東京労演
2006年 上半期 作品紹介
◎ 一 月
●『 喜多川歌麿女絵草紙 』 ( 俳優座 )
作/藤沢周平 脚色/池田政之 演出/安川修一 出演/荘司肇 中野誠也 岩瀬晃 他 それまで役者の似顔絵に限られていた大首絵を喜多川 歌麿が小伊勢屋おちゑで大首の美人を描き、江戸の庶民 に衝撃を与え、歌麿は一躍時代の寵児となった。 ある日、耕書堂の主人、蔦屋重三郎から役者絵を持ち かけられた歌麿はその話をすぐに断った。 似顔を写すにすぎない役者絵など描く気はしなかったか らであり、女しか描きたくないという歌麿の気持ちを蔦 屋重三郎ほどよく知っている人間はいない筈だったから である。 歌麿の興味は女を描くことにあった。しかも外面の美 しさだけでなく、女の内面にある女の本性というものを 描きだしたかったのだ。 だが、蔦屋に見せられた写楽という絵師の斬新な役者 絵にショックを受け、脅威を覚える。 果たしていまの自分はこの写楽の絵に勝てる美人絵を描 くことができるのか……。 時代の寵児・喜多川歌麿を中心に、その兄弟子栄松斎 長喜、蔦屋重三郎、山東京伝、若き日の滝沢馬琴を交え て描く藤沢周平ワールド第三弾にご期待下さい。 紀伊國屋サザンシアター ●『 兄おとうと 』 ( こまつ座 ) 作/井上ひさし 演出/鵜山仁 出演/辻萬長 小嶋尚樹 大鷹明良 剣 幸 宮地雅子 神野三鈴 民主主義を提唱し大正デモクラシーの旗手となった偉 大な政治学者吉野作造。 多くの門弟をかかえ人びとの尊敬を集めた作造には、年 の離れた弟があった。 吉野信次。兄作造より十歳下。東大法学部から農商務省 に入り、のちに大臣を二度務めたピカピカの高級官僚に して凄腕の政治家。 この兄弟、ともに信念固く仕事に励み、獅子奮迅の日々。 生涯に、枕を並べて寝たことはほんの数えるほどしかな かった。 それも、たまに会えば決まって必ず議論、政論、激論、 痛論……! しかも、兄作造を支える賢婦人玉乃と、弟信次に寄りそ う賢妻君代は、血のつながった実の姉妹だった……。 二〇〇三年に初演。演出の鵜山仁が読売演劇賞の大賞を、 ピアノ演奏の朴勝哲が同優秀スタッフ賞を獲得した、音 楽評伝劇の傑作。作者大幅に加筆し、大増補版でお届け する、堂々の再演! 紀伊國屋ホール ●『 湖のまるい星 』 ( 文学座 )
作/鈴江俊郎 演出/藤原新平 出演/松下砂稚子 赤司まり子 塩田朋子 外山誠二 他 鈴木俊郎の書き下ろし作品が新春に登場。演出は「野 分立つ」「家路」といったヒット作を手掛けた藤原新平。 舞台は湖のほとりに建っているペンション。 経営者は食品メーカーを脱サラした田桜。 妻と娘、元部下の明神とともに夢の田舎暮らしをしてい る。 この湖では年に一度、精霊の送り火という山焼きの行事 が行われる。イベントを目前に控え、慌ただしくなって きたある日。 田桜のペンションにも何組かの客が宿泊していた。 しかしどの客も何かしらの事情を抱えている風であり、 山焼きを前に何か問題が起こるのではと、田桜は戦々恐 々としている。 そこへ舞い込んだ山焼き中止の噂。 もう明日に迫っているのに、今更中止には出来ない。 お客たちにもそれぞれ不審な行動や発言が目立ち始め、 とうとう行方不明者がでてしまう! こうして田桜一家と宿泊客たちの長い一日がはじまった。 湖に古くから残る、美しい娘の身投げ伝説と現実の世界 が絶妙にシンクロしてゆく。 新春の初笑い作品にご期待下さい。 紀伊國屋サザンシアター
◎ 二 月
●『 ハリウッド物語 』( 木山事務所 ) 作/クリストファー・ハンプトン 訳・演出/勝田安彦 出演/内田稔 可知靖之 宮本充 村松恭子 林次 樹 広瀬彩 橋本千佳子 他 1940年代のハリウッド。トーマス・マン兄弟やブ レヒトらナチスに追われ、ドイツからアメリカに亡命し た文学者たちの葛藤を通して、当時の知識人の社会的責 任を追求しつつ、ハリウッドに象徴される永遠に成熟し ない国アメリカを描いた異色作。 俳 優 座 劇 場 ●『 評決 』 ( 青年座 ) 作/国弘威雄・斉藤珠緒 演出/鈴木完一郎 出演/益富信孝 山野史人 永幡洋 長克巳 山口晃 嶋崎伸夫 平尾仁 井上智之 大家仁志 堀部隆一 青木鉄仁 若林久弥 蟹江一平 川上英四郎 豊田茂 那須佐代子 「違います!」 憂いを秘めた被告・吉田静子の悲痛な叫びが法廷に響き 渡った。 その罪は放火殺人 夫と姑を焼死させたのだ 床屋・写真館・蕎麦屋・化粧品外交員・踊りの師匠・退役 陸軍大佐・銀行支店長代理・古物商・呉服問屋・円タク運 転手・撮影所所長・百姓様々な職業の十二人の男たちが東 京地方裁判所に集められた。 「あの女は絶対にやっているよ」「目許といい唇といいあ れは正しく‥‥」「いやもっと分別のある女じゃないか} 「‥女優にしてもいいくらいだべ‥へへ」「私は黒だと思 うね」「でも女はやってねって」「嘘に決まってるじゃな いか」「おらあ‥ほんとうに分かんねえす」 決め付け、戸惑い、無関心、心配事 様々な人間模様の渦巻く中、真実に向き合わされた十二人の 日本人が出した結論とは? 昭和三年から十五年間、日本でも陪審裁判が行われていた。 紀伊國屋ホール ●『 橋からの眺め 』 ( 民 藝 ) 作/アーサー・ミラー 訳/菅原 卓 演出/児玉庸策 出演/内藤安彦 西川明 箕浦康子 他 アーサー・ミラー追悼記念公演。 ニューヨーク、ブルックリンの湾岸地区。その一角に ある安アパートに、湾岸労働者とその妻、そして幼くし て両親を亡くした彼女の姪の三人が住んでいる。 燐人たちとほどよく折り合いのついた家族。 ある日、親類のイタリア人が密入国して来る。やがて二 人の男をかくまう家族に、運命の大きな波紋が生じてい く。 紀伊國屋サザンシアター
◎ 三 月 ●『 チャリング・クロス街84番地 』 ( 昴 ) 原作/ヘレーン・ハンフ 訳/江藤淳 潤色/吉岩正晴 演出/松本永実子 出演/内田稔 望木祐子 他 原作はニューヨークに住む無名の女流作家ヘレーン・ ハンフが1949年からおよそ20年、英文学書を注文す る為にロンドンにある老舗書店マークス社と取り交わし た手紙の書簡集が元になっている。 81年に舞台化されて以降、3年に渡り上演回数550回 を越えるロングランとなった。 昴では1985年に本邦初演して以来再演を重ね、劇団 の代表作のひとつ。 三 百 人 劇 場 ●『 流星に捧げる 』 ( 地人会 ) 作/山田太一 演出/木村光一 出演/山本學 風間杜夫 中村たつ 根岸季衣 他 閑静な住宅街にある家。一人暮らしの大学教授が住ん でいる。が、家政婦が週に何度か掃除、洗濯などの身の 回りの世話をしに通ってきている。 その家に突然、訪ねてくる男、女、若い男女など。 何が目的なのか、実はこの家を根こそぎ乗っ取ろうとし ている詐欺グループだったのだ。 しかし、まったくの赤の他人だったかれらは、いつしか 心をかよわせ疑似家族のようになってゆく…。 紀伊國屋サザンシアター
◎ 四 月 ●『 女相続人 』 ( 俳優座劇場プロデュース ) 作/ヘンリー・ジェイムズ 訳/安達紫帆 脚色/オーガスタ&ルース・ゲッツ 演出/西川信廣 出演/鈴木瑞穂 土居裕子 増沢望 八木昌子 井口恭子 他 1850年。ニューヨーク社交界の中心をなす富豪の 邸宅が居並ぶワシントン広場。 オースティン・スロウパー医師は、一人娘のキャサリン と未亡人の妹、女中の四人で暮らしていた。 ある日、キャサリンの従姉妹マリアンとその婚約者アー サーが訪ねてくる。 アーサーはその時、自分の従兄弟であるモリス・タウン ゼンドという青年を連れてくる。 彼はハンサムで、教養も社交性もある紳士に見えた……。 俳 優 座 劇 場 ●『 出番を待ちながら 』 ( 木山事務所 ) 作/ノエル・カワード 訳/高橋知伽江 演出/末木利文 出演/南風洋子 松下砂稚子 北村昌子 溝口順子 大方斐紗子 堀内美希 加藤土代子 水野ゆふ 他 現役を引退した60才以上の女優たちが慈善(老人)ホ ームに入り、そこでの悲喜こもごもの生態を描いたウェ ルメイド・プレイの傑作。 それぞれがかつて舞台や映画で活躍した人びとだが、 いまもなお現役の頃の「地位」や「愛憎」を引きずって いる。 そんな生活の中にも、得意の歌や踊りが飛び出して、喜 び合い、励まし合いながら、決意を持って生きていく。 しみじみと胸をうち、時には笑いが広がる好舞台。 俳 優 座 劇 場 ●『 審判−神と人とのあいだ・− 』 ( 民 藝 ) 作/木下順二 演出/宇野重吉 補演出/児玉庸策 出演/大滝秀治 伊藤孝雄 他 戦後60年のいま、あらためて、戦争とはなにかが問わ れている。 靖国問題や歴史教科書、憲法改定の動き、中国・韓国等 アジア外交に揺れる現代の日本。その根もとには、日本 人自らの手で追求してこなかった戦争責任の問題(「未 精算の過去)」がいまも横たわっている。 1946年5月。敗戦直後の混乱と虚脱状態のなかで 開かれた軍事指導者28人にたいする極東国際軍事法廷。 膨大な法定記録をもとに、生まれた木下戯曲の代表作。 戦勝国が敗戦国を裁くという単純なものではなく、人道 上の是非を問い戦争と人間の本質をつく衝撃の問題作。 紀伊國屋サザンシアター
◎ 五 月 ●『 風薫る日に』( 俳優座 ) 作/ふたくちつよし 演出/亀井光子 出演/未定 都心から一時間ほどの住宅地にある平山家の座敷。 決して新しくはないが、それなりの格調を整えている構 え。そして今日は、祖父正綱の米寿の祝いがここ平山家 で開かれるらしい。 ごく内輪の、家族のみの会ではあるが久しぶりに家族も 皆この会に参加することになっていた……。 俳 優 座 劇 場 ●『 謎帯一寸徳兵衛・魚屋宗五郎 』( 前進座 ) 出演/中村梅之助 嵐圭史 藤川矢之輔 中村梅雀 河原崎國太郎 他 75周年を迎える前進座が、その記念公演として総力を あげて取り組む。 前進座創立年(1931)に上演の南北作「謎帯一寸 徳兵衛」は、「東海道四谷怪談」の粉本になった作品で、 極悪人大島団七の色悪ぶりと、お辰・お梶二役、早替り もある女方の演じ分け、徳兵衛の義に厚い人物像など、 みどころたっぷり。 記念の「口上」では梅之助の次代に託す熱い想いを述べ る。そして、極めつけ、梅之助の「魚屋宗五郎」。 国 立 劇 場 大 劇 場 ●『 中西和久のエノケン 』( 京楽座 ) 作・演出/ジェームス三木 出演/中西和久 小笠原真穂 渋沢やこ 長門綾子 西村剛士 黄 英子 他 浅草の人気歌劇団のコーラスボーイに採用された榎本 健一は、たちまち頭角をあらわしのも束の間、関東大震 災によって活躍の場を失う。地方巡業をすも客は来ず。 仲間とコントを上演しながら復興した東京・浅草に戻り、 カジノ・フォーリー、ピエル・ブリアントを結成し、黄 金時代を築く。戦前・戦後の庶民のささやかな心のやす らぎとなったのである。だが、エノケン一座の絶頂期に 思わぬ病に倒れ、再起をかけた復帰後にもまた、病魔が 襲い、片足を失います。ハロルド・ロイドに励まされ、 再び、大衆に愛されながら、晩年まで舞台に立ち続けました。 骨太のお芝居でありながら中西和久が、歌のうまさ身 の軽さで定評のあった榎本健一に扮し、懐かしいメロデ ィにのせ歌やダンス・タップ・剣劇等を披露します。
◎ 六 月 ●『 鈴が通る 』 ( 文化座 ) 作/三好十郎 演出/小林裕 出演/佐々木愛 高村尚枝 佐藤哲也 米山実 他 敗戦から5年たったある村。 月の26日、今日も鈴の音が村の道を通って行くォュ。 後家のそめは農作業や子守もこなすしっかり者。 しかし毎月26日になると取りつかれたようによそ行きの 着物を着、鈴を結わえ付け、村の道を歩いて行く。 戦死したと思っていた末の息子がシベリアで生きている ことがわかり、息子を返してほしいと役場にお願いしに 通うのである。 三 百 人 劇 場 ●『 エイミーズ・ビュー』 ( 民 藝 ) 作/ディビッド・ヘア 訳・演出/丹野郁弓 出演/奈良岡朋子 舞台女優とその娘の20年間。 芸術と社会との関係を鋭く追求したヘアの傑作戯曲。 ニューヨーク・ロンドンで大ヒット。 奈良岡朋子がその演劇人生の集大成として、舞台に執念 を燃やす女優に挑む注目の舞台。 紀伊國屋サザンシアター ●『 ハーヴィーからの贈り物 』 ( NLT ) 作/マリー・チェイス 訳/黒田絵美子 演出/グレッグ・デール 出演/木村有里 川端槙二 平松慎吾 高越昭紀 佐藤淳 カリフォルニア州パサディナの名家、ダウト家。 跡取り息子のエルウッドは、温厚で心優しき紳士である。 だが、彼には、ハーベイという名の不思議な親友がいる。 ハーベイは身長1メートル90センチの大きな白兎なのだ ……。 俳 優 座 劇 場
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