東京労演
2005年 下半期 作品紹介
●『笑う招き猫』 (文化座)
原作/山本幸久 脚色/鳥海二郎 演出/原田一樹
「アカコとヒトミ」は、本物の漫才師をめざし、笑い
に青春を賭けていた。二人を温かく見守るマネージャー、 テレビのバラエティ番組に進出し有頂天になるお笑い コンビ、金儲けしか頭にないようなプロダクション社長、 その存在が濃い影を落とす元女性アイドル……。そんな 一癖ある人間たちとの関わりや様々な出来事が、彼女た ちの漫才を、そして彼女たち自身を成長させていくのだ った。しかし、絶妙のコンビに見えたアカコとヒトミの 間にもいつしか微妙な亀裂が……。はたして二人は漫才 を続けていくことができるのか。
第16回小説すばる新人賞受賞の小説の舞台化。演出
は「天国まで百マイル」で魅力的な舞台を創り上げた、 劇団キンダースペースの原田一樹。俳優人の漫才も組み 入れた、ライブ感溢れ、かつ心に染みる舞台が期待され る。 六行会ホール
●『マクベス』 (演劇集団 円)
作/シェイクスピア 訳/松岡和子 演出/平光琢也 出演/金田明夫 木下浩之 石田登 星 佐々木睦 他
スコットランドの将軍マクベスは、激しい戦いを勝ち
抜きパンクォーと共に帰還する途中で三人の魔女に出 逢う。魔女たちはマクベスに、マクベスはいずれ王にな ることを予言する。パンクォーとには、子孫が王になる と予言する。マクベスはこのことを誰よりも先に愛する 妻に知らせる。魔女たちの予言を自分たちの人生と読み 取ったマクベス夫妻は、どうせ来るものなら一刻も早い 方がいいと、ダンカン王を殺し王位に就く。だが「人」 を殺すことは「眠り」を殺すことでもあった。眠れない 夜を重ねるうちにマクベス夫人は発狂して死に至る。 ――これらのすべては、妻を喜んでもらうためではな かったのか?―― マクベスは不安一杯の明日また明日に耐えきれず、い つ果てるともない殺人ゲームとのめりこんでゆく………。 運命に翻弄されながらも、ひたすら戦い抜く骨太のス トイックさを描き出します。 紀伊國屋ホール
●『見えない友達』 (仲間)
作/アラン・エイクボーン 訳/出戸一幸 演出/亀井光子 出演/菊地勇一 新堀創世 平本隆詞 他
ルーシィは父母と兄の4人で暮らしているが、家族の
誰もが自分に関心がないと思い込み、想像上の友達を作 って寂しさを紛らしている。 ある日、その見えないはずの友達ゼアラが実際に目の 前に現れ、ルーシィの生活は一転、バラ色に変わってい くが……。 1992年初演、英国の劇作家アラン・エイクボーン 作のファミリープレィ、痛快な喜劇的タッチでテンポよ く展開しながら、家族のあり方を鮮烈に訴え、全国に笑 いと感動の渦を巻き起こした舞台の再演。 人間関係が希薄化の一途をたどっている中で、家庭は 心休まる場所・こころ許せる場所として、その存在はま すます重要なものになっている。家族の大切さ、家庭の あり方を見直すことは、今、この時代において必要不可 欠なことである。 この作品を通して、今一度家族について考えていただ ければ幸いである。 東京芸術劇場小ホール
●『壁の中の妖精』 (木山事務所)
作・演出/福田善之 出演/春風ひとみ ピアノ=伊藤弘一 ギター=細井智
一人ミュージカルのまれに見る傑作と評された舞台。
1993年の初演以来、数々の受賞に輝きながら不定期 に上演を続けて、今回が7度目の公演。 新国立劇場小劇場
●『六十年目の夏 長崎、知覧、神戸』
(六十年目の夏上演委員会) 戦後60周年の夏。2005年は平和の尊さ、命の重 さを改めて考えなければならない節目の年。劇団青年座、 劇団東演、関西芸術座の三劇団が合同で熱い夏に「平和」 「命」の大切さを感動を通して広く問いかける。
『明日』 (青年座)
原作/井上光晴 脚色/小松幹生 演出/鈴木完一郎
長崎の三浦泰一郎、ツイ夫妻の次女ヤエと中川庄司の婚
礼が三浦家で行われようとしている。空襲警報が日々の習 慣となっている中、若い二人の門出を祝おうと人々は思い 思い日常をもって集うのだった。一方、ヤエの姉ツル子は 臨月を迎え、陣痛に耐えながら初めての子の誕生を待って いる。それぞれがそれぞれの「明日」(八月九日)を信じ て懸命に生きているのだ。そして九日の早朝、晴れた朝の 空気に赤子の産声が明るく響く…。しかし、運命の11時 2分…。
『月光の夏』 (東演)
原作・脚本/毛利恒之 演出/鈴木完一郎 出演/山田珠真子 矢野泰子 岸並万里子 小高三良 他
佐賀県鳥栖市──。戦四五年のこの年、鳥栖小学校の古
いグランドピアノが廃棄されようとしていた。かって教師 をしていた吉岡公子は、そのピアノに忘れられない思い出 を秘めていた。そしてピアノを平和の願いの証として保存 してほしいという思いから全校集会で生徒たちにその思い 出を語る……。太平洋戦争末期の昭和二十年初夏、音楽学 校出身の特攻隊員二人が学校に駆けつけ、今生の別れにベ ートヴェンのピアノ・ソナタ「月光」を弾き、沖縄の空に 出撃していった……。
『少年H』 (関西芸術座)
原作/妹尾河童 脚色/堀江安夫 演出/鈴木完一郎 出演/門田裕 鴻池央子 梶山文哉 他 紀伊國屋ホール
妹尾肇こと少年Hは、海や山で囲まれた神戸の町で毎日
忙しく遊び回っている。洋服仕立て職人の父と、熱心なキ リスト教徒の母と妹の四人家族。ちょっと風変わりな家庭 に育った母は、自由奔放で好奇心と正義が人一倍旺盛。持 ち前の好奇心でいろいろと事件を引き起こしていく。そし て戦争色がどんどん強くなっていく暗い時代のなか、周囲 ではさまざな出来事が起こっていく。やがて神戸も大空襲 を受け焼け野原となり、少年Hの心は何かおかしい、戦争 も大人もおかしいと感じ始め、大きく揺れ動くのだった。
●『夜の来訪者』 (俳優座劇場プロデュース)
作/J・B・プリーストリー 訳/内村直也 脚色/八木柊一郎 演出/西川信廣 出演/鈴木瑞穂 稲野和子 外山誠二 他
緊迫の社会派ミステリー劇。 娘の婚約者を迎え一家
団らんの夜、見知らぬ男が訪れる。男はひとりの女の死 を告げ、家族たちに質問を重ねていく。 初めに父親。そして娘、婚約者、母親と、男は新たな真 実を突きつけ、彼らの生き方を問いただす。 俳優座劇場
●『夢・桃中軒牛右衛門の』 (青年座)
作/宮本研 演出/鈴木完一郎 出演/津嘉山正種 山野史人 村田則男 山本龍二 今井和子 那須佐代子 他
明治という時代の息吹を全身に受け、アジアの核であ
る中国に自由と民権に根ざした理想国家の建設という 壮大な夢を描き、その実現に奔走した日本人宮崎滔天。 だが彼の心に何かが起こった。突如浪曲師桃中軒雲右衛 門に弟子入りし、桃中軒牛右衛門を名乗る。それは滔天 ではなく、牛右衛門としての新しい夢の始まりなのか。 本多劇場
●『谷間の女たち』 (青年劇場)
作/アリエル・ドーフマン 訳/水谷八也 演出/鵜山仁 出演/小竹伊津子 上甲まち子 藤木久美子 千賀拓夫 葛西和雄 吉村直
軍事クーデター以降の軍の検挙、連行から八年。この
村の男たちは誰も帰ってこない。ひたすら帰りを待ちわ びる女たち。この村の近代化をめざして訪れた軍の隊長 は「過去は忘れて、これからの未来を作ろう」と呼びか けるが、誰も応じない。そこへ流れ着いた遺体。村の女 たちのレジスタンスが始まる。 紀伊國屋サザンシアター
●『小林一茶』 (こまつ座)
作/井上ひさし 演出/木村光一 出演/北村有起哉 高橋長英 キムラ緑子 柴田義之 永江智明
札差会所見廻同心見習五十嵐俊介
五日前、蔵前札差井筒屋八郎右衛門の寮から金四百八十 両が紛失した。そこで同心見習。「犯人の立場に立って 考える。=自分が犯人になってみることだ」かくして、 吟味芝居の幕が開く。 五十嵐自ら主役をつとめ、疑惑の男の半生を演じ、白 黒裁きをつけようという。その疑惑の男の名は、小林一 茶。 紀伊國屋サザンシアター
●『しとやかな獣』 (俳優座)
作/新藤兼人 演出/西ケ谷正人 出演/可知靖之 片山真由美 他
同名映画を新藤兼人自身の脚本により舞台化。高度成
長期直前の昭和30年代、2部屋しかない公団住宅。こ こに、金の為には世間の道徳観念など屁とも思わない一 家が住んでいる。悪に徹しきった登場人物を経済の復興 を最優先し、猛進し続けてきた戦後の日本社会とだぶら せてエネルギッシュに描く。 シアターX
●『ドライビング・ミス・デイジー』(民藝+無名塾)
作/アルフレッド・ウーリー 訳・演出/丹野郁弓 出演/仲代達矢 奈良岡朋子 他
デイジーとホークは、ユダヤ人と黒人という人種の違
いのみならず、富裕層と貧困層という社会的階級の違い もあり、二人ともそれぞれの立場において非常に誇り高 い人物。そうした二人の老人が自分たちの立場と威厳を 保ちつつ、友情を築いていくに至るまでの物語。 東京芸術劇場中ホール
●『島清、世に敗れたり』 (地人会)
作/松田章一 演出/高瀬久男 出演/上杉祥三 倉野章子 有川博 浅野雅博 森尾舞 助川嘉隆 他
大正9年、弱冠20歳で発表した長編小説「地上」に
より文壇の流行児となった島田清次郎は、幼くして父を 亡くし、貧乏を憎み、革命を夢見る天才を自認する青年。 「なんで、なんで、なんで……。」と問い続け、何ものか を掴みとろうと闘う。 紀伊國屋サザンシアター
●『天切り松〜人情闇がたり〜』
(イッツフォーリーズ) 作/浅田次郎 脚色/水谷龍二 演出/鵜山仁 音楽/吉田さとる 作詞/佐藤万里 出演/左とん平 水野龍司 小嶋尚樹 井上一馬 津田英佑他
警視総監の依頼により、防犯対策のアドバイスをする
代わりに昔懐かしの留置場に入れてもらう元夜盗の老人 松蔵。そこへ捕まってくる悪人に夜盗独特の闇がたりで 昔話をし始める。仁義と人情を大切にする怪盗一族の物 語。盗人達の笑いと涙に包まれた粋でいなせなミュージ カル。 紀伊國屋サザンシアター
●『毒の香り浅草オペラ物語』 (文学座)
作/星川清司 演出/戌井市郎 出演/江守徹 飯沼慧 外山誠二 八木昌子 神保共子 他
大正12年、関東大震災が起こる直前の数日間。芸能、
娯楽の楽園として群衆で沸きかえる浅草六区。江守徹扮 するオペラ団の主宰者、梶本又造を中心に、役者、女優、 活弁士、刑事、はたまた浮浪者、殺人狂までもがからむ 人間模様。 紀伊國屋サザンシアター
●『妖精たちの砦』 (木山事務所)
作・演出/福田善之 出演/坂元健児 池田有希子 本田次布 水野ゆふ 内田龍麿 菊池章友 磯見誠 他
戦後の焼跡の中にたむろする孤児たちの生態を活写
し、いつしか名作「ピーターパン」の世界へ行ったり来 たりする舞台設定のなかで、来るべき時代への希望を見 出そうとする少年と娼婦たち。良くも悪くも、戦後民主 主義へと向かう時代の空気を予感させる、痛切な問いが 伝わる。 俳優座劇場
●音楽劇『サマーハウスの夢』 俳優座劇場プロデュース)
作/アラン・エイクボーン 訳/出戸一幸 演出/宮崎真子 出演/畠中洋 加藤忍 鈴木ほのか 他
エイクボーンの中でも異色な音楽劇。
現実の世界に「美女と野獣」のベルとバルドマーを登場 させ、歌うことで会話を成立させるというファンタジッ クでキュートな恋の物語。物語の世界と現実の世界が錯 し、歌うことでしか会話が成立しないファンタジーの中 で展開する。 俳優座劇場
●『行路死亡人考』 (劇団1980)
作・演出/藤田傅 出演/上原弘之 室井美加 里村孝雄 加瀬慎一 八代定治 水口助弘 澤純子 他
三話のオムニバス構成で、経済繁栄の裏側でのたうち
回る人間たちの姿を巧妙な喜劇タッチで描いた藤田傅・ 紀伊國屋演劇賞個人賞受賞作の再演。 紀伊國屋サザンシアター
●『深川暮色』 (民藝)
作/藤沢周平 脚色/吉永仁郎 演出/高橋清祐 出演/伊藤孝雄 南風洋子 日色ともゑ 水原英子 他
劇団民藝が初めて藤沢文学の劇化上演。キラリとひか
る短編小説の魅力。 「意気地なし」「入墨」はともに江戸深川の裏町で、健気 にたくましく生きた女たちの物語。 三越劇場
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