東京労演
   2009年 下半期 作品紹介
7月 8月 9月 10月 11月 12月
 
    ◎  七   月
 
●『春、忍び難きを』
    (俳優座)

  作/齋藤憐 演出/雁坂彰
  出演/川口敦子 美苗 井上薫
     森尾舞 小笠原良知 河原崎次郎
     加藤佳男 森一 他

   この作品は作者・斉藤憐自らの終戦後朝鮮から引き揚げてきた少年時代の体験を
  モチーフに、終戦から1年にわたる松本近郊の地主の家族を通して、この60年間に
  日本と日本人が置き去りにしてきたもの、無視してきたものは何かを問いかけ「今、
  何を語るべきか」という想いが込められた作品です。
  特に自給率40%を割った食糧問題や、農業問題、家族の関係が作者の厳しい眼を通
  して描かれています。
  作者が丁寧に取材した松本近郊の家族の風景が丹念に描かれる中、様々な思惑を持って
  登場する人物たちの行動が時にはユーモラスに、時にはショッキングに表現されて俳優
  座演技陣のアンサンブルの良さが、佐藤信の演出によって見事に結実しているといえます。
  尚、この脚本は紀伊國屋演劇賞・鶴屋南北賞を受賞しています。


                      7月3日〜5日 俳優座劇場


●『こんにちは、おばあちゃん』  (文化座)
 作/フランク・モハー 訳/吉原豊司   演出/黒岩亮
 出演/佐々木愛 中村公平 青山真利子

   カナダの都市カルガリー。元数学教授のフィップス夫人が邸に一人暮らしている。
  70才を迎え誇り高く生きる夫人だが、既に老いの影が忍び寄っていた。
  ある日、夫人はティムという青年に邸の庭で出会う。彼は最近リストラにあって失業中。
  デパートの苦情係として働く妻のジネットと近くのアパートに住んでいる。
  深い不安を抱え思い出の世界に生きるフィップス夫人。ティムそんな夫人を放っておけず
  面倒をみているうちに、それは自身の生きがいともなっていた。
  そんな時ジネットに念願の天職とそれにともなう転居の話が持ち上がる。
  そうなると二人は夫人と離れて暮らすことになるのだが……。
  人は何によって生きるのか? 人と人との絆は厳しい現実を乗り越えることができるのか?
    孤独な老夫人と生きる価値を探す若者の間にたゆたう、奇跡のような時間。
  いや失業といった今日的な状況に生きる人たちを優しい眼差しで包み込む、珠玉のカナダ
  戯曲を上演します。

                     7月16日〜26日 俳優座劇場

●『宙をつかむ』 海軍じいさんとロケット戦闘機
                        (演劇集団円)
 作・出演/宗英徳   
  出演/橋爪功 野村昇史 岡本瑞恵 
     加藤美津子 竹本純平 山崎健二
     伊藤昌一 山口真司 他

   太平洋戦争の時代。昭和19年。サイパン、テニアン島が陥落。
  米軍機による日本本土攻撃が容易になった。
  なかでも新型爆撃機B29の爆撃が激化。迎え撃つ日本戦闘機は上昇速度が遅く、高高度を飛ぶ
  B29に簡単に撃ち落とされてしまう。
  海軍と陸軍は協力する。たった3分で1万メートルまで上昇しB29を撃ち落とすロケット
  戦闘機を大急ぎで作るのだ。
  手さぐりのなか開発はスタートする。研究者、技術者の努力で夜を昼に変えての研究開発が続けられ、
  僅か1年で試作機「秋水」の完成にこぎつける。果たして「秋水」は見事大空に舞いあがることができるのだろうか……。
  橋爪功を中心に集団のヴェテランから若手までが一丸となり取り組む期待作!


                7月17〜26日 紀伊國屋ホール

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    ◎  八   月
 

●『兄おとうと』 (こまつ座)
 作/井上 ひさし 演出/鵜山 仁
 出演/辻 萬長 剣 幸  宮本 裕子 高橋 礼恵
     大鷹 明良 小嶋 尚樹 朴 勝哲(ピアノ演奏)
     
   兄弟はそろって大天才。兄は大正デモクラシーの旗手、吉野作造。弟は岸信介や木戸幸一を
  部下に持つ高級官僚、吉野信次。
   国家とは国民あってのものだと唱える兄、国家あっての国民だと信じる弟、まるであべこべだ。
  兄と弟は、弟がいとおしい、兄がなつかしいと機会を見つけて合いはするが、いとしいなつかしいは
  最初の数分、たちまち議論になり、議論の果ては決まったように喧嘩別れになる。
  ところでーーこの二人の兄弟を愛してしまったのが、二人の仲良し姉妹だった。
  どんなことが降りかかってこようと決してあわてない姉は、夫の作造をがっしりと支え、いかなるときも
  持ち前の機智と才覚で切り抜ける妹は、夫の信次をしっかりと励ます。
  この四人の兄弟姉妹に襲いかかる災難は、右翼の襲撃から説教強盗まで限りがなく、そのたびにドラマは大きく揺れ動く。

        7月31日〜8月16日             紀伊國屋サザンシアター


●『花の元禄後始末』 (NLТ)
  作・演出/池田 政之
   出演/淡島 千景 林 与一 遠野 凪子 川端 槇二
    平松 慎吾 木村 有里 他
    
   享保3年(1718年)紀伊國屋文左衛門は商売を引退し悠々自適に暮らしていた。
  しかし慎ましく暮らす事は出来ず、十分にあった隠居のための資金も底をつき始めた。
  そこで一計を案じ自分は死んだことにして葬式を行い、香典を集めてそれを資金に事業を再開しようと目論む。
  しかし大岡忠相の介入により本人は上方に逃亡する事になってしまう。
  その窮地を助けるのは妻の几帳。彼女は文左衛門譲りの商才を見せ、材木屋の無店舗営業という新商売を始めて
  大当たり、財産を築きあげる。
  文左衛門の弟夫婦に使用人、文左衛門の妾やその子供も現れ、それに加えて文左衛門の葬儀を疑う同心たちも入り乱れての物語。
  バブルを元禄時代に例え享保の改革を受ける庶民のしたたかさがドタバタコメディと同時に現代に通じる世相を連想させ、
  日本人の持つアイデンティティが見事に浮き上がってきます。

  
             8月14日〜30日       三越劇場


●『怪談 牡丹燈籠』 (人形劇団プーク)
  作/三遊亭 円朝  脚色/川尻 泰司  潤色・演出/井上 幸子
  人形美術/若林 由美子  装置/朝倉 摂  音楽/マリオネット
  照明/山内 晴夫  音響効果/吉川 安史志
    
  1967年の初演以来、演出の川尻泰司のもと、林家正蔵(彦六)とともに、4度この作品に取り組み
 80年には芸術祭大賞を受賞。
  今回はお露、お米のほか、お国、おもねという4人のそれぞれの女性の生き方を特徴的に描くとともに、
 金を得ることによって変わっていく男・伴蔵の人間としての弱さ、滑稽さも人形劇ならではの表現を、
 井上幸子の演出をはじめ、朝倉摂、マリオネット、若林由美子などの新しいスタッフで、劇団創立80周年に
 ふさわしい牡丹燈籠を創る。

           8月20日〜23日      紀伊國屋ホール

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       ◎  九    月


●ミュージカル『 月のしずく』  (イッツフォーリーズ)
  作/浅田 次郎  脚本・作詞/佐藤 万里
  演出/菊 池准
  出演/井上 一馬  茂木 沙月  安藤 聖  大塚 庸介
     勝部 祐子  他

   浅田次郎原作・珠玉の短編をミュージカル化。
  原作者は、同じ時期に著作した「鉄道員」が太陽ならば、「月のしずく」はタイトル通り月のような作品と表現。
  少し欠けてしまってもそれでも優しく静かに照らし続ける月のように、人もそれぞれ欠けた何かを持ちながら自分の道を歩んでいく。
  人の奥深い心の切なさと優しさ、そして欠けた月と見えない海が包み込む美しい音楽とドラマを大切にしたミュージカルです。
  三十年近くコンビナートの荷役をし、酒を飲むだけが楽しみ。
  そんな男のもとに偶然転がり込んだ美しい女|出会うはずのない二人が出会ったとき、今にも壊れそうに軋みながらも癒しのドラマが始まる。

           9月16日〜20日      あうるすぽっと


●『結の風 らぷそでぃ』 (青年劇場)
 作/高橋 正圀  演出/松波喬介
    出演/未定

   近年、これほど農業に関心を持たれたことがあっただろうか? 
  昨年は中国毒餃子事件に始まって、幾多の偽装が発覚し、消費者は否応なく色の安全を意識させられることになった。
  そこへもってきて百年に一度の不況である。猫の目政府はリストラされた人員を農業と介護で雇用創出を図るつもりらしいいが、またかという感じだ。
  農業はいつも経済の調整弁に使われてきた。
  しかし、低所得(時給がなんと179円!)と安価な輸入物との競争で疲弊しきった農村にそんな体力があるんだろうか?
  ただ、農村には「結」の心(連帯や助け合い)が残っている。それが新たな希望につながることは、日比谷公園の派遣村に象徴されていると思う。
  人間、金だけじゃない。今回は農村を舞台に、人と自然、人と人との絆を、ユーモアを込めて綴ってみようと思っています。(高橋正圀)

            9月18日〜27日      紀伊国屋サザンシアター


●ミュージカル 『ジェーン・エア』   (松竹)
    原作/シャーロット・ブロンテ  脚本・作詞・演出/ジョン・ケアード 
   作曲・作詞/ポール・ゴードン
    出演/松 たか子  橋本 さとし  幸田 浩子
    寿 ひずる  旺 なつき 他

   両親を突然病気で亡くしたジェーン・エアは寄宿学校に預けられる。
  劣悪な環境の学校で教師の虐待や親友の死に耐えて成長し、やがて自立の志を持った彼女は教師の資格を得て、
  地方の富豪の邸に家庭教師として赴任する。主人ロチェスターの謎めいた挙動に不審を感じながらも少しずつ彼に魅かれていくジェーン……。

         9月2日〜29日      日生劇場

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       ◎   十    月 

 

●『らくだ』 (民藝)
  作/別役 実 演出/山下 悟
  出演/大滝 秀治 他
       
   大滝秀治主演、別役実の民藝書き下ろし。期待の新作は、何と古典落語の名作「らくだ」をヒントに構想中です。
  真打の大ネタとして知られる「らくだ」は主人公のあだ名で、登場したときはすでに死人という落語の演題では珍しい設定。
  大家と店子、裏長屋の庶民生活を背景に、主人公の関係性が次第に逆転していくという面白い噺です。五代目古今亭志ん生、
  上方では六代目笑福亭松鶴が得意とし、門下の笑福亭鶴瓶も2007年に口演し話題となっています。
  ほかに歌舞伎でも上演され、松竹新喜劇やエノケン映画『らくだの馬さん』でも有名です。
  このたびドラマの設定として、大滝秀治への書き下ろしにぴったり。演出は『山猫理髪店』をはじめ別役戯曲の多くを手がける山下悟。
  新たな別役ワールドをお楽しみに。

              10月7日〜19日      紀伊国屋サザンシアター


●『渇いた人々は、皆とりあえず死を叫び』 (俳優座)
  作/青木 豪  演出/高岸 未朝
  出演/岩崎 加根子  中村 たつ  小笠原 良知
     河原崎 次郎  中吉 卓郎  瑞木 和加子      小飯塚 貴世江 志村 史人 他
   北関東のとある山村に大雨が降った。床上浸水に遭った人々は、いつ止むとも知れぬ雨から逃れて、高台の小学校へと避難して来ていた。
  小学校のとある教室に避難してきた3つの家族のうちの花田家と門倉家は犬猿の仲。
  かつて村長選挙があった折、門倉は花田に敗れたのだった。残るひと家族は、その事情をよく知っている。
  犬猿の仲といっても、そこは大人たちの事情だった。花田家の長男と、門倉家の長女が(どちらも一人っ子)恋仲なのが次第に顕かになり、
  避難所はやがて、両家の親睦会へと変わっていく。
  洪水の避難所である小学校を舞台に描かれる平成北関東版ロミオとジュリエット。
  ひとそれぞれの個人的な大事件を、優しい目で、しかしある意味でシビアに見つめる青木豪の作風に観客ひとりひとりがそれぞれの立場で共感できる作品だ。

    10月7日〜18日        あうるすぽっと


●『千里眼の女』   (青年座)
  作/齋藤 雅文  演出/宮田 慶子
  出演/未定

   劇団新派の斎藤雅文氏、青年座初登場!千里眼の女を巡り、明治の科学者とジャーナリストが交錯する。
  明治末期、有明海に臨む小さな町の医家に生まれた御船千鶴子は、幼い頃より不思議な透視能力があり「千里眼」と言われていた。
  実際、石炭鉱脈を発見するに及び彼女の噂は広まり、東京帝国大学で心理学を研究していた福来友吉にもこの話がもたらされた。
  福来は研究仲間である今村新吉を伴い、熊本に向かう。
  彼女の自宅における透視実験は、二人を驚嘆させるのに十分な結果だった。
  福来と今村は彼女の特殊な能力を解明し、その成果を世界へ発表するのが科学者としての使命と確信。
  気難しく人見知りの千鶴子も、福来の誠実な情熱に心を動かされ、東京での実験に同意した。
  鉛の管に封印した文字を透視するという実験は大成功。しかし、事態は意外な展開を見せ始めた。

        10月9日〜18日     紀伊国屋ホール

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       ◎   十 一    月       



●『どん底』 (東演)
 作/M・ゴーリキー 訳/佐藤史郎 演出/V・ベリャコヴィッチ
  出演/笹山栄一 山中康司 能登剛 腰越夏水 武正忠明(俳優座)
       津田真澄(青年座)他

  吹き溜まりのような地下の安宿。そこには行き場にない人間たちがうごめいている。
 そんなところへ新入りの巡礼ルカをワシリーサの妹ナターシャが案内してくる……。
 東演は1966年の『どん底』初演以来、劇団創造の柱として上演を続けてきました。
 04年3月、この『どん底』をモスクワ、サンクトペテルブルグ、ニジニノブゴルド(旧ゴーリキー市)の三都市で上演
 特にゴーリキー生誕の地では新たな発見があり、これからの上演に大きな励みを手にすることができました。
 そして2009年は劇団創立50周年。東演が積み上げてきた新劇の魂を今こそ…!
 重労働と寒さ、希望のない生活と人間としての誇り、そこから這い上がろうとする人々の未来……。
 決して暗くはないベリャコーヴィッチの演出だからこそ、今の芝居だ!と確信しました。

            11月9日〜15日 本多劇場


●『逝った男の残したものは』  (トム・プロジェクト)
 作・演出/水谷龍二 演出/亀井光子
    出演/竹下景子 綿貫勝彦 ベンガル 山西惇

  一人の未亡人と亡き夫を知る三人の男のお話。
 夫が謎の死を遂げて半年が経とうとしていた。
 未亡人はその真相を知りたくて、昔の仕事仲間、親友、そして死ぬ直前まで一緒だった男を自宅に呼ぶ。
 まったく初対面の三人が語る夫の人物像はところどころ食い違い、未亡人の知らないことが次々と明かされていく。
 次第に浮かび上がる夫の真実。が謎は深まるばかり……。
 とミステリー風だが、この芝居は正真正銘の喜劇である。
           10月31日〜11月8日    紀伊国屋ホール

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       ◎   十 二    月      

 

●『神戸北ホテル』 (民 藝)
 作/小幡欣治 演出/丹野郁弓
  出演/奈良岡朋子 他

  小幡欣治の民藝書き下ろし第8作。  昨年は長年の劇作活動に対して、氏に舞台芸術賞特別賞と読売演劇大賞芸術栄誉賞が授賞されました。  期待の新作は、戦時中の神戸を舞台に時代の激流のなかでたくましく生きる庶民の姿を、独特のユーモアと哀歓で描きます。  ときは戦時中の昭和十八年から始まり、舞台は東京から神戸へ。  外国人もたむろするおんぼろホテルを中心に、そこを訪ねる様々な人びとが登場します。  やがて戦局は悪化の一途をたどり、時代のうねりはいやおうなく人びとを飲み込んでいくのでした……。

               12月6日〜20日 三越劇場


●『グレイクリスマス』  (グレイクリスマスの会)
 作/齋藤憐
  演出/高瀬久男
    出演/三田和代 小笠原良知 児玉泰次 石田圭祐 森一
     清水明彦 米倉紀之子 若井なおみ 他

  敗戦の冬、伯爵・五條邸はGHQに接収されることになった。
 アメリカ軍のサロンとなった五條邸。敗戦国日本を理想国と夢みた日系アメリカ人ジョージ・イトウとその理想に深く影響を受けることになる五條華子。
 二人の心情を軸に五條家の人々の生き方を通して、日本の原点を鋭く問い直す。
 ジョージは華子に語る。差別されてきた日系人の思いをこめて。
 「雪は、ゴミ溜めも焼け跡も、汚いものをみんな隠してくれます。
 雪の降らないクリスマスを、アメリカではグレイクリスマスと言います。」  そのジョージ・イトウは朝鮮戦争にやがて向かうことになった。。

           12月10日〜20日 俳優座劇場


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