東京労演
2006年 下半期 作品紹介
◎ 七 月
●『東京原子核クラブ』 (俳優座劇場プロデュース) 作/マキノノゾミ 演出/宮田慶子 出演/田中壮太郎 千葉哲也 西山水木 坂口芳貞 山本龍二 壇 臣幸 小飯塚貴世江 佐川和正 昭和7年、東京本郷にある下宿屋「平和館」。理化学研究所に勤める若き 物理学者・友田晋一郎は、研究所のレベルの高さに自信を失い、故郷の京都 に帰ろうとしていた。また、同じ平和館の住人・富佐子も、レビュウで踊っ ていたのだが若い踊り子に人気を取られ、失意のなか東京を去るところだっ た。そんな折り、理化学研究所の同僚・武山が、友田の提案した物理学上の 仮説が主任の西田に認められたという明報を伝える。友田はあらためて研究 所に残る決心をするのだった。 下宿に住むピアノ弾き、新劇青年、野球に熱中する東大生らと共に、愚か しくも美しい青春の日々が始まる。だが、日本はやがて少しずつ戦争に向か って歩んでいた。 俳優座劇場 ●『いちゃりば兄弟−ある島の物語』 (東演) 作/謝名元慶福 演出/鈴木完一郎 出演/未定 三百人劇場 沖縄の島々を風のように旅しながら、島の芸能と芝居を見せる女座長を含む 7人の一座がある。 一座の得意な出し物はある家族の歴史で、長い琉球・沖縄の人々の苦難に満 ちた生活であっても、決して失うことのなかった人々の絆、明るさの中で生き る人々の物語。そして今日の出し物は一一一。 老婆が先祖の位牌の前で、長男の突然の死により位牌を引き継ぎいなくなっ たことを嘆き、訴えている。 仏壇の横には弾かれなくなった三線が置かれたままである。 そこへ中国人の青年とアメリカ人の娘が現れ、あなたの家に暫く置いてくれ という。二人とも祖先の家を探しに来たという。老婆は戸惑いながらも祖先の 話を語り始める。アメリカへ移民で行った男、満州開拓団へ行った女…それは 長い歴史でもあった。そして波乱に満ちた歴史と人生を若い二人に熱く語り始 める。 ●『フィガロの離婚』 (地人会) 作/エデン・フォン・ホルヴァート 演出/鵜山仁出演/羽場裕一 古村比呂 立川光貴 金沢碧 他 18世紀フランスの劇作家ボーマルシェの名作、モーツアルトのオペラとして も有名な『フィガロの結婚』のその後の物語です。 伯爵家の召使夫婦であるフィガロとその妻スザンナが革命の後、伯爵夫婦とと に国外に亡命。そこで初めて伯爵に依存する生活から抜け出して、革命前には想 像もしなかった現実生活の困難に直面することになります。時あたかも自由、平 等、博愛の新時代、といえば聞こえはいいが、まかり間違えば心の潤いよりも金 が大きな口をきく世の中。フィガロもスザンナも「自由」を手に入れたと思った とたん、実は自分たちも、やはり古い社会の庇護の下にいたことに気づかされま す。「革命」によって華々しくふたを開けた新しい時代の始まりは、実はフィガ ロ夫婦の受難の幕開けでもあったわけです…。 紀伊國屋ホール
◎ 八 月
●『新派 鶴八鶴次郎』 (松竹) 作/川口松太郎 演出/大場正昭 出演/波乃久里子 風間杜夫 笹野高史 紅貴代 他 直木賞作家であり新派の代表的な作家である川口松太郎の作。 花柳の当たり芸である「花柳十種」のひとつにもあげられ、新内の 美しい旋律が流れるなかで、新派特有のこまやかな愛情や心遣いが 見る人の心をゆさぶる。 三越劇場 ●『林檎園日記』 (東京演劇アンサンブル) 作/久保栄 演出/広渡常敏 出演/公家義徳 志賀澤子 清水優華 原口久美子 伊藤克 松下重人 樋口祐歌 大多和民樹 一昨年久保栄・作「日本の気象」を上演し高い評価を得た東京演劇ア ンサンブルが、昨年再び「日本の新劇が生んだ最高傑作」と久保自身が 評価した「林檎園日記」に挑戦した。その好評により、早くも再演。 俳優座劇場 ●『紙屋町さくらホテル』 (こまつ座) 作/井上ひさし 演出/鵜山仁 出演/辻萬長 土居裕子 木場勝己 森奈みはる 久保酎吉 河野洋一郎 大原康裕 栗田桃子 昭和20年、五月、広島。紙屋町さくらホテルは、名優丸山定夫とスター 女優園井恵子を迎えた。そして、女主人をはじめ宿泊客までが、まるごと 移動演劇隊「さくら隊」に入隊することになる。 公演は二日後。演し物は「無法松の一生」。しかし彼らの前途には山の ような困難が待ち受けていた。 紀伊國屋ホール
◎ 九 月 ●『夫婦レコード』 (青年座) 作/中島淳彦 演出/黒岩亮 出演/津嘉山正種 井上智之 矢崎文也 那須佐代子 ひがし由貴 他 2004年、創立50周年記念公演として初演した。長い間一緒に暮らした 中村康夫の妻・民子が突如亡くなった。死因は心臓麻痺。町内会の温泉旅行 中突然のことだった。 旅行に参加せず、自宅でその知らせを聞いた康夫は一瞬何のことだか分か らなかった。あまりにも唐突に、妻の死はやってきた……。 俳優座劇場 ●『たいこどんどん』 (前進座) 作/井上ひさし 演出/高瀬精一郎 出演/松山政路 藤川矢之輔 河原崎國太郎 他 創立75周年の秋に前進座が放つ、井上ひさし版「弥次さん喜多さん」珍道中! 世の中どんなに変わっても、どっこい生きてる君と僕! 三越劇場 ●『ゆれる車の音 〜九州テキ屋旅行日記〜』 (文学座) 作/中島淳彦 演出/鵜山仁 出演/角野卓造 田村勝彦 たかお鷹 鵜澤秀行 塩田朋子 他 全国で大変好評の文学座傑作喜劇シリーズ。「缶詰」「踏台」に続く 最新作。 舞台は九州・宮崎のとある町。今日は縁日とあって普段は静かなこの町も 何となく華やいでいる。 小さな神社につながる参道沿いには多くの屋台が並び、楽しそうに往来する 家族連れで賑わっている。とこが、そんな屋台の裏側では、「テキ屋」同士が 一触即発の状態でにらみ合っていた……。 紀伊國屋サザンシアター
◎ 十 月 ●『罪と罰』 (俳優座) 原作/ドストエフスキー 訳/桜井郁子 脚色/リュビーモフ 演出/袋正 出演/小山力也 小笠原良知 立花一男 志村要 斎藤淳 天野眞由美 西田有希 若井なおみ 俳優座代表だった千田是也は、その晩年ロシアの文芸作品の舞台化を企画し 「復活」「カラマーゾフの兄弟」等に精力的に取り組み、高い評価を受けた。 その演出に俳優、演出助手として係わってきた袋正の企画である。 千田作品の真髄を継承し、舞台化する。 紀伊國屋ホール ●『破戒』 (京楽座) 作/島崎藤村 脚色/村山知義 潤色/中河小鉄 演出/西川信廣 出演/三國連太郎 中西和久 他未定 わが国の自然主義文学のさきがけきなった島崎藤村の小説「破戒」は、 その出版から百周年を迎えます。京楽座はこれを記念してこの不朽の名作を、 西川信廣氏(文学座)の演出、三國連太郎氏の参加で制作。 俳優座劇場 ●『族譜(仮題)』 (青年劇場) 原作/梶山季之 脚本・演出/ジェームス三木 出演/未定 歴史認識で冷却状態が続く日韓関係の中で、戦争中のソウルを舞台にした 梶山季之氏の小説「族譜」をジェームス三木が脚色、舞台化。 時は昭和15年。日本政府が進めた「創氏改名」政策。その目的やその実態が、 心ならずも任にあたった若い画家と、700年にわたる「族譜」を盾に頑と して拒否する大地主一家との葛藤、交流を通して明らかにされて行く。 紀伊國屋サザンシアター
◎ 十 一 月 ●『シラノ・ド・ベルジュラック』 (文学座) 作/エドモン・ロスタン 演出/鵜山仁 出演/江守徹 他 今回のシラノには「文学座創立70周年記念公演」シリーズのスタートを 飾る舞台にふさわしく、文学座を代表する俳優、江守徹を起用。演出には、 その精力的な活動でストレートプレイのみならず、ミュージカルやオペラに おいても手腕を発揮している鵜山仁が初の「シラノ」に挑みます。 これまでにない豪快華麗な「シラノ・ド・ベルジュラック」。 北千住・THEATRE1010 ●『戊辰戦争』 (岡部企画) 作・演出/岡部耕大 出演/今井徳太郎 いわいのふ健 小池雄介 他 2006年春。上野「不忍池ホテル」では盛大な結婚披露宴が催されようと している。新郎は佐賀県生まれ、佐賀から多くの親戚が集まっている。 新婦は福島県会津生まれ、会津からも多くの親戚が集まっている。 和やかな話題で盛り上がっていたが、しかし、それが「彰義隊」の話題となり 「会津戦争」へと広がったことで、披露宴は大論争となっていく。 紀伊國屋ホール ●『飢餓海峡』 (地人会) 作/水上勉 演出/木村光一 出演/島田歌穂 永島敏行 金内喜久夫 松熊信義 鈴木慎平 他 戦後間もない昭和22年の台風の夜、青函連絡船の沈没事故の犠牲者の中にあった 身元不明の二つの遺体。同じ日、北海道で起こった放火殺人事件。 下北半島で娼妓をする貧しくも心やさしく純粋な女と、大金を残し立ち去った 陰のある一夜の客ォ。。 紀伊國屋ホール
◎ 十 二 月 ●『喜劇の殿さま』 (民藝) 作/小幡欣治 演出/丹野郁弓 出演/大滝秀治 樫山文枝 他 古川ロッパという不世出の名喜劇俳優の人生をたどりながら、戦中・戦後に彼の 歩んだ道とその挫折を、おかしくも哀しく描きだします。古川ロッパは華族の出身 ですが、戦中から戦後にかけていやおうなく戦争に協力してしまったロッパその人 の哀歓がみなぎっています。罪もないロッパは戦犯でしょうか。 三越劇場 ●『野火』 (俳優座) 原作/大岡昇平 脚色・演出/鐘下辰男 出演/田中荘太郎 蔵本康文 他 太平洋戦争のフィリピン、敗戦が近づく戦況下で結核のため戦線を離脱、追放を余 儀なくされた田村一等兵は野火の原野に放りだされ、数奇な軌跡をたどることになった。 異常な戦争での体験を描いたこの作品には、時代、状況を超越する人間の本質が描かれ ている。 俳優座稽古場 ●『八月の鯨』 (昴) 作/デヴッド・ベリー 訳/村田元史 演出/菊池准 出演/谷口香 小沢寿美恵 北村昌子 西本裕行 内田稔 上田亨(ピアノ演奏) 今年12月に閉館する三百人劇場の締めくくりの昴公演として、昨秋上演した「八月の鯨」 を再演します。 二人の老姉妹が幼い頃から毎年夏を過ごしてきた小さな島、その別荘でのひと夏の出来事を、 姉妹の周囲の人々との交流と共に描いています。 三百人劇場
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