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蕪栗沼に冬に飛来する鳥




蕪栗沼では冬に50種類ほどの鳥が観察できる。マガン、ヒシクイ(亜種オオヒシクイ)、シジュウカラガン、トモエガモ、チュウヒなど他の場所 では珍しい種も、ごく普通に見ることができる。「よく見られる鳥」「たまに見られる鳥」「運が良いと見られる鳥」「滅多に見られない鳥」に分けて 紹介する。



よく見られる鳥」★
たまに見られる鳥」★★
運が良いと見られる鳥」★★★
滅多に見られない鳥」★★★★



よく見られる鳥(★)




マガン(Anser albifrons)(White-fronted Goose)


マガンは、体長約72cm翼開長約140cmのカモ目カモ科の水鳥で、冬に約7万羽が飛来する蕪栗沼を代表する鳥類である。ピンク色のくちば しと、その根元と白い羽毛が特徴で、数羽から数百羽の群れをつくって行動する。

水田にいるマガン

マガンは蕪栗沼を夜のねぐらとし、日中は水田で落ち穂や雑草などを食べている。日の出とともに数万羽の群れが周辺の水田に向かって沼を飛び立つ光 景は、蕪栗沼の冬の風物詩となっている。また夕方には、周辺水田から沼に戻ってくる「ねぐら入り」が見られる。

マガンの飛び立ち


マガンのねぐら入り(2006.10.28撮影)

飛行して移動する際に「雁行」と呼ばれる隊列をつくる。雁行の順序は入れ替わ り、必ずしも先頭がリーダーというわけではない。

マガンの隊列(2009.12.1撮影)

成鳥になると腹部に黒い帯模様が現れる。幼鳥にはないため、空を飛ぶマガンを見ると、成鳥と幼鳥を区別することができる。


マガンの成鳥(左)と幼鳥(右)



ヒシクイ(亜種オオヒシクイ)(Anser fabalis)(Bean Goose)


オオヒシクイは体長約90cm、翼開長約175cmのカモ目カモ科の水鳥で、冬に約2000羽が飛来する。黒いくちばしの先に黄色い部分があ るのが特徴である。

オオヒシクイの顔(2018.12.29撮影)

ヒシクイの呼称は、「ヒシ(菱)」という植物を食べることに由来する。蕪栗沼でも、ヒシの実を食べるようすが観察できる。

ヒシを食べるオオヒシクイ(2018.11.29撮影)

マガンと異なり、腹部の黒い帯模様がない。蕪栗沼では、朝になると北方から多く が飛来してくるため、夜間は別の場所にいると考えられている。実際、伊豆沼や長沼で、夜間にレンコンを食べるオオヒシクイが観察できる。
オオヒシクイの飛翔(2018.11.14撮影)

オオヒシクイの主食はマコモという植物の根茎部である。蕪栗沼のマコモ群落では、根茎を掘り出す姿がよく観察できる。オオハクチョウとオオヒシク イによって蕪栗沼のマコモが大量に食べられ、その結果土が水に溶けて流されることによって、水面が広がり陸地化が抑制されていると考えられる。実 際水面の面積は大きく広がっている。

ヤナギ群落の根元まで広がった水面(2005.12.07撮影)



シジュウカラガン(Branta hutchinsii)(Cackling Goose


体長約65cm翼開長130cmの中型のカモ科水鳥で、冬に数千羽が飛来する。以前カナダガンと呼ばれていた種が、カナダガンとシジュウカラ ガンの2種に分けて分類されるようになった。シジュウカラと似た、顔の白い模様が特徴である。

シジュウカラガンの飛翔(2018.12.28撮影)

2005年頃までは、冬に迷鳥として数羽が見られた程度であったが、仙台市立八木山動物公園とロシア科学アカデミー、日本雁を保護する会の羽数回 復事業によって、千島列島の繁殖地が復元され、飛来数が大幅に増加した。

シジュウカラガンの雁行(2018.11.4撮影)

マガンと同じく、朝ねぐらである沼を飛び立って、日中は周辺水田にいる。夕方になると沼に戻ってくるねぐら入りが観察できる。

シジュウカラガンの飛び立ち(2020.11.15撮影)



オオハクチョウ(Cygnus cygnus)(Whooper Swan)


全長約140cm翼開長220cmの大型のカモ科水鳥で、冬に300羽前後が飛来する。オオハクチョウは主に川や湖沼のマコモを食べるため、 水田を採食地とするマガンやシジュウカラガンのように数が多くない。逆に宮城県の他の地域でも良く見られる鳥である。

オオハクチョウ(2021.12.03撮影)

沼地で活動するオオハクチョウは、顔や首の部分が茶色く変色していることが多 い。主に水田で活動するコハクチョウとの違いになっている。オオハクチョウは体が大きく、キツネやオジロワシなど水鳥の天敵に対して十分に対 抗できる。このため特にヒシクイはオオハクチョウと同じ場所にいることが多い。
オオハクチョウとオオヒシクイとコハクチョウ(2021.01.25撮影)

オオハクチョウはガン類と比べ小さな群れ、家族群で行動することが多いようである。灰色の幼鳥の姿も良く観察できる。

オオハクチョウの親子(2008.12.6撮影)



チュウヒ(Circus spilonotus)(Eastern marsh harrier)


チュウヒは、タカ目タカ科の中型のワシタカ類である。蕪栗沼には夏に数羽、冬に数羽から十数羽が飛来している。蕪栗沼に飛来するカモ類を捕獲 する。空中で翼をVの字形にして滑空するため、とても目立つ。

V字形で滑空するチュウヒ(2021.12.10撮影)

チュウヒは夏もいるが少数である。冬になると飛来し、蕪栗沼のヨシ原で集団でねぐらをとる。個体によって羽毛の色や模様が異なるため、識別するこ とができる。

チュウヒのねぐら(2017年3月撮影)

チュウヒが沼の上空を飛ぶと、オナガガモやコガモなどの群れが一斉に飛び立たっ て逃げる。チュウヒを発見するには、カモ類のこのような行動に気を付けるとよい。また沼から生えている植物の上にいることもある。
チュウヒの飛翔(2010.12.2撮影)





ノスリ(Buteo japonicus)(Eastern Buzzard


全長約50cm、翼開長約100cmの中型のワシタカ類で、冬に蕪栗沼および周辺の水田に多数が飛来する。主にネズミなど小動物を食べる。電 柱や木にとまり、ずっと下を見続けて獲物を探す。

木にとまって獲物を探すノスリの幼鳥(2020.1.12撮影)

お腹に腹巻のような茶色い帯があるのが特徴である。また空中をゆっくり滑翔し、 野をするように飛ぶためノスリと呼ばれるようになったという説がある。

翼を広げて旋回するノスリ



カモ類

マガモ(Anas platyrhynchos)(Mallard)
体長50cmのカモ目カモ科の水鳥で、主に冬に蕪栗沼に数百羽が飛来する。緑色の頭と、黄色いくちばしが特徴。アヒルの原種である。

コガモ(Anas crecca)(Common Teal)
体長35cmのカモ目カモ科の小型の水鳥で、主に冬に蕪栗沼に数百羽が飛来する。緑と茶色の頭部と、他のカモ類に比べて小さいのが特徴。

オナガガモ(Anas acuta)(Northern Pintail)
体長60cmのカモ目カモ科の水鳥で、主に冬に蕪栗沼に数千羽から数万羽が飛来する。茶色と白の頭部と、長い尾羽が特徴。

たまに見られる鳥(★★)


カリガネ(Anser erythropus)(Lesser white-fronted goose)


全長約60cmのカモ目カモ科の水鳥で、翼開長は約130cm。マガンよりやや小さいガン類である。目に黄色いアイリングがあるのが特徴。マ ガンより甲高い声で鳴く。蕪栗沼には数十羽がねぐらとして利用しているとされるが、マガンとよく似ているため滅多に見ることができない。登米市の 長沼周辺や南方町の水田で見られる。

トモエガモ(Anas formosa)(Baikal teal)


全長約40cmのカモ目カモ科の水鳥で、翼開長約60cmのやや小型のカモ類である。顔に「ともえ」模様があることからこの名で呼ばれる。日 本に飛来するのはまれであることから、環境省のレッドリストの絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されている。蕪栗沼沼の白鳥地区北水面や長沼で数十羽が 見られる。


ヘラサギ(Platalea leucorodia)(Eurasian Spoonbill)


ペリカン目トキ科の大型の水鳥で、全長は約85cm、翼開長は約125cmになる。くちばしがスプーン状になっており、この部分を水中に入れ て触れた魚を捕まえて食べる。あまり日本では見られない鳥だが、蕪栗沼では2000年から20年以上にわたって確認されている。同一個体かは不明 である。

タゲリ(Vanellus vanellus)(Northern lapwing)


チドリ目チドリ科の小型の水鳥で、全長は約30cm、翼開長は約70cmである。緑を基調とした金属光沢と、頭の飾り羽が特徴。蕪栗沼には冬 に数十羽が飛来する。オオヒシクイの群れの中や周辺水田にいることが多い。

オジロワシ(Haliaeetus albicilla)(White-tailed eagle)


タカ目タカ科の大型のワシタカ類で、全長約80cm、翼開長約210cmにもなる。メスのほうがオスより大きいとされる。尾羽が白いのが特徴 である。蕪栗沼では、冬にカモ類を捕獲するために凍結した沼に飛来する。

ヤナギの木にとまったオスとメス

飛翔する若い個体

オオタカ(Accipiter gentilis)(Northern Goshawk)


タカ目タカ科の中型のワシタカ類で、全長は約60cm、翼開長は約110cmである。メスの方がオスより大きい。目の上に白い斑があるのが特 徴。蕪栗沼で見られるのはたいてい冬の幼鳥で、巣立った若い個体が魚類を食べているのを見かける。まれに成鳥がカモ類を捕獲している。

ヤナギにとまる成鳥

幼鳥は腹の模様が縦じまになる

ハヤブサ(Falco peregrinus)(Peregrine Falcon)


ハヤブサ目ハヤブサ科の中型のハヤブサ類で、全長約45cm翼開長100cmである。翼の先端がとがっているのがハヤブサ類の特徴である。顔 にひげのような模様がある。蕪栗沼では小鳥などを捕獲しているようすが一年を通じて見られる。

ツルシギ(Tringa erythropus)(Spotted Redshank)


チドリ目シギ科の小型の水鳥で、全長は約30cm。夏になると全身が黒くなる。蕪栗沼では、夏に見かけることが多く、ひと夏中見られる場合も あるが、主に春夏の渡りの時期に一時的に滞在する。

運がよいと見られる鳥(★★★)


ハクガン(Anser caerulescens)(Snow goose)


カモ目カモ科の大形の水鳥で、全長約75cm翼開長140cmである。マガンとほぼ同じ大きさかやや大きい。翼の先端が黒いほか体の大部分が 白い。蕪栗沼では、まれに数羽が見られるのみである。日本には約千羽が飛来し、伊豆沼を主なねぐらとしている。

蕪栗沼の中央水面にて(2016.12.6)

周辺水田にて(2005.12.27)

シマアジ(Anas querquedula)(Garganey)


カモ目カモ科の中型の水鳥で、全長約40cm翼開長60cmである。オスの頭に白い斑があるのが特徴である。蕪栗沼では6月ごろに渡りの途中 に一時的に見ることができる。



白鳥地区水面にて(2007.5.8)



滅多に見られない鳥(★★★★)




ソデグロヅル(Grus leucogeranus)(Siberian crane)


ツル目ツル科の全長約130cm、翼開長約250cmの大型の水鳥で、冬鳥として日本にまれに飛来する。蕪栗沼には2017年の1月から3月 頃に3羽の家族群が飛来したことがある。

沼の開水面の北側にいたところ

西に向かって飛んで行った

幼鳥と成鳥

タンチョウ(Grus japonensis)(Red-crowned crane)


ツル目ツル科の大型の水鳥で、全長約125cm、翼開長約240cmにもなる。蕪栗沼には2010年の1月頃から姿を現し、 2011,2012年の3シーズン姿を見せたが同一個体かは不明である。オオヒシクイのいる開水面や、沼の南の水田で見られた。

沼の開水面にて(2011.1.20)

飛ぶタンチョウ

オオヒシクイを威嚇するタンチョウ

インドガン(Anser indicus)(Bar-headed goose)


カモ目カモ科の中型の水鳥で、全長約75cm翼開長150cm。白い体に棒状の斑があるのが特徴である。蕪栗沼には2015年12月9日に一 度だけ姿を見せた。インドガンは各地の動物園で飼育されており、野生個体かどうかは不明である。