東京労演
2008年 上半期 作品紹介
一 月
●『赤ひげ』 (俳優座) 原作/山本周五郎 脚本・演出/安川修一 出演/可知靖之 荘司肇 中野誠也 河野正明 内田夕夜 青山眉子 來路史圃 岩瀬晃 長崎で3年間修行した若い医師・保本登は長崎遊学中に婚約者にそむかれたことが 癒しがたい心の傷になっていた ある日、小石川養生所の医長・新出去定に呼ばれた登は自分が医局見習いとして 養生所に勤めることを言われ愕然とする。 幕府の目見医にあがってやがては御番医から典薬頭に出世したいと考えていた登に とって養生所の医員見習いは挫折以外のなにものでもなかった。 ふて腐れたように酒びたりになる登を同じ見習い医師の森半太夫や患者付き添いの お杉が諫めるが登にはなかなか伝わらなかった。 しかし、自分が今まで知らなかった小石川養生所の生活、貧乏で汚い患者、貧しさの 中でも尚もたくましく生きようとする市井の人びとや、赤ひげとあだ名される医長・新出 去定の医師としての真摯な姿に次第に感化されて行く……。 赤ひげに抵抗しようとしながら赤ひげに感化されてゆく若い医師・保本登を内田夕夜が、 人間として医師として圧倒的な存在感を見せる赤ひげに・新出去定を中野誠也が演じ、 演出には藤沢周平三部作を手がけた安川修一があたります。是非ご期待下さい。 をコンセプトに涙と笑いに溢れた作品です。 1月16日〜25日 俳優座劇場 ●『ドン・キホーテ』(無明塾) 原作/ミゲル・デ・セルバンデス 上演台本/岡山矢 演出/丹野郁弓 出演/仲代達矢 山谷初男 他 ラ・マンチャに住むアロンソ・キハーソンは、もう50歳に手が届こうとしている初老の田舎郷士である。 騎士道物語ばかりよみふけっていた影響で、ある日、彼は自分が遍歴の騎士であると思い込む。 名もドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャと勝手に改め、祖先伝来のボロ甲冑を身にまとい、 やせ馬ロシサンテにまたがり、農民のサンチョ・パンサを従えて、いとしの姫ドルシネーアを 救うために冒険の旅に出る。 彼の決定的な時代錯誤と肉体の脆弱さは、行く先々で嘲笑の的となる。 やがて旅の果てに正気を取り戻したドン・キホーテは理想と夢の終焉とともに死の床に就くのであった。 1月6日〜20日 東京芸術劇場 ●『あなまどい』 (前進座)
作/乙川優三郎 脚本/金子義弘 演出/橋本英治 出演/嵐圭史 嵐広也 浜名実貴 他 “足軽は往来で上士と出会えば平伏しなければならない”という藩の仕来りが枷となり、 足軽・寺田金吾は、徒士頭である上遠野久作を切り捨て、脱藩した。 父・久作の仇討ちを決意した若き日の関蔵は嫁いで間もない女房・喜代を残し、後を追う。 それから34年。ようやく念願を果たした関蔵は懐かしい我が家に帰還する。 長い不在にも関わらず、夫を待ち続けた喜代との再会に溢れる涙―。 かたや、家督を預け、留守中の家族の面倒を任せておいた叔父甚衛門とその息子栄之助は、 随分以前より、喜代を見捨て、仕送りを止めていた。 関蔵の帰参により、お役と家督を取り返されることを恐れた栄之助は、息子新一郎と 朋輩を使い、関蔵の誹謗中傷を藩内に触れ回って、妨害する。 栄之助の心根を見抜いた関蔵は喜代の甥桑山只次郎を養子に迎え、帰参を果たすべく、 家老戸田左京と面会するのだが・・・。 関蔵には失った34年の時を埋めるべく抱いた夢があった。 むなしい仇討ちに費やした人生を取り戻すように、たとえ5年、10年でも、夫婦で仲良く 想いのまま生きること、それだけが望みだった。 全てが終わり、再び旅立ちの途に着くこととなった関蔵。傍らには女房喜代がいる。 そこで関蔵は、若き日に出会った願人坊主を中心に新たな衝撃の真実を伝える・・・。 1月3日〜13日 前進座劇場
二 月
●『選択−一ケ瀬典子の場合』 (民藝)
作/木場久美子 演出/渾大防一枝 出演/白石珠江 戸谷友 水谷貞夫 伊藤聡 現代の終末医療と安楽死の問題はたびたび新聞・テレビなどで報道されています。 木庭久美子の野心作『選択 一ヶ瀬典子の場合』は、高齢化社会の切実な問題にメスを入れます。 末期がんに苦しみながらも病院での延命措置がつづく夫。その妻の懇願の果てに、一本の静 脈注射で患者を死へ導いた女医・一ヶ瀬典子。 マスコミは「美人医師の殺人」と書きたて、法廷で患者の妻は「依頼」を否認する・・・。 ある女医がたどる内面の軌跡と真実の選択に鋭く迫ります。 ……。 1月23日〜2月3日 紀伊國屋サザンシアター ●『人間失格』 (こまつ座)
作/井上ひさし 演出/鵜山仁 出演/岡本健一 馬渕英俚可 田根楽子 辻萬長 他 私人・太宰治の重要な人生の出来事。大地主の家に生まれるも、味噌っかす 故に愛情に飢え、家への不満を抱えた子供は上京後、共産党活動に心引かれる。 が生来の気の弱さ、お坊ちゃま気質から頓挫頻繁。 そんな彼に憤りながらも、その心根にある理想の高さに感じ入る仲間達。 彼らとの永年の友情、堕ちて行く時代への憤り、理想と現実の自分の落差にとほほな太宰の生涯を切り取って行く。 2月10日〜3月15日 紀伊國屋サザンシアター
三 月
●『昭和しゃがらなす伝』
(東演)作/堀江安夫 演出/鈴木完一郎 出演/未定 1935年夏、東北はM県の広瀬辰造の屋敷。近隣では名のしれた農家。 その末娘のたまきを長女の亭主が仙台からの電車で見かけたという。 たまきは二年程前、旅芸人の手品師に一目惚れし駆け落ち同然で家を飛び出していた。 そのたまきが雰囲気ががらりと変わっての帰郷だというのだが……。 ウエスカーの「根っ子」に想いを得て、因習とそれに抗う若者の苦闘を、コミカルに描く、堀江/鈴木コンビの最新作! 日本の歴史を背景に、エネルギーに溢れる女性たちの決断と行動……。乞うご期待! 3月3日〜9日 本多劇場 ●『はい、奥田製作所』
(銅鑼)作/小関直人 演出/山田昭一 出演/鈴木瑞穂 他 東京は大田区の小さな町工場『奥田製作所』。 老社長がある日突然倒れた半身麻痺となるが、口では一向に減らない。工場では、いやいや会社を 継いだ40代の若社長を始めベテランから新人たちが働いている。どん底の経営・働けど働けど報われない毎日。 生きる希望すら見出せない彼らに起こった奇跡とは……。 高度経済成長期・日本がものづくりに夢中な時代を生きた町工場仲間のじいさんたちの夢が、時を越え若者達の 夢を目覚めさせた……。世界が驚く技術を生んだ町工場の人達の物語。 3月19日〜23日 俳優座劇場 ●『浅草物語』
(民藝)作/小幡欣治 演出/高橋清祐 出演/大滝秀治 奈良岡朋子 日色ともえ 大滝秀治・奈良岡朋子コンビの絶妙な演技により高い舞台成果を上げた「浅草物語」(2004年の初演舞台で 大滝秀治が読売演劇大賞を受賞)が、来春、再演される事になりました。 作者の小幡欣治さんも長年にわたる創作活動にたいして今年、朝日舞台芸術賞と読売演劇大賞をダブル受賞し、 大きな話題を集めています。この作品は、春から夏にかけて九州・東北各地を巡演、ステージ数を重ねてきました。 このたびの東京芸術劇場・凱旋公演に期待がふくらみます。舞台は昭和初期の下町浅草。 大店の隠居とカフェのマダムとの恋物語を芯に、忍びよる戦争のかげに翻弄される人々の姿を鮮烈に描きます。 戦前、一大歓楽地として名を馳せた浅草のなごりも鮮やかに、おかしくもかなしい人間絵巻の幕開けです。 (あらすじ)還暦過ぎて隠居した浅草っ子のおじちゃん、結婚したいと言い出した。相手は吉原の花魁あがりとかで 家族会議はすったもんだの大騒ぎ。そのカフェのママにしても、里子に出した息子に会わずに泥酔するなど、なにやら 周囲を巻き込んでいきます。時代は徐々に戦争のかげを色濃くしていくのです。 4月1日〜6日 東京芸術劇場中ホール
四 月
●『颶風のあと(仮題)』 (俳優座) 作・演出/福田善之 出演/大塚道子 早野ゆかり 可知靖之 児玉泰次 渡辺聡 ほか 時は明治10年、西南戦争の年。所は東京の大川が海へ流れいるあたりの古屋敷。 明治維新の激動期に身を挺して戦ってから10年。 戦いに赴いた者と拒んだ者との対立を中心に繰り広げられるミステリー風味の人情剣劇。 たとえ「心を指すところ」(ココロザシ)が見えなくなったときにも、心が生き、息づくところ(ココロイキ)を、 と願う人間の本能的な思いを、骨肉相食む西南戦争を背景に描く最新作。 4月8日〜20日 俳優座劇場 5階稽古場 ●『子乞い』
(文化座)作/森口豁 脚色/杉浦久幸 演出/原田一樹 出演/佐々木愛 有賀ひろみ 伊藤勉 青木和宣 その小学生がいなくなってしまえば、小学校は廃校となり、島の過疎に拍車をかけてしまうのだ。 そこで島の大人たちは、親戚の子を島外から借りてきてまで小学校を存続させようとした。 子どもさえいれば……。大げさでなく村の未来はその子どもにかかっていた。 そうして島に連れてこられた少年に、島の暮らしは果たしてどう写ったか。 南の果ての小さな島・鳩間には、澄みきった空と、でっかい太陽と、真っ青な海しかなかったが、一人ひとりが 主役になれる元気がいっぱいあった。 原作は、TVドラマ「瑠璃の島」の原作ともなった森口豁氏、渾身のドキュメンタリー。 今から20数年前のある沖縄の離島を舞台に、人間のあるべき姿、理想の人間の生き方を真摯にみつめ、問い直す、 そんな舞台にできたらと思います。 4月17日〜27日 俳優座劇場 ●『ミュージカル 火の鳥』 (わらび座) 作/手塚治虫 脚色/齋藤雅文 演出/栗山民也 出演/パク・ トンハ 戎本 みろ 他 2008年は日本アニメーションの創始者・手塚治虫の生誕100周年。 これに際し、わらび座はその代表作とも言うべき「火の鳥」より鳳凰編をミュージカル化 これより2年間にわたり全国公演をいたします。 (あらすじ) 舞台は奈良時代と呼ばれた8世紀の日本。 隻眼隻腕の盗賊・我王は、命を助けられた高僧・良弁上人と諸国を巡るうちに、病や死に苦しむ人々の姿に出会い、 眠っていた彫刻家としての才能を開花させました。 一方、若き日の我王に利き腕を傷つけられた仏師・茜丸は、精進の末にリハビリに成功して、名声を高め、 奈良・東大寺の大仏建立のプロデューサーにまで出世しました。 茜丸のパトロンとなった時の権力者橘諸兄は、大仏殿の鬼瓦の製作を、茜丸と我王に競わせることに決め、 ふたりはライバルとして運命の再会をします。 しかし、勝負に敗れそうになった茜丸は、我王の旧悪を暴露して、我王の残っていた右腕を切り落とさせてしまいました。 (原作より) 4月25日〜5月4日 新宿文化センターホール
五 月
●『風間杜夫ひとり旅 新作4部・5部一挙上演』 (トム・プロジェクト) 作・演出/水谷龍一 出演/風間杜夫 数々の賞を受賞し、日本全国、海外を笑いと感動の渦に巻き込んだひとり芝居三部作。 「第一部カラオケマン・第二部旅の空・第三部一人」の続編。風間杜夫があらたな夢を追い続ける待望の新作! 団塊の世代を代表して、万感の思いを込めて演じます、歌います、ハジケます! 風間杜夫が還暦を前にしても衰えを知らない精神と体力と演技力を駆使し、団塊の世代を代表して、観客を魅了します。 97年ひとり芝居第一弾「旅の空」、00年第二弾「カラオケマン」、03年第三弾「一人」を加えての三部作一挙上演。 この風間杜夫ひとり芝居は笑いと哀愁が程良く混じり、管理社会で元気のないサラリーマンに様々な道を考えさせる団塊世代の 応援歌でもある三部作で平成15年度文化庁芸術祭大賞と読売演劇大賞最優秀男優賞など、多くの賞を受賞。 その後この三部作は4年間みにてちかちすに全国各地で上演され、代絶賛を浴びた。 そして2008年ついに主人公「牛山明」のその後人生が描かれる。 5月31日〜6月7日 紀伊國屋ホール ●『怒る富士』
(前進座) 原作/新田次郎 脚色/田島栄 演出/十島英明 出演/嵐圭史 (あらすじ) 宝永四年十一月二十三日、富士山の大噴火、山麓の村々は降砂に埋まり、田畑は壊滅した。だが領主も幕府も救援の 手をうたぬのみか、実力者たちは醜い派閥争いにあけくれていた。 幕府は急遽、関東軍代伊那半左衛門に被災地代官の兼務を任命した。 ある日、半左衛門の陣屋に四人の若者が訪れた。かれらは命がけで村の惨状を訴え、助けを乞う。「食する物は何もなく、 鳥さえも去っていった」という話は半左衛門の胸をえぐった。 かれは被災地へ急行し農民を励ました。「お上は決して民を見捨てない……」 半左衛門への信頼だけが農民たちの生きる支えとなり、かれもそれにこたえて努力した。だが、幕府の援助は少なく、 田畑の復旧作業は進まず、飢えに倒れる者や故郷を捨てる者が相次ぐ。 将軍が代わり、幕府の実力者たちも交代していくが、誰一人として富士山麓に目を向けようとはしなかった。 半左衛門は己の生命と伊那家の命運を賭けて、時の政治に敢然と反抗することを決意した。かれの義心に感動した 駿河代官能勢権兵衛は、法を破り幕府の米蔵を開くが……。 そして、宝永山が久しぶりに白煙を吹き上げた−−−。 5月11日〜22日 国立劇場大劇場
六 月
●『プライス−代償−』 (民藝) 作/アーサー・ミラー 訳/倉橋健 演出/兒玉庸策 出演/里居正美 三浦威、水原英子 他 『セールスマンの死』『るつぼ』など「社会的良心」を作劇の背景に、現代の矛盾を衝く巨星アーサー・ミラー。 『プライス−代償−』は、『橋からの眺め』『転落の後に』『ヴィシーでの出来事』に続く9作目の傑作戯曲です。 定評のある民藝のミラー劇上演にご期待下さい。 (あらすじ) かって富裕階級が住んでいた大きなマンションの一室。古い家具が雑然と積み上げられているこの部屋で、二人の 兄弟が16年ぶりに再会する。 実業家だった父親は1930年の世界大恐慌で没落、廃人同然となった。兄はその家を捨て、医師として富と名声を得た。 大学を中退して警察官になった弟は、貧しいながらも父が息を引き取る日まで面倒をみてきた。 今まさに家具類を処分しようというその時に、音信不通の兄が突然現れたのだった。 兄弟の過去、異なる生き方についてドラマは展開する。 人が生きてゆく道筋支払わなければならない代償とは……? 6月25日〜7月7日 紀伊國屋サザンシアター ●『父と暮らせば』 (こまつ座) 作/井上ひさし 演出/鵜山仁 出演/辻萬長 栗田桃子 昭和23年7月。人類史上初の原子爆弾が投下されてから3年後の広島。 図書館に勤める美津江はは、3年前の惨劇で大勢の人々が犠牲になった中、自分が生き残ったことの負い目に苦しみながら、 息を殺すかのようにひっそりと暮らしている。 ただ死を迎えるその日を待つだけの暮らしを続けていこうと思っていた彼女の前に、ある日一人の青年が現れた。 原爆の資料集めに情熱を注ぐ木下というその青年に好意を示され、美津江もいつしか木下青年にひかれていく。 しかし、美津江はそんな自分の恋心を押さえつけ、黙殺しようと必死である。「自分は人を好きになってはいけない。 幸せなど望んではいけない。」と……。 頑なに恋心を否定し、幸せになる一歩手前で躊躇する美津江に、父の竹造は、なだめ、すかし、脅かし、さとし、考えられる ありとあらゆる手を使って何とか美津江に心を開かせようとするのだが……。 昭和20年の盛夏の広島。そこは戦況に怯えながらも必死に生きようとする普通の人々が暮らしていた。 しかし、8月6日の午前8時15分、突如頭上に炸裂した一発の閃光が人々の運命を変え、広島をヒロシマに変え、 父と娘の未来を変えた。 6月13日〜22日 紀伊國屋サザンシアター ●『真実のゆくえ』 (俳優座劇場プロデュース) 作/ジェフリー・アーチャー 訳/小田島恒志 演出/西川信廣 出演/有川博 稲野和子 立花一男 児玉謙次 加藤土代子 庄司肇 石川敬彩 イギリス中央裁判所でセンセーショナルな公判が開廷した。薬物による夫人殺害の容疑者デ−ヴィッド・メトカーフは、 多くの裁判に勝利し弁護士会会長も務める著名な弁護士。彼は無罪を主張し、弁護人に自らを指名し裁判に臨んでいた。 長年のライバルであるブレア・ブースは検察として証人尋問を重ね、デ−ヴィッド夫人の遺産によって破産を免れた事実を暴き、 借金と病身の妻から解放されるための殺人だったと主張する。 殺人にわずかでも疑いが残れば無罪、疑う余地がなければ有罪−−−。 デ−ヴィッドは無罪判決を得たものの一人自宅に引きこもる。 正当な主張で勝ち取った「無罪」と、語られなかった「真実」……。 彼はある決意を抱いて友人ハミルトンを自宅に招くのだった。 「一二人の怒れる男たち」「夜の来訪者」に次いで俳優座劇場プロデュースが贈る社会派サスペンス。 妻の死を巡る真実とは……!? 陪審員は来客のあなたです。 6月5日〜15日 俳優座劇場
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