|
言葉って難しい
エマルジョンを作る過程が乳化、エマルジョンって乳化した状態のこと はーい。禅問答みたいでちんぷんかんぷんですねぇ。エマルジョンのことを乳化と言ってる例もあります。ますますこんがらがっちゃう。エマルジョンの語源ってミルクからきているので乳化ってしたのかな。化が付くと名詞というより動詞的な感じがするので、赤で書いた意味が一番すんなりしてる感じがするな。エマルジョンって水と油のように本来は混ざり合わない2つの液体が均一に混ざった状態のことをいうんです。身近によく見るのは、牛乳(水の中に油のつぶつぶが浮いてる)、バター(油の中に水のつぶつぶが浮いている)とかですね。この小さなつぶつぶが浮いているというのがポイントです。つぶつぶが浮いている状態をコロイドというんですけど、コロイドの場合意味が広くなって、水と油だけじゃなくて空気と水(泡立てたクリーム)とか細かい色素のつぶと水(インク)とか煤と空気(煙)とか、気体と液体や固体と液体、固体と気体が混じり合った状態もあるんです。エマルジョンはコロイドの一種。簡単のために、ここではパスタに関係のあることに絞って、水と油がよく混ざった状態を「エマルジョン」または「乳化した状態」、水と油をうまく混ぜることを「乳化する」っていいますね。
 2つのエマルジョン 水に浮かんだ油のつぶつぶと油に浮かんだ水のつぶつぶ
仲良しどおしは仲良くしたい
水と油が混ざらないわけ 誰だって仲良しどおし仲良く手を繋いで、嫌な人とは手を繋ぎたくないもの。それは小さな分子でも同じ。水は水と仲良し。油は油と仲良し。これを決めてるのが極性という分子の電気的な性質なんだけど、同じ極性を持つものどおしは仲良くて違うと仲が悪いと思って。水どおし油どおしはもちろん同じ極性どおしなので仲良し。ところが、水は極性が大きくて、油は極性が小さい。というわけで水と油は仲が悪いの。水と仲良しな性質を親水性といって水と嫌い合う性質を疎水性というのね。そう、油は疎水性なんです。
ドレッシング よく振ると混ざるじゃない 水と油(レシピではお酢と油だけど)で作るドレッシングは、普段は水と油が分離してるけど(ほら、しょうゆ味の和風ドレッシングは、茶色っぽいおしょうゆの層(水)の上に透明な油の層がきっちり線を引いてのっかってるじゃない)、サラダにかける前によく振ると全体が混じり合ってどろっとするよね。混じり合うのは、溶けているんじゃなくて、油が小さなつぶつぶになって水の中に浮いてるの。小さなつぶつぶは光を乱反射してしまうので濁って見えるのね。これは、パスタを作るときフライパンを振っておソースを作る原理と同じ。フライパンを振るのは、オリーブオイルを小さなつぶつぶにしてパスタをゆでた塩水の中に浮かせて、ドレッシングみたいにすることなのね。ドレッシングはしっかり混ぜて使った方がおいしいようにパスタのおソースも水と油が混ざってとろりとした方がおいしいんです。だって、混じってなければ妙に水っぽかったり油っぽかったりするんですもの。ドレッシングは放っておくとまた水と油が分離してくるよね。パスタのおソースもだいたい同じ。ペペロンチーノのようにおソースの成分がほとんどオリーブオイルと塩水だけって場合はしばらくするとまた分離してきます。だからパスタと和える直前にフライパンを振るんです。
 水と油はよく振ることによって、油の小さなつぶつぶが 水に浮かんだ不安定なエマルジョンになります
♪手を繋ごうっ♪み〜んなで手をつ〜なご〜♪
マヨネーズ作ったことある? マヨネーズってお酢(水)と油を混ぜて作るの。でも放っておいても分離しないよね。どうして?ドレッシングは分離するのに。その秘密をマヨネーズを作って探ってみましょう。マヨネーズってこうやって作ります。ボウルに卵黄と調味料(塩、砂糖、胡椒、マスタードなどお好みで)、お酢またはレモン汁を入れて、泡立て器でうんとよく混ぜます。そこによく混ぜながらサラダ油かオリーブオイルまたはお好みのオイルを1滴2滴たらしては混ぜたらしては混ぜ、根気よくとにかく少しずつ(重要)油を練り混ぜていきます。お終いの方はもうちょっとたくさん油を入れて混ぜてもいいんですけど、肉体労働ですね。こうやって水(この場合はお酢)と油を混ぜて分離しなくする(化学の言葉では安定なエマルジョンを作る)んですけど、この安定なエマルジョンを作るのに役立ってるのが、ドレッシングには入ってない卵なんです。卵には乳化状態を安定化させる作用(そのような性質のあるものを乳化安定剤といいます)があるんです。それは卵の中に入ってるレシチン(リン脂質)です。レシチンみたいな乳化安定剤には共通の性質があります。それは、ひとつの分子に、水と仲良しな(極性の大きな)親水性の部分と水と仲の悪い(極性の小さい)疎水性の部分があるということなんです(このことを両親媒性といいます)。そんなひとつの分子に2つの性質のため、水とも油とも仲良しになれるの。八方美人なの。そして、水と油の中に入ってふたりを結びつけるの。
 乳化安定剤の構造 ひとつの分子に水と仲良しの部分と油と仲良しの部分があります
マヨネーズってどうして分離しないの? 乳化安定剤があるとどうしてマヨネーズのように分離しづらい安定なエマルジョンを作るんでしょう?それは、乳化安定剤の分子の構造にあります。乳化安定剤の水と仲良しな部分は、もちろん水と仲良くします。ところが、水と仲の良くない部分は、水をさけようとします。そうするといくつかの乳化安定剤の分子が集まって水と仲の良くない部分を内側にして袋を作ります。ほら、こうすると水と接してるのは、水と仲良しの部分だけ。袋の内側は水と仲の良くない部分が仲良く寄り添って閉じこもっています。この袋をミセルと呼ぶんですが、とっても小さくて水の中に浮いています。これに油を入れると、油は水と仲の悪い仲間である乳化安定剤の袋の内側に入って居心地良く引きこもります。そうすると、袋の外側は水と仲良くしてるし、内側は油と仲良くしてるので、すべてが丸く収まって、安定な構造を作ります。これがマヨネーズです。
 乳化安定剤が水と仲良しな泡に油を包んで 浮かんでいるから安定なエマルジョンになるの
洗剤マジック 乳化するのを促進したり、安定化させる一番有名な例は洗剤です。化学の言葉では界面活性剤。界面活性剤ももちろん、ひとつの分子に親水性の部分と疎水性の部分を持つ両親媒性分子。ちょっと横道にそれますが、洗剤が油汚れを落とす仕組みを見てみましょう。これも乳化の一種です。洗剤はさっきも出てきたように、水と仲良しの部分を表にした袋のような状態(ミセル)で水に溶けています。それが油汚れと出くわすと、油と仲良しな部分が、やったぁ友達だぁ、って油と手を繋ぐんです。そして、油汚れを包み込んだ袋として水に浮かんで油汚れを落とすんです。油汚れを乳化するの。TVのコマーシャルか何かでも見たことのある絵ですね。  洗剤は油汚れを包み込んで落とします これも乳化の一種ですね
他にも乳化を安定させるもの 乳化した状態を安定化させるのってそれだけではありません。ドレッシングのような不安定なエマルジョンでは、よく振ることによってお水の中に小さな油のつぶつぶを作って浮かべますが、乳化安定剤がないので、小さな油のつぶつぶはふらふら浮かんでるうちに近くの油のつぶとぶつかってくっついて粒が少しずつ大きくなって、お終いにはつぶつぶがみんなくっついて元通り水と分離してしまいます(2番目の図)。だからつぶつぶをあまり動かなくして、つぶつぶどおしがくっつく頻度を下げれば少し安定なエマルジョンにできるんです。そう、溶液をとろっとさせてつぶを動きづらくすればいいの。それから、乳化安定剤の働きを変えるものもあります。乳化安定剤の働きは温度や塩の濃さで違ってくるのね。これは、マヨネーズを炒めたり、お塩をたくさん入れると分離してくることで確かめられます。
パスタの塩水ってすごいっ
パスタのゆで汁でお皿がきれいに洗えます 知ってる人も多いかもしれないけど、パスタをゆでた塩水でお皿を洗うと、洗剤を使わなくても油汚れがずいぶんきれいに落ちます。これはね、パスタのゆで汁に油汚れをきれいにする成分が含まれるからなんです。それはパスタからしみ出てきた物質。パスタって小麦粉からできているので小麦粉に含まれるでんぷんやタンパク質なんかがゆで水に出てくるんです。サポニンという界面活性剤の一種(お豆にはたくさん含まれてます)も出てくると言われることもありますが、小麦粉のサポニンはよく分かっていないようです。でも、タンパク質はだいたい多かれ少なかれ両親媒性なのでそれが乳化安定作用を持っているのかもしれません。また、でんぷんの小さな粒子が油汚れを機械的に掻き取るのかもしれませんね。
パスタのゆで汁をフライパンに入れて乳化させるわけ もう分かったでしょう。パスタのゆで汁って弱いながらも乳化安定剤(タンパク質)を含んでいて、それにでんぷんが少しとろみをつけるので、ただのお水よりも乳化させやすいんです。たまたま隣にお湯が沸いてる、塩気があるなんて単純な理由だけではないんですね。パスタ料理はとっても科学的。パスタのゆで汁。侮れないんです。偉いのは蕎麦湯だけではないのよ。
どうして乳化
乳化をした方がおいしいわけ 乳化するとおいしいのは、一言でいうと、よく振ったドレッシングがおいしいのと同じ理由です。油と水がばらばらだと、わたしたちの舌も油のねっとりとお水のべちゃべちゃ感をばらばらに感じてしまいます。パスタの場合はお水に塩味がついてるので、油と塩水で味にまとまりがないのね。ところが、乳化するとそれが渾然一体となって調和したおいしさを感じるの。それに、とろみが出るのでおソースとしてパスタに絡みやすい。乳化というのはオイルのおソースを作ることなのね。
乳化といえばペペロンチーノ パスタのレシピで乳化ということが口やかましく書いてあるのはペペロンチーノ。他のレシピはどうなの?って思われる人もいらっしゃるんじゃないかな。実はそれはペペロンチーノの乳化が一番難しいから。理由はもう分かってるでしょ。具の少ないペペロンチーノは、乳化を安定させる成分も少ないので意識してしっかりフライパンを振らないと乳化しないの。同じオイルソースでも例えば、イカを炒めたりするものだと、イカから乳化を安定化させる成分(タンパク質とかリン脂質とか)が出てくるので、乳化しやすくなってるの。トマトソースなんかでもそう。トマトにはたくさんの成分が含まれていますからね。もちろんよく混ぜることが乳化させる基本なんですよ。
乳化のさせ方 よく混ぜることが乳化させる基本なんですけど、どうしたらちゃんと乳化させることができるでしょう?慣れてくればフライパンを激しく振ってうまく乳化させることができるようになるんですが、慣れないとちょっと難しいかもしれませんね。そのときはフライパンを傾けてオイルと水を集めて菜箸(2本より4本)で泡立てるように細かく激しく混ぜるようにすると簡単ですよ。
 オリーブオイル |
 パスタのゆで汁を入れても 分離したまま |
 よく振ると乳化して どろっと |
 コップに入れてみると 濁ってるのが分かる |
|
|
おしまいに
以上のようにお話ししたことは、界面化学や食品化学という分野で研究されていることです。わたしは、それらについてはずぶの素人なので、いろんなウェッブサイトに当たって調べました。でも、素人の浅はかさ。なんとなく理解できたつもりになってることだけ書きましたが、間違ってることもあるかもしれません。もし、ここが違うよとかこれよく分からないっていうことがあったらお知らせ下さるとうれしいです。参考にしたサイトのうち、面白そうなところを以下にリンクしておきますね。
カソウケン 身近な生活の科学が分かりやすく解説されています
|