東京労演

     2005年 下半期 作品紹介

    ◎ 7  月

●『笑う招き猫』 (文化座)

原作/山本幸久 脚色/鳥海二郎
演出/原田一樹 
 「アカコとヒトミ」は、本物の漫才師をめざし、笑い
に青春を賭けていた。二人を温かく見守るマネージャー、
テレビのバラエティ番組に進出し有頂天になるお笑い
コンビ、金儲けしか頭にないようなプロダクション社長、
その存在が濃い影を落とす元女性アイドル……。そんな
一癖ある人間たちとの関わりや様々な出来事が、彼女た
ちの漫才を、そして彼女たち自身を成長させていくのだ
った。しかし、絶妙のコンビに見えたアカコとヒトミの
間にもいつしか微妙な亀裂が……。はたして二人は漫才
を続けていくことができるのか。
 第16回小説すばる新人賞受賞の小説の舞台化。演出
は「天国まで百マイル」で魅力的な舞台を創り上げた、
劇団キンダースペースの原田一樹。俳優人の漫才も組み
入れた、ライブ感溢れ、かつ心に染みる舞台が期待され
る。
           六行会ホール

●『マクベス』 (演劇集団 円)

作/シェイクスピア 訳/松岡和子
演出/平光琢也 出演/金田明夫 木下浩之 石田登
星 佐々木睦 他

 スコットランドの将軍マクベスは、激しい戦いを勝ち
抜きパンクォーと共に帰還する途中で三人の魔女に出
逢う。魔女たちはマクベスに、マクベスはいずれ王にな
ることを予言する。パンクォーとには、子孫が王になる
と予言する。マクベスはこのことを誰よりも先に愛する
妻に知らせる。魔女たちの予言を自分たちの人生と読み
取ったマクベス夫妻は、どうせ来るものなら一刻も早い
方がいいと、ダンカン王を殺し王位に就く。だが「人」
を殺すことは「眠り」を殺すことでもあった。眠れない
夜を重ねるうちにマクベス夫人は発狂して死に至る。
 ――これらのすべては、妻を喜んでもらうためではな
かったのか?――
 マクベスは不安一杯の明日また明日に耐えきれず、い
つ果てるともない殺人ゲームとのめりこんでゆく………。
 運命に翻弄されながらも、ひたすら戦い抜く骨太のス
トイックさを描き出します。
                  紀伊國屋ホール

●『見えない友達』 (仲間)

作/アラン・エイクボーン 訳/出戸一幸
  演出/亀井光子 出演/菊地勇一 新堀創世
   平本隆詞 他

 ルーシィは父母と兄の4人で暮らしているが、家族の
誰もが自分に関心がないと思い込み、想像上の友達を作
って寂しさを紛らしている。
 ある日、その見えないはずの友達ゼアラが実際に目の
前に現れ、ルーシィの生活は一転、バラ色に変わってい
くが……。
 1992年初演、英国の劇作家アラン・エイクボーン
作のファミリープレィ、痛快な喜劇的タッチでテンポよ
く展開しながら、家族のあり方を鮮烈に訴え、全国に笑
いと感動の渦を巻き起こした舞台の再演。
 人間関係が希薄化の一途をたどっている中で、家庭は
心休まる場所・こころ許せる場所として、その存在はま
すます重要なものになっている。家族の大切さ、家庭の
あり方を見直すことは、今、この時代において必要不可
欠なことである。
 この作品を通して、今一度家族について考えていただ
ければ幸いである。
             東京芸術劇場小ホール

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    ◎ 8  月

●『壁の中の妖精』 (木山事務所)

作・演出/福田善之 出演/春風ひとみ
ピアノ=伊藤弘一 ギター=細井智

 一人ミュージカルのまれに見る傑作と評された舞台。
1993年の初演以来、数々の受賞に輝きながら不定期
に上演を続けて、今回が7度目の公演。
               新国立劇場小劇場

●『六十年目の夏 長崎、知覧、神戸』
          (六十年目の夏上演委員会)

 戦後60周年の夏。2005年は平和の尊さ、命の重
さを改めて考えなければならない節目の年。劇団青年座、
劇団東演、関西芸術座の三劇団が合同で熱い夏に「平和」
「命」の大切さを感動を通して広く問いかける。

『明日』 (青年座)

原作/井上光晴 脚色/小松幹生
演出/鈴木完一郎

 長崎の三浦泰一郎、ツイ夫妻の次女ヤエと中川庄司の婚
礼が三浦家で行われようとしている。空襲警報が日々の習
慣となっている中、若い二人の門出を祝おうと人々は思い
思い日常をもって集うのだった。一方、ヤエの姉ツル子は
臨月を迎え、陣痛に耐えながら初めての子の誕生を待って
いる。それぞれがそれぞれの「明日」(八月九日)を信じ
て懸命に生きているのだ。そして九日の早朝、晴れた朝の
空気に赤子の産声が明るく響く…。しかし、運命の11時
2分…。

『月光の夏』 (東演)

原作・脚本/毛利恒之 演出/鈴木完一郎
出演/山田珠真子 矢野泰子 岸並万里子
   小高三良 他

 佐賀県鳥栖市──。戦四五年のこの年、鳥栖小学校の古
いグランドピアノが廃棄されようとしていた。かって教師
をしていた吉岡公子は、そのピアノに忘れられない思い出
を秘めていた。そしてピアノを平和の願いの証として保存
してほしいという思いから全校集会で生徒たちにその思い
出を語る……。太平洋戦争末期の昭和二十年初夏、音楽学
校出身の特攻隊員二人が学校に駆けつけ、今生の別れにベ
ートヴェンのピアノ・ソナタ「月光」を弾き、沖縄の空に
出撃していった……。

『少年H』 (関西芸術座)

原作/妹尾河童 脚色/堀江安夫
演出/鈴木完一郎
出演/門田裕 鴻池央子 梶山文哉 他
             紀伊國屋ホール

 妹尾肇こと少年Hは、海や山で囲まれた神戸の町で毎日
忙しく遊び回っている。洋服仕立て職人の父と、熱心なキ
リスト教徒の母と妹の四人家族。ちょっと風変わりな家庭
に育った母は、自由奔放で好奇心と正義が人一倍旺盛。持
ち前の好奇心でいろいろと事件を引き起こしていく。そし
て戦争色がどんどん強くなっていく暗い時代のなか、周囲
ではさまざな出来事が起こっていく。やがて神戸も大空襲
を受け焼け野原となり、少年Hの心は何かおかしい、戦争
も大人もおかしいと感じ始め、大きく揺れ動くのだった。

●『夜の来訪者』 (俳優座劇場プロデュース)

作/J・B・プリーストリー 訳/内村直也
脚色/八木柊一郎 演出/西川信廣
出演/鈴木瑞穂 稲野和子 外山誠二 他 

 緊迫の社会派ミステリー劇。 娘の婚約者を迎え一家
団らんの夜、見知らぬ男が訪れる。男はひとりの女の死
を告げ、家族たちに質問を重ねていく。
初めに父親。そして娘、婚約者、母親と、男は新たな真
実を突きつけ、彼らの生き方を問いただす。
                 俳優座劇場

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    ◎ 9  月

●『夢・桃中軒牛右衛門の』 (青年座)

作/宮本研 演出/鈴木完一郎
出演/津嘉山正種 山野史人 村田則男 山本龍二
   今井和子 那須佐代子 他

 明治という時代の息吹を全身に受け、アジアの核であ
る中国に自由と民権に根ざした理想国家の建設という
壮大な夢を描き、その実現に奔走した日本人宮崎滔天。
だが彼の心に何かが起こった。突如浪曲師桃中軒雲右衛
門に弟子入りし、桃中軒牛右衛門を名乗る。それは滔天
ではなく、牛右衛門としての新しい夢の始まりなのか。
                  本多劇場


●『谷間の女たち』 (青年劇場)

作/アリエル・ドーフマン 訳/水谷八也 
演出/鵜山仁 
出演/小竹伊津子 上甲まち子 藤木久美子
   千賀拓夫 葛西和雄 吉村直

 軍事クーデター以降の軍の検挙、連行から八年。この
村の男たちは誰も帰ってこない。ひたすら帰りを待ちわ
びる女たち。この村の近代化をめざして訪れた軍の隊長
は「過去は忘れて、これからの未来を作ろう」と呼びか
けるが、誰も応じない。そこへ流れ着いた遺体。村の女
たちのレジスタンスが始まる。
              紀伊國屋サザンシアター


●『小林一茶』 (こまつ座)

作/井上ひさし 演出/木村光一
出演/北村有起哉 高橋長英 キムラ緑子 柴田義之
   永江智明

 札差会所見廻同心見習五十嵐俊介
五日前、蔵前札差井筒屋八郎右衛門の寮から金四百八十
両が紛失した。そこで同心見習。「犯人の立場に立って
考える。=自分が犯人になってみることだ」かくして、
吟味芝居の幕が開く。
 五十嵐自ら主役をつとめ、疑惑の男の半生を演じ、白
黒裁きをつけようという。その疑惑の男の名は、小林一
茶。
               紀伊國屋サザンシアター

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    ◎ 10  月

●『しとやかな獣』 (俳優座)

作/新藤兼人 演出/西ケ谷正人
出演/可知靖之 片山真由美 他

 同名映画を新藤兼人自身の脚本により舞台化。高度成
長期直前の昭和30年代、2部屋しかない公団住宅。こ
こに、金の為には世間の道徳観念など屁とも思わない一
家が住んでいる。悪に徹しきった登場人物を経済の復興
を最優先し、猛進し続けてきた戦後の日本社会とだぶら
せてエネルギッシュに描く。
                  シアターX


●『ドライビング・ミス・デイジー』(民藝+無名塾)

作/アルフレッド・ウーリー 訳・演出/丹野郁弓 
出演/仲代達矢 奈良岡朋子 他

 デイジーとホークは、ユダヤ人と黒人という人種の違
いのみならず、富裕層と貧困層という社会的階級の違い
もあり、二人ともそれぞれの立場において非常に誇り高
い人物。そうした二人の老人が自分たちの立場と威厳を
保ちつつ、友情を築いていくに至るまでの物語。
             東京芸術劇場中ホール


●『島清、世に敗れたり』 (地人会)

作/松田章一 演出/高瀬久男 
出演/上杉祥三 倉野章子 有川博 浅野雅博 森尾舞
   助川嘉隆 他

 大正9年、弱冠20歳で発表した長編小説「地上」に
より文壇の流行児となった島田清次郎は、幼くして父を
亡くし、貧乏を憎み、革命を夢見る天才を自認する青年。
「なんで、なんで、なんで……。」と問い続け、何ものか
を掴みとろうと闘う。
               紀伊國屋サザンシアター

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    ◎ 11  月

●『天切り松〜人情闇がたり〜』
          (イッツフォーリーズ)

作/浅田次郎 脚色/水谷龍二 演出/鵜山仁
音楽/吉田さとる 作詞/佐藤万里
出演/左とん平 水野龍司 小嶋尚樹 井上一馬
   津田英佑他

 警視総監の依頼により、防犯対策のアドバイスをする
代わりに昔懐かしの留置場に入れてもらう元夜盗の老人
松蔵。そこへ捕まってくる悪人に夜盗独特の闇がたりで
昔話をし始める。仁義と人情を大切にする怪盗一族の物
語。盗人達の笑いと涙に包まれた粋でいなせなミュージ
カル。
               紀伊國屋サザンシアター


●『毒の香り浅草オペラ物語』 (文学座)

作/星川清司 演出/戌井市郎
出演/江守徹 飯沼慧 外山誠二 八木昌子
   神保共子 他

 大正12年、関東大震災が起こる直前の数日間。芸能、
娯楽の楽園として群衆で沸きかえる浅草六区。江守徹扮
するオペラ団の主宰者、梶本又造を中心に、役者、女優、
活弁士、刑事、はたまた浮浪者、殺人狂までもがからむ
人間模様。
             紀伊國屋サザンシアター


●『妖精たちの砦』 (木山事務所)

作・演出/福田善之 
出演/坂元健児 池田有希子 本田次布 水野ゆふ
   内田龍麿 菊池章友 磯見誠 他

 戦後の焼跡の中にたむろする孤児たちの生態を活写
し、いつしか名作「ピーターパン」の世界へ行ったり来
たりする舞台設定のなかで、来るべき時代への希望を見
出そうとする少年と娼婦たち。良くも悪くも、戦後民主
主義へと向かう時代の空気を予感させる、痛切な問いが
伝わる。
               俳優座劇場 

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    ◎ 12  月

●音楽劇『サマーハウスの夢』 俳優座劇場プロデュース)

作/アラン・エイクボーン 訳/出戸一幸
演出/宮崎真子
出演/畠中洋 加藤忍 鈴木ほのか 他

 エイクボーンの中でも異色な音楽劇。
現実の世界に「美女と野獣」のベルとバルドマーを登場
させ、歌うことで会話を成立させるというファンタジッ
クでキュートな恋の物語。物語の世界と現実の世界が錯
し、歌うことでしか会話が成立しないファンタジーの中
で展開する。
                   俳優座劇場


●『行路死亡人考』 (劇団1980)

作・演出/藤田傅 
出演/上原弘之 室井美加 里村孝雄 加瀬慎一
   八代定治 水口助弘 澤純子 他

 三話のオムニバス構成で、経済繁栄の裏側でのたうち
回る人間たちの姿を巧妙な喜劇タッチで描いた藤田傅・
紀伊國屋演劇賞個人賞受賞作の再演。
               紀伊國屋サザンシアター


●『深川暮色』 (民藝)

作/藤沢周平 脚色/吉永仁郎 演出/高橋清祐
出演/伊藤孝雄 南風洋子 日色ともゑ
   水原英子  他

 劇団民藝が初めて藤沢文学の劇化上演。キラリとひか
る短編小説の魅力。
「意気地なし」「入墨」はともに江戸深川の裏町で、健気
にたくましく生きた女たちの物語。
                  三越劇場

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