CPAP(シーパップ)は、睡眠時無呼吸症候群の治療で最も使用される器械です。特に重度の睡眠時無呼吸症候群では心臓、脳などにかかる負担も大きく、大切な命を守るためにもCPAPによる治療は必要不可欠です。
ところがCPAPは全ての人にあうわけではなく、中にはCPAPがあわない人もいます。一般には治療継続率は50〜80%といわれ、装置があわずに使用を中断する人もいます。しかしながら、工夫していくことで治療の継続が可能となることもあります。
●CPAPがあわない理由
残念なことに、CPAPがあわない人はどこの医療機関でもいます。効果の問題、気道や鼻の問題、装置の使用感の問題での中断が9割を占め、最も多いのが「CPAPの効果がない」、「気道が乾く」で、中断理由の約半数を占めます。
1割弱の人は、CPAPは重さが1kgほどあるため持ち運びしにくく出張や旅行に不便、医療機関への定期的な受診義務があるため、通院できずにCPAPの使用を中断しています。
20〜30歳代は仕事が忙しい、通院ができないなど社会的な要因で、40歳以上では効果がない、違和感があるなど、使用感に関する要因で中断する傾向があります。
CPAPをやめた理由※1
当クリニックにいびき・睡眠時無呼吸症候群の治療を希望して来院された患者様5500人では、12%の患者様がCPAPによる治療の経験がありました。
7%の患者様がCPAPがあわない、症状が改善したなどの理由で中断、5%の患者様は日頃はCPAPを使用、旅行や出張の時にスリープスプリント(マウスピース)を使用する患者様でした。
CPAPの使用経験※2
CPAP療法のトラブル出現は、使用後1ヶ月以内が大半を占めます。
使用開始直後によくみられる空気圧が合わない問題、気道乾燥、接触性皮膚炎などのトラブルを早期に対処することで、その後は問題なく、長期のCPAPの使用が可能になるとされています。すぐに「CPAPは合わない」と考えずに、根気強く問題を解決していくことが大切となります。
トラブル出現の日数※3
関連するページ CPAPについて CPAP Q&A
●CPAPがあわない時の対処方法
CPAPがあわない時は、以下の対処方法をおこなうと効果が得られることがあります。睡眠時無呼吸症候群の治療方法の中では、CPAPによる治療が最も効果のある治療方法です。かかりつけの医師の先生と相談しながら、できる限り使用されるのがよいでしょう。
症状 | 対処方法 |
鼻、気道の乾燥(冬に多い) 鼻出血(乾燥した空気、血管拡張) |
室内の加温、加湿 加温加湿機能があるCPAPの使用 |
鼻づまり 鼻炎 (乾燥した空気、血管拡張) |
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室内の加温、加湿 加温加湿機能があるCPAPの使用 点鼻薬の使用 耳鼻科に通院 |
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口の乾燥 | 室内の加温、加湿 加温加湿機能があるCPAPの使用 マスクの変更、調整 |
マスクで皮膚かぶれをおこす | 軟膏の使用 マスクの調整 ピロータイプのマスクに変更 |
閉所恐怖症 | ピロータイプのマスクに変更 |
装着を嫌がる(小児) | 昼寝のときに練習してみる |
マスクが合わない(高齢者) | マスクカバーを付けたままの装着 マスクを反対に装着 |
マスクが圧迫される | マスクの変更、調整 CPAP対応枕を使用 ※ネット通販で販売 |
マスク周囲から空気が漏れる | |
目の乾燥、痛み(空気漏れ) | |
結露や水滴で目が覚める (冬に多い、チューブ内で空気が冷やされて結露) |
室内の暖房 CPAP本体を頭より低い位置に置く ホースを保温するためにホースカバーを使用 保温のため、ホースを布団内に入れる |
無意識にマスクを外す 息苦しい |
マスク、CPAPの変更 無理のない範囲での使用 |
音がうるさい | 静かな装置に変更 できるだけ離して装置を設置 |
効果がない 通院できない | スリープスプリント(マウスピース)の使用 |
旅行に行きたい 出張が多い 宿直がある 山小屋で使用したい |
スリープスプリント、ナステント クラシックなど持ち運びがしやすい装置を併用 |