東京労演
2008年 下半期 作品紹介
◎ 七 月
●『ミュージカル 野菊の墓』 (イッツフォーリーズ) 原作/佐藤左千夫 作詞・脚本/佐藤万里 音楽/酒井義久 演出/雁坂彰 出演/井上一馬 森隆二 大塚庸介 堀内俊哉 茂木沙月 磯部祐子 金村瞳 米谷美穂 他 伊藤左千夫の処女小説「野菊の墓」は、明治39年(1905年)に公表されや いなや大反響を呼び、近代文学作品として多くの人に読み継がれてきました。 イッツフォーリーズはミュージカル化にあたり、現代社会で忘れられた「純愛」 にスポットを当てながらも「悲恋」というその言葉だけではない、明治を生きる 一人の女「民子」を儚くも力強い女性として表現し、決して昔の恋愛を懐かしむ のでなく世の中の流れに押しつぶされそうになりながらも必死に生きる一人の女 性の姿を、美しい音楽と共に客席に届けたいと考えています。 テーマ曲には、映画「野菊の墓」で松田聖子が歌った「花一色」を使用し、音 楽性の高いイッツフォーリーズならではのミュージカルです。 静かな田園を背景に、15歳の政夫と二つ年上の従姉、民子との間に芽生えた幼 くも清純な恋・・・。 けれども、二人は世間体を気にする大人たちに隔てられ、少年は町の中学へ、少女 は心ならずも、他家へ嫁いでいくのだった・・・。 7月26日〜27日 俳優座劇場 ●『殺人同盟』 (NLT) 作/ロベール・トマ 訳/和田誠一 演出/竹垣巴邑類 出演/川端槇二 木村有里 加藤健次 阿知波悟美 渡辺力 眞継玉青 真堂藍 「殺人同盟」の作者ロベール・トマはフランスのヒッチコックと呼ばれたサスペ ンスの名手です。トマはサスペンスに加えてコメディの要素も作劇に加えたので、 フランスの通俗劇ブールヴァール劇の大物とも呼ばれました。 NLTではトマ作品を数多く上演してきましたが、今年喜劇路線40周年を迎え、そ の中でも賀原夏子いわく「筆の冴えが素晴らしく、ぐっと見事で、最後のドンデン 返しに読んでいて思わず快哉を叫んだ」という「殺人同盟」を再演いたします。 「喜劇的殺人」というウソの限界に挑むこの作品は、役者たちの持つ存在感が勝負 の決め手となるNLTの限界に挑む作品でもあります。 交換殺人がモチーフですが、ブールヴァール劇の笑いの特徴、キプロコ(とりちが え)をふんだんに織り交ぜ、3幕29場をスピーディな転換と、テンポの良い演出で 明るく馬鹿馬鹿しいコメディに仕上げます。 7月16日〜23日 俳優座劇場 ●『金魚鉢の中の少女』 (俳優座) 作/モーリス・パニッチ 訳・演出/田中壮太郎 出演/青山眉子、河内浩、清水直子、 松島正芳、小飯塚貴世江 カナダの海辺の田舎町。 かつては下宿を営んでいた家に住むもうすぐ11歳になるませた少女アイリス。 彼女にはひとつ何とかしなければならないことがあった。母シルビアが父オーエン を見限り、家を出ると決意をしたのだ。 そんな事態を抱えたある日、アイリスの可愛がっていた金魚のアマールが死んでしまう。 翌朝、アイリスは浜辺からずぶ濡れの男を連れて帰ってくる。 ローレンスという名前以外素性のはっきりしない男に、大人たちは勝手な推測をめ ぐらしていくが、アイリスは確信を持っていた。彼は金魚のアマールの生まれ変わり で、家族を救うために戻ってきてくれたのだ!と。 ローレンスの存在は唯一の下宿人ローズも巻き込んで、事態をさらに揺るがしてゆく。 世界を小さな身体に背負い込んだ少女が、その少女時代の終わりを知るまでの数日。 子どもの視線から大人の矛盾に満ちた世界を鋭く、時にユーモラスに切り取ったモー リス・パニッチの傑作戯曲、日本初演。 7月20日〜29日 俳優座劇場
◎ 八 月
●『『月光の夏』 (東 演) 作/毛利 恒之 演出/鈴木 完一郎 出演/小高三良 小高三良 南保大樹 山田珠真子 矢野泰子 岸並万里子 安田扶二子 古田美奈子 江上梨乃 ピアノ 根岸弥生(13日) 仲道祐子(14日、15日) 以上のメンバーで4名を1グループとし、各地で上演しています。 佐賀県鳥栖市 − 。 戦後45年のこの年、鳥栖小学校の古いグランドピアノが 廃棄されようとしていた。 かつて教師をしていた吉岡公子は、そのピアノに忘れられない思い出を秘めていた 。 そしてピアノを平和の願いの証として保存して欲しいという思いから、全校集会で 生徒達にその思い出を語る・・・。 太平洋戦争末期の昭和20年初夏、音楽学校出身の特攻隊員二人が学校に駆けつけ、 今生の別れにベートーヴェンのピアノ・ソナタ「月光」を弾き、沖縄の空に出撃していった・・・。 8月13日〜 15日 北沢タウンホール ●『海に生きる』 (海流座) 作/米倉テルミ 演出/米倉斉加年 出演/米倉斉加年 助川汎 山梨光圀 上野日呂登 溝口貴子 津田美保 ある浦(港)では漁は許されていなかった。生活の糧は交易のわずかの仕事で得ていた。 しかし徳川幕府の鎖国政策のため生活の方途を断たれてしまう。 浦人たちは漁のできる浜を求め、命を賭して奉行所へ請願をした。奉行は請願の六人を死罪とした。 だが浜に大岩を六人で動かせた分だけ浜として許可するとした。 六人は不可能と思われた大岩を死力で十町も動かした。 実はこの浦の若者が年老いた六人に代わってこの大岩を動かしたのであった。 そして請願した六人に代わって処刑された。若者たちは年老いた者の生きる知恵を後世に残したのである。 けなげに生き続ける人々の姿をそこにみるのである。 8月5日〜 7日 紀伊國屋サザンシアター ●『闇に咲く花』 (こまつ座) 作/井上ひさし 演出/栗山民也 出演/辻萬長 石母田史朗 浅野雅博 石田圭祐 小林隆 増子倭文江 山本道子 藤本喜久子 神田の愛敬稲荷神社に、終戦から二回目の夏が来た。 空襲で焼け落ちて神楽堂と渡り廊下の半分だけが焼け残った、神社とは名ばかりの廃屋に、 神主の牛木公麿は、近所の錦華荘アパートに住む五人の戦争未亡人の協力を得てお面工場を経営している。 出征した一人息子は戦争から戻らぬままとなってしまったが、未亡人達との奇妙な共同体は、工場の上がりと 社の備品を「闇」に流して、どうにかその日その日を生き延びてきた。 ところがある日、この敬愛稲荷神社に、戦死したはずの一人息子健太郎が思いもかけない帰還をはたした。 マニラ沖で輸送船が被弾、太平洋に投げ出されアメリカの潜水艦に拾われた健太郎は、ショックで記憶を失っ たまま捕虜収容所で三年間を暮らした。 そして突然記憶を取り戻したのだった。 神田商業野球部で快速投手として鳴らした健太郎は、すぐ金星スターズの入団テストを受け、合格。これで また好きな野球が出来る。公麿も未亡人たちも、健太郎の再出発に心躍らせる。 しかし、その幸せも束の間、健太郎の身には黒い不吉な影が忍び寄っていた。 GHQ(連合国総司令部)法務局主任雇い人・諏訪三郎。グアム島で島民を相手に行ったピッチング練習中に、 あやまって島民の額にボールが当ってしまった。 これをGHQは「虐待」と見なし、健太郎を「C級戦犯容疑」で連行しようとする。・・・・。 健太郎は、ショックで再び記憶障害に陥る。学生時代からキャッチャ−としてバッテリーを組み、今は精神科医 である無二の親友の稲垣は、健太郎の記憶を何んとか呼び覚まそうと奮闘する。 しかし記憶が回復することは、C級戦犯として連行されていくことを意味している。健太郎の身の上を巡って対 立する公麿と稲垣。はたして失われた記憶は甦るのか・・・ 戦後の混乱を必死に生き抜こうとする庶民の悲喜劇を、軽やかなタッチと全編に流れる美しいギターの旋律にの せてお届けします。 8月15日〜31日 紀伊國屋サザンシアター
◎ 九 月 ●『東京原子核クラブ』(俳優座劇場プロデュース) 作/マキノノゾミ 演出/宮田慶子 出演/田中壮太郎 西山水木 二瓶鮫一 外山誠二 壇臣幸 小飯塚貴世江 若杉宏二 渡辺聡 1997年、東京国際フォーラムの柿落としして上演された「東京原子核クラブ」 好評を博し同年の読売文学賞も受賞しています。 この名作をマキノ作品の魅力を知り尽くしている宮田慶子の新演出で2006年に上 演し、高い評価を得ました。 個性溢れる俳優陣を迎え、青春を謳歌する若者の姿と戦争に突き進んだ国の歪みを炙 り出す話題作の再演!昔から男と女は狐と狸の化かし合いと申します。 8月30日〜9月7日 俳優座劇場 ●『花山信吉工務店』 (イッツフォーリーズ) 作・演出/大谷美智浩 作曲・編曲/吉田さとる 出演/井上一馬 勝部祐子 大塚庸介 他 真っ正直に、懸命に生きてさえいれば幸せになれると信じている職人気質の兄と、 苦しい工務店経営に直面して現実を見据えざるを得ない妹。 この「母が違う」故の微妙な兄妹関係と、その二人を取り巻く「どこか懐かしい」 登場人物たち。 9月24日〜28日 紀伊國屋サザンシアター ●『三越歌舞伎 じいさんばあさん』 (三越劇場) 作・演出/宇野信夫 長唄『手習子』『俄獅子』 出演/中村橋之助 片岡孝太郎 他 9月1日〜19日 三越劇場
◎ 十 月 ●『ターミナル・ケア(仮題)』 (俳優座) 作/坂手洋二 演出/栗山民也 出演/未定 坂手洋二書き下ろし作品が初めて劇団俳優座の舞台になります。 ターミナル・ケアとは、「終末(期)医療」をさす医学用語で、末期がんなど、 いかなる治療をしても助かる見込みのない患者に対する看護のことです。 「終末医療」を受けることになった、ある夫婦とその家族、看護の中心となる女医、 彼女とともに働くチーム、がん診断初期から積極的治療として「緩和ケア」を受ける 少年、延命治療拒否を意思表示する患者の姿など、病院や在宅治療の場で人生の終末 を意識しながら、本人と周囲の人たちがどのように生きるか、どのようにお互いに向 き合うかを描く問題作です。 10月3日〜12日 紀伊國屋ホール ●『てけれっつのぱ(仮題)』 (文化座) 作/蜂谷涼 脚色/堤春恵 演出/西川信廣 出演/佐々木愛 有賀ひろみ 阿部敦子 他 明治15年頃の小樽。開拓によって切り開かれ、良港にも恵まれ日の出の勢いで商港と しての位置を固めつつあった。この町で三人の女が小さな商店を営んでいる。 夫を彰義隊の戦いで亡くし家を支えるために芸者になり、その後、薩摩出身の顕官に落 籍かれ妾として生きてきたあや乃(年増)。あや乃の身の回りの世話をしていたおセキ(婆)。 そしてあや乃を落籍いた官憲・別所の本妻、佳代(中年増)。 東京から流れてきてこの三人が一緒に生活している。 小樽と東京を舞台に、武家から変転しながらも肩を寄せ合い生きる三人と、それを取り 巻く庶民との人間模様を「三婆」を彷彿させるような娯楽的要素を盛り込みながら描いてゆく。 10月16日〜26日 俳優座劇場 ●『海鳴り』 (民 藝) 作/藤沢周平 脚色/吉永仁郎 演出/高橋清祐 出演/日色ともゑ 塩屋洋子 梅野泰靖 西川明 藤沢周平の長編小説「海鳴り」は連作ものを除いて唯一、町人世界を描いた珠玉作です。 下積みから身をおこし問屋商売に励んできた小野屋新兵衛。 心身に老いの兆しを感じ、妻子との間には隙間風が吹いています。 生きがいだった仕事への虚しささえ感じはじめている初老の男が、ふとしたことから同業 者の女房おこうと知り合います。運命は奇妙にも、ふたりを危険な激流へと押し流していきます。 10月9日〜20日 紀伊國屋サザンシアター
◎ 十 一 月 ●『アウトロー・WE 姜東句集「身世打鈴」より』 (京楽座) 原作/姜 東 脚色/杉浦久幸 演出/西川信廣 出演/中西和久 森山潤久 椎原克知 松田光輝 渋沢やこ 海浩気 小河原真稲 長戸綾子 他 俳句は五・七・五に込められる人間ドラマの結実であると考えます。 その魅力は300万人といわれる俳句人口が物語っています。 今回この俳句の中で出会ったドラマを中西和久がプロデュースします。 京楽座が得意とする音楽の生演奏とのコラボレートもこの作品の随所に活かされ、クォリ ティの高い作品をめざします。 11月12日〜16日 紀伊國屋サザンシアター ●『春立ちぬ(仮題)』 (俳優座) 作/ふたくちつよし 演出/亀井光子 出演/中村たつ 村上博 井上薫 ある地方都市から車で15分ほどの所にある松浦家。ある日次女・彩香にいじめられたと 同級生が親と共にやってくる。彩香はいじめていないと反発するものの両親は平謝り。 長男・敏樹は彩香と共に親の卑屈な態度を責めるが、長女・小枝子は寡黙だった。 そんないつもとは違う小枝子を大叔母のシゲ子は訝る。だが、シゲ子にも人に言えない秘 密があった。 翌日、いつも朝早い小枝子が起きてこない。部屋を確認すると、蛻のからで、しかも 敏樹の大学の受験料が消えていた……。 小枝子の行動をきっかけに、松浦家の人々の心の中に生じた綻びが、やがて新たな風景を 呼び起こし、昨日までとは違う明日が見えてくる 11月20日〜30日 俳優座劇場 ●『太鼓たたいて笛ふいて』 (こまつ座) 作/井上ひさし 演出/栗山民也 出演/大竹しのぶ 木場勝己 梅沢昌代 山崎一 阿南健治 神野三鈴 朴勝哲(ピアノ) 林芙美子の半生を描く、こまつ座ならではの音楽評伝劇。2002年に初演し数々の演劇賞に輝いた傑作。 04年の再演から数えて4年ぶりの、堂々の三演目です。 昭和10年、すでに「放浪記」で大ベストセラー作家となった芙美子が、従軍記をものにした戦中から、 一転、戦後には民主文学の担い手となる……、その激動の時代とそこに生きた一人の女流作家の精神史が、 楽しい舞台の中から、重く、鋭く、そして静かに浮かびあがってくる、昭和史の物語でもあります。 11月 紀伊國屋サザンシアター
◎ 十 二 月 ●『海 霧』 (民 藝) 作/原田康子 脚色/小池倫代 演出/丹野郁弓 出演/樫山文枝 伊藤孝雄 他 かつて映画化されブームを巻き起こしたベストセラー小説「挽歌」。 いらい北海道を舞台とした小説やエッセイを発表しつづけている原田康子さん。なかでも「海霧」は 自身の一族をモデルに書きあげたライフワークともいえる長編大河小説の舞台化。 明治の初め、新天地への夢を求めて「蝦夷」と呼ばれた北海道へと渡った男たち。北海の深い霧の中 で凛々しくかれらを支えつづけた、これは女三代の物語です。 12月6日〜20日 三越劇場 ●『空ソラの定義』 (俳優座劇場プロデュース) 作/青木豪 演出/黒岩亮 出演/中嶋しゅう 松永玲子 名取幸政 浅野雅博 杉山文雄 津田真澄 塩屋洋子 平凡な日常の陰に潜む微妙な人間関係を、リアルな会話で描く青木豪。俳優座劇場は7年越しの ラブコールが実り、青年座、気鋭の演出家黒岩亮とのフレッシュなコンビで新作書き下ろしを上演。 12月11日〜21日 俳優座劇場 ●『クリスマス・キャロル』 (昴) 原作/チャールズ・ディケンズ 脚色・演出/菊池准 出演/金子由之 牛山茂 金房求 望木祐子 佐藤しのぶ 他 1991年に劇団昴で初演されて以来、3年ごとに主役スクルージや演出を変えて、その時々の「いま」の 私たちの社会を作品に映しながら上演を続けてきた。「キャロル」の中にある、家族愛、隣人愛はもとより、 心の暗闇をも舞台に照射させることにより、作品の中に人としての生きる本質を描いています。 あうるすぽっと
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