東京労演
     2005年 上半期 作品紹介
 
    ◎  一   月
 
  『いのちぼうにふろう物語』 (無明塾)
 
 劇作/隆 巴 演出/林 清人
 出演/仲代達也、長森雅人、山本圭、赤羽秀之、他
 
 江戸深川−−−。四方を堀に囲まれた荒れ地、町とを
結ぶ唯一の道は、対岸の深川吉永町に向かって架かって
いる橋一本。そこにぽつんと立っている「安楽亭」には、
一膳飯に縄席の売春をしている幾造とその娘おみつ、知
らず定七などの無頼のものが住んでいる。彼らの生業は
抜け荷の運び屋。安楽亭は知った顔しか入れぬ無法地帯、
悪の吹き溜まり、ある日、見知らぬ男がふらりとやって
きた。役人の手下かもしれないと気色ばむ定七たち。
 そんな頃、定七たちは町で袋叩きにあっていた質屋の
奉公人、虎次郎を助けて安楽亭に運んできた。聞けば幼
なじみの娘が女衒に売り飛ばされ店の金を盗み捜し回った
が、有り金を巻き上げられたという。数日後、娘の無事がわ
かったが身代金が二十両。定七はいったん断ったが抜け荷
の仕事を引き受けようと言い出す。「面白れぇじゃないか。こ
んなへなちょこの為にいのちぼうにふるのも。」・・・
 
 1月5日〜11日 東京芸術劇場中ホール
 
 
  『次郎長が行く』 (俳優座)
 
 作/宮本 研  演出/安川 修一
 出演/加藤剛、児玉泰次、伊藤達広、森一、志村要、
河野正明、島英臣、松島正芳、岩瀬晃、
清水直子、他
 
 慶応2年の冬、次郎長は二代目となる若いお蝶を迎え、
駿州・清水の次郎長宅ではささやかな祝言の宴が催され
ていた。その当日、次郎長を頼って草鞋をぬいだ綾太郎
から、大政らは黒駒の不穏な動向を聞く。 黒駒一党が
清水に向かったというのだ。緊張が走る次郎長一家。そ
こに新徴組取締役の山岡鉄太郎が突然訪ね、次郎長に徳
川側についてほしいと申し出るのだが、「お上のご用は
ご遠慮申し上げるのが渡世の道」と次郎長は断る。
 しかし、山岡はその姿にほれこんで去る。その直後、
黒駒の勝蔵が殴りこんで来た。婚礼の夜は修羅の場とな
ってしまう。
 慶応から明治へと時代は激しく動き、次郎長も時代を
背って行くこととなる。
「時代に身をすり寄せるか、時代を蹴散らすか」と。
 
 1月7日〜23日 三越劇場
 
 
  『火山灰地』  (民藝) 
 
 作/久保 栄  演出/内山 鶉
 出演/大滝秀治、梅野泰靖、水野貞雄、奈良岡朋子、
南風洋子、樫山文枝、日色ともゑ、他
 北海道の火山灰地を舞台に農業技術の発展とそれをは
ばむ古い生産関係との相剋のなかで、よりよい生活をも
とめる人びとの苦闘の足跡をたどり、日本という国の近
代の特殊性をトータルに、構造的にとらえようとする。
これは日本近代史を扱った現代劇です。そのスケールの
大きさと奥行きの深さは比類なきものといえるでしょう。
生産指導者の一家と、冷害凶作にあえぐ生産者がほぼ等
分に描かれますが、登場人物のすべては「おなじ手ふり
で踊りながらも離ればなれな心と心」・・・
 1938年、日本が日中戦争に突入した翌年、作者の
演出で初演、言論圧殺のもとで作者と劇団と観客がひそ
かに熱い共犯関係を成立させた。新劇が最後の抵抗線を
死守した、良心の灯を守り抜いたといわれる作品です。
創立55周年を期し、民藝が総力をあげる2部作の完全
上演をめざす。
 
 1月22日〜27日 東京芸術劇場中ホール
 

1月の公演日時の詳細はここをクリック

 
    ◎  二   月
 
 
  『ふたりの老女』 (文化座)
 原作/ヴェルマ・ウォーリス 
 脚本・演出/福田善之
 出演/佐々木愛 津田二郎 青木和宣 鳴海宏明 
    米山実 新井純(客演)前田昌明(客演)
    田谷淳(客演) 
 あるとても寒さの厳しい冬、はげしい飢えに見舞われ
たアラスカインディアンのある集団が全滅の淵に立たさ
れる。集団のリーダーは、その苦境をのり切るため、日
頃全員の「お荷物」となっていた二人の老女を集団の伝
統にも背き、「棄て去る」という辛い決断をする。一方、
棄てられた二人の老女は座して死を待つより、とことん
状況と闘って死ぬ決意をする。それぞれが持っている能
力を発揮し、協力し合い二人だけでその冬を生き抜くこ
とに挑んでいく……。
 
 2月25日〜3月6日 紀伊國屋サザンシアタ−
 
 
   『三文オペラ』 (俳優座)
 作/ベルトルト・ブレヒト 訳/千田是也
 演出/安井武
 出演/可知靖之 武正忠明 川井康弘 鶉野樹理 
    早野ゆかり 安藤みどり 森尾舞 他
 1800年代の中頃。ヴィクトリア女王時代のロンド
ンの下町・ソーホー。乞食は物乞いを、泥棒は盗みを、
娼婦は淫売をする。
 ある大公の馬小屋では、盗賊一味の首領マックヒース
と乞食王ピーチャムの一人娘ポリーが、親に内密で結婚
式を挙げる。それを知ったピーチャム夫妻は、怒り狂い、
式後も淫売宿にいるマックヒースを密告し、逮捕させる。
婚儀にも参列した戦友の警視総監ブラウンが身の安全を
保証した直後の逮捕だった。
 一度は逃亡に成功するものの、再逮捕されるマックヒ
ース。女王の戴冠式の1時間前までに絞首刑に処せられ
ることとなるが……。
 演劇と音楽が新しい手法で合体したブレヒトとワイル
の傑作劇「三文オペラ」。時代の現実と正面から向き合い、
今、新たな風が息吹く。
 
 2月10日〜21日 紀伊國屋サザンシアター
 
 
   『コント・アラカルト当世殺人考』 (木山事務所)
 作/別役実(書下し) 演出/末木利文
 出演/新村礼子(昴)末木利文(木山)楠侑子(フリー)
    三谷昇(円)林次樹(木山)他
 木山事務所の別役シリーズでは、三木のり平主演「は
るなつあきふゆ」「山猫理髪店」、三木のり平追悼「青空
もんしろちょう」などの秀作を上演し好評を得た。
 今度の作品は、メール自殺や家庭内殺人が多発る現代
を、別役実は殺人がドラマとして成立しにくい状況とと
らえて、人が人を殺すしきりの低さをコント風に描く。
シリアスな殺人と軽妙なコント風の表現をぎりぎりのと
ころで擦り合わせることによって、現代の世相や、対人
関係の中での家族が浮き彫りにされる。
 つまり、現代における奇妙な殺人模様を、コント仕立
てでつなぐ、「ドタバタ喜劇」ならぬ「モヤモヤ喜劇」。
もちろん幕開けは、「ごめんください」「はい、どなた」
と、或る老夫婦の家庭にひとりの少年が訪ねてくるホー
ムドラマ風の展開。いつの間にか、奇妙な人間関係の中
で、わけのわからないまま事件は起きる……。
 出演者は「おばあちゃん」に新村礼子(昴)、その「息
子夫婦」に末木利文(演出も兼ねる)と楠侑子(フリー)、
そして「巡査」に三谷昇(円)。重要な役どころを担う
「少年少女」の役に、木山事務所の精鋭が起用される。
 
 2月9日〜17日 俳優座劇場
 

2月の公演日時の詳細はここをクリック

 
    ◎  三   月    
 
  『息子』『玄朴と長英』 (前進座)
 大正期に書かれた一幕物の傑作を二本揃えました。
「息子」は小山内薫が1922(大正11)年7月「三田
文学」に発表。「玄朴と長英」は真山青果が1924(大
正13)年9月「中央公論」に発表。ちなみに築地小劇場
の創立は1924年6月です。言わば新劇の黎明期に「新
劇」と「史劇」の両巨星の出発点となった記念一幕劇です。
 
 「息子」
 作/小山内薫 演出/鈴木龍男
 出演/藤川矢之輔 嵐広也 中嶋宏幸 
 「息子」徳川末期、江戸の入り口、12月のある晩の夜
半過ぎ、一面雪に覆われた所に立つ火の番小屋での出来
事。頑固な老爺のもとに訪れた無頼漢の正体は……。
気付いた息子と気付かない親父のすれ違い……。
 
 「玄朴と長英」
 火災に乗じ伝馬町の牢獄を解き放たれた高野長英が長
崎鳴瀧塾で共に学んだ伊東玄朴のもとを訪ねる。帰牢の
猶予が切れる日に、長英は、玄朴に逃亡資金をせびりに
来たのだ。玄朴の「守り」と長英の「攻め」、静と動、
現実主義と理想主義……時代の変わり目に、両者の性格
と生き様が火花を散らして……。
 
 4月2日〜9日 前進座劇場
 
  『火山灰地第2部」 (民藝)
 作/久保栄 演出/内山鶉
 出演/大滝秀治 梅野泰靖 伊藤孝雄 奈良岡朋子 
    南風洋子 樫山文枝 日色とも 他
 火山灰地第1部と同じ。
 
 3月20日〜29日 東京芸術劇場中ホール
 
 
  『丘の上のイエッペ』 (地人会)
 作/ルドヴィ・ホルベア 訳/毛利三弥
 演出/木村光一
 出演/村田雄浩 江波杏子 立川三貴 松熊信義
    押切英希 他
 作者ホルベアは「北欧のモリエール」といわれる大喜
劇作家です。男爵の称号も与えられる大学教授でりなが
ら、その作品は一般庶民を主人公とし、一見支あ配層を
持ち上げているように見えながら民主的であり、おおら
かな喜劇が多い。
 デンマークの田舎、小作農夫イエッペ年貢だけはなん
とか納めようと働いている正直者。怖い女房のニレに毎
日お尻をたたかれながら働く彼の唯一の楽しみはお酒。
その日も30キロ先の町まで買物に出されたイエッペは、
持たされた12枚の銅貨を酒屋でぜんぶ使いはたしてし
まい、道ばたに寝こんでしまう。そこへ通りかかった領
主の一行、退屈な日々の座興にとイエッペに立派な寝ま
きを着せ、館の豪華なベットにねかせた。酔いからさめ
たイエッペは……。
 
  3月25日〜31日    紀伊國屋ホール
 

3月の公演日時の詳細はここをクリック

 
    ◎  四   月    
    
  『風をつむぐ少年』 (文学座)
 作/ポール・フライシュマン 脚色/坂口玲子
 演出/鵜山仁
 出演/倉野章子 塩田朋子 林秀樹 浅野雅博 他 
 人生に目標を見いだせず、生きることの輝きを失って
いた17歳の少年が、ある日誤って同じ年頃の少女の命を
車の事故で奪ってしまう。アメリカ大陸の四隅に「風見
の人形」をたてること。それがブレントにできる、たっ
たひとつの償いだった。
 ワシントン州、カリフォルニア州、フロリダ州、メイ
ン州……アメリカ大陸を西へ東へさまよう1万3千キロ
の旅。その人形が時を越えて人々に様々な影響を与え、
少年の魂が潤いをとりもどし、再生していく姿を描いた
感動の物語。
 原作は1998年度パブリッシャーズ・ウィークリー
誌ベストブックに選ばれた。
 
 4月29日〜5月8日 全労済ホール/スペース・ゼロ
 
 
  『フィラデルフィアへやって来た!』 (東演)
 作/ブライアン・フリール 訳/甲斐萬里江
 演出/鵜山仁
 出演/笹山栄一(予定)小高三良(予定)
    南保大樹(予定)
 父と息子と別れの時が迫っているのだが、お互い会話
を交わすことができない。息子は貧しい未来のない村を
出て、希望の新天地アメリカへ出掛けて行くのである。
二度と戻れないかもしれない。何とか父と会話し、思い出
を持って出発したいのだが……。
 かつて「歌え!悲しみの深き淵より」で、父と息子の
葛藤を激しく描き感動を呼びましたが、この作品は「歌
え!…」とは全く逆で、気持ちの擦れ違いが、より深く
お互いの求める欲求が鮮明になってきます。日本人より
日本的な佇まいがこのアイルランド劇の特徴です。
 演出は、人間の深層心理を導くことにかけてはピカチ
の鵜山仁さん。創立45周年記念の最後の公演です。
しみじみとした必見の舞台になります。
 
 4月10日〜17日 紀伊國屋サザンシアター
    
 
  『花祭』 (岡部企画)
 作・演出/岡部耕大
 出演/入江杏子(民藝)(予定)松尾あぐり(元前進座)
    阿部百合子(俳優座)他
 「花祭」はNHKのラジオドラマとして2004年4
月3日、FMシアターで放送。すでに「これは百年を越
える近代日本にあって、西の果ての漁村で生まれ死んで
いった無名の人間の情念と怨念を描いたものである。言
い換えれば近代日本そのものを描こうと志し、見事に成
功した作品である。稀なる傑作である」と評されている
作品です。ベテランの新劇女優での舞台化です。
 夏の「精霊流し」(1980)、秋の「秋日和」(200
0)、冬の「鬼火(舞台は岡山)」(1993)と、戦後日
本の四季を強靱なセリフ術を駆使して描いてきた劇作家・
岡部耕大が最終章の〈春〉に挑みました。
 4月8日「花祭(はなまつり)」の日、12年ぶりに顔
を合わせた二人の老婆キクとハナが浄土寺に対峙して、
一人の男を挟んで歩んできた戦前、戦中、そして戦後を
語りだす。壮絶な「言葉喧嘩」「死生観」である。民藝
と俳優座のベテラン女優入江杏子と阿部百合子が白熱の
演技を競い合います。
 
 4月12日〜16日     紀伊國屋ホール
 

4月の公演日時の詳細はここをクリック

 
    ◎  五   月    
 
  『佐倉義民伝』 (前進座)
 作/瀬川如皐 改定/平田兼三 
 出演/嵐 圭史 瀬川菊之丞 藤川矢之輔 他
 上総国佐倉領は数年続きの凶作だったが、年貢米の取り
たてはいっそう厳しくなり、領民は飢えに苦しんでいた。
 国もとの役人ではラチがあかず、このうえは年貢軽減を
直に藩主堀田上野介に願い出ようと、江戸屋敷におもむい
た佐倉宗五郎たちは門前払いにされる。宗五郎は死罪を覚
悟で将軍への直訴を決意。その前に一目妻子に会いたいと
、印旛沼のほとり、渡し守甚兵衛の小屋にたどりつくが・・・
 
 5月12・15・17・22・24日 国立劇場大劇場
 
  『権三と助十』 (前進座)
 作/岡本綺堂 
 出演/中村梅雀 藤川矢之輔 河原崎国太郎 中村梅之助  他
 神田の裏長屋に住む駕籠かき権三と助十。仲がいいのか、
悪いのか。今日も長屋の井戸がえがもとで、喧嘩の花を咲か
す。そこへ隠居殺しの罪で入牢中に病死した彦兵衛の息子が
父の無罪を訴えるために現れたからさあ大変・・・。
 5月12・15・17・22・24日 国立劇場大劇場
 
 
 『令嬢ジュリー』 (エイコーン)
 作/ストリンドベリ 訳・演出/加来英治
 出演/栗原小巻 清水@治 木村万里
 1912)は、その作品で19世紀末の人間を追求。
近代演劇の先駆者と言われている。身分という不条理、
良き心と悪しき心、男と女。。。『令嬢ジュリー』はス
トリンドベリの代表作であり、現代でも時を超え、世界
中で公演されている。本公演では、栗原小巻、清水@治
等の熱演で、傑作との高い評価を得た。
 
 5月6日〜8日   サンシャイン劇場
 
 
  『春、忍び難きを』 (俳優座)
 作/斉藤憐 演出/佐藤信
 出演/中村たつ 川口敦子(予定)
 2005年は終戦60年の年に当たります。私たち俳優
座はこの作品から一年間を通して「昭和」と戦争を問う
演目を上演する予定です。この間の作品はすべて創作劇
を含めて日本のレパートリーを行います。その一弾とし
て斉藤憐書下しによる「忍び難きを(仮題)」を上演致し
ます。
 戦後の日本を決定した「民主化」を昭和20年、戦後ま
もない12月の長野県松本を舞台に、ある床屋の家族を通
して描く意欲作です。農地改革で右往左往する庄屋の望
月夕聞とその家族の姿は時代の波を受けて次々とあぶり
出されることになります。演出は俳優座出身(14期)の
佐藤信がはじめて担当します。
 
  5月6日〜17日 俳優座劇場
 

5月の公演日時の詳細はここをクリック

 
 
    ◎  六   月    
 
   『山猫理髪店』 (民藝)
 作/別役実 演出/山下悟
 出演/大滝秀治 三谷昇 
 日常のなかの微妙なズレ。ズレとズレとの微調整から
そこはかとなく湧きあがる笑いのドラマ。詩的空間がひ
ろがる別役戯曲の世界に、大滝秀治が初登場します。
1998年俳優座劇場で初演(木山事務所)。店主役・
三木のり平さんの最後の舞台となった作品です。
 海峡を望む小さな街。「山猫BARBAR」という古ぼ
けた理髪店がひっそりとたたずんでいる。
 店の親方にはヘンな噂があって、地元の客はほとんど
寄りつかない。そのかわり、流れ者や海峡を渡ろうとす
る人びとが訪ねるらしいのだ。競売に付された理髪店は
取り壊されることになるが、陽気な親方は大八車に道具
を積み込み、街頭で商売をはじめる……。
 この戯曲は、かつて強制連行された朝鮮人労働者への
「記憶」と「風化」がテーマとなっています。それらを
背後に潜めながら、舞台はおもしろく展開し、平易な日
常会話のやりとりや笑いのなかに、私たちの生活感覚を
研ぎ澄ませるような感銘をあたえています。
 
 6月15日〜30日  紀伊國屋サザンシアター
 
 
  『家族の写真』(俳優座劇場プロデュース)
 作/ナジェーダ・プトゥーシキナ 訳/大森雅子
 演出/鵜山仁
 出演/中村たつ 高田聖子 石田圭祐 他
 古風で快適なアパートの一室。ターニャは年老いた母
ソフィアにチャールズ・ディケンズを読み聞かせている。
体の具合が良くないソフィアは、自分が死ぬまでにター
ニャが結婚し幸せな生活が送れるようにと願っている。
 突然ドアをノックする音。若い恋人の家と間違えた中
年の男イーゴリがバラの花束とシャンパンを持って現れ
る。ターニャは思わずイーゴリに母のために15分部屋に
いてほしいと頼む。ソフィアはイーゴリをターニャが以
前つきあっていた男だと思い込み、意気投合。
「二人の結婚式をすぐにでもするように」と言い出す。
あわてる二人。母親の望みをかなえようとした、ターニ
ャの小さな嘘が周りを巻き込んで、二人の静かな生活は
急展開する。幸せを求めた小さな嘘が、クリスマスに素
敵な二人のサンタクロースを連れて来る…。
 心温まる笑いが感動を呼ぶ本邦初演のロシア現代劇「家
族の写真」。ご期待下さい。
 
  6月9日〜19日   俳優座劇場)
 
  『冬物語』  (幹の会+リリック)
 作/ウイリアム・シェイクスピア 訳/小田島雄志
 演出/平幹二朗
 出演/平幹二朗 前田美波里 小林さやか 渕野俊太 
    勝部演之 松橋登 後藤加代 坂本長利
 『冬物語』はシェイクスピア晩年の作品『テンペスト』
とならんで、人間の許しと和解をテーマにした作品です。
 16年に及ぶ時の経過の中で、<時>というコーラス役
によって前後半を分け、<不信と死>という人生の冬か
ら、<愛の復活>という人生の春へと移り変わる人間模
様を描いたロマンス劇です。
 失われたものが奇跡のように蘇るという結末は、驚き
とともに人間讃歌を奏で、気持ちよいカタルシスを観客
に与えてくれます。
 今回『冬物語』では、人生の荒波を経験した果てに<
許しと和解>という境地にたどりついた主人公リオンテ
ーズを平幹二朗が渾身の力をこめて演じます。また、こ
のたびは、平幹二朗自身が演出も手がけ、従来のシェイ
クスピア作品の堅苦しいイメージをとりはらい、歌や踊
りなど随所に織り込んだ楽しい作品に仕上げています。
 王妃ハーマイオニを演じる前田美波里の新しい魅力、
そのほか個性的な実力ある共演者たちの演技も見どころ
のひとつです。温かい心を持ち帰っていただける作品で
す。どうぞ、ご期待ください!
 
  6月9日〜12日  紀伊國屋サザンシアター
 

6月の公演日時の詳細はここをクリック

東京労演の紹介に戻ります。