊池章友 他
         於いて 俳優座劇場
 
 
 ご存知「森の石松」と「清水の次郎長」のものがたりを借
りて、港町に集う若者たちの群像を恋をからめて描く、時代
劇風コメディー。
 
●『花咲くチェリー』 (地人会)
    作/ロバート・ボルト 訳/木村光一
    演出/坂口芳貞 
    出演/北村和夫 八千草薫 松熊信義
         於いて 紀伊國屋サザンシアター
 
 イギリスのある大都市周辺の町。
ジム・チェリーは保険のセールスマンとして勤め、家族を養
っている。しかし彼の夢は美しい故郷に林檎園を営むことで
ある。しかし、それが不可能な事は彼自身が一番よく知って
いる。しかし、夢にとりつかれたチェリーは妻イソベルの知
らない所で林檎園の計画を苗木屋としたりなどして彼女に恥
をかかせる。
 ある日、チェリーは会社を首になる。しかし、妻には話せ
ない。あくまでも夢を語り続けるチェリーは……。
 



 

   6   月
 

 
●『パレードを待ちながら』 (文学座)
    作/ジョン・マレル 訳/吉原豊司 
    演出/鵜山仁 
    出演/藤堂陽子 塚本景子 征矢かおる
      郡山冬果 三浦純子
         於いて 紀伊國屋ホール
 
 第二次大戦下のカナダ、カルガリーを舞台に戦争中の「銃
後の女たち」を描いた作品。グレンミラー楽団のスウィング
・ミュージックやマレーネ・デートリッヒの「リリー・マル
レーン」、素朴な民謡などがちりばめられ、思いテーマなが
ら楽しく、テンポ良く物語は展開していきます。
 
 
●『タルチュフ』 (俳優座)
    作/モリエール 訳/鈴木力衛 
    演出/安井武 
    出演/中野誠也 阿部百合子 小笠原良知
       川口敦子 他
         於いて 俳優座劇場
 
 タルチュフは裕福で信心深いオルゴン家に寄宿しているが、
ころがりこんできたときは、靴もはかず、ぼろを着た乞食
同然だった。それなのに主人のオルゴンとその母親のベル
ネル夫人に信じられ、聖人扱いされるうち、勝手気ままに
振舞い始める。その上、美しいオルゴンの後妻エルミール
に心を奪われ、この家に集まる客たちの出入りを一切禁止
し、自分のものにしようと籠絡するチャンスを狙っていた
・・・。
 オルゴンのタルチュフへのあまりの心酔ぶりを心配した
エルミールは一計を案じる。タルチュフの下心をうまく利
用して、オルゴンの目の前で自分をくどかせ、妻の身体ば
かりか娘婿となってオルゴン家の全財産を狙っていること
を判らせようとする。口から出任せを言っていると信じな
い夫を机の下に忍ばせて、タルチュフを呼び出す。高い徳
に輝いていたはずのタルチュフが、甘い言葉に乗せられて、
そのよこしまな本性をあらわしていく・・・。
                            
                           
●『マツモト・シスターズ』 (民藝)
    作/フィリップ・カン・ゴタンゴ 訳/吉原豊司 
    演出/高橋清佑 
    出演/樫山文枝 山吉克昌 水原英子
      小杉勇二 河野しずか 伊東聡 田口精一
         於いて 紀伊國屋サザンシアター
 
 1945年、アーカンソーの強制収容所から、日系二世の
マツモト三姉妹が、3年ぶりに、故郷のカルフォルニアへ帰って
ってきた。しかし、収容所で不慮の死をとげた父の農場は荒れ放
題。長い収容所生活で、町の大きな家と職を失った三姉妹でした
が、ふたたび豊かで平穏な暮らしを取り戻そうと再出発を期しま
す。 
 長女グレースは、すぐさま農場の立て直しにかかります。農場
を売り払って、大きな街での生活を望む次女チズ、意見のすれ違
うグレースとチズでしたが、心配なのは三女のローズの行く末、
あれこれお見合い相手を探してきますが、志願兵として死んだ婚
約者のことが忘れられず・・・。
 ところが、父の農場はすでに人手に渡っていたことが判り、こ
この農場をあてにしていた三姉妹は生活の糧を失い、さらに立ち
退きを求められ途方にくれるのでした・・・。