僵niphofia - phase 1 -
語り部の男から話を聞くがまま、ファイザバード沼野から踏み入れた場所、マグナ・ゼロは
何故かイル・ファンの街並みが再現されており、最初は一体何が起きているのか分からなかった。
この世界の主である黄金魔剣士曰く、ここではこれまで自分たちが辿ってきた戦いの記憶が投射されているのだという。
つまり過去に見てきた景色がこの世界で再現されたとすれば、すなわちそれは自分たちの意識が反映されたものらしい。
「だとして、最初にイル・ファンがくるなんてね」
「そういえば、ジュードとミラはイル・ファンで会ったんでしたよね・・・・・・?」
「あぁ。またここから始めろということか・・・・・・面白いじゃないか」
現状退路が断たれており、ひとまずのところは進むしかなさそうだ。
タリム医学校前の広場には魔物の姿の他にも、ファイザバード沼野からここに訪れた際に飛び込んだ
あのもやのようなものが2つ見えている。
「どうやらイル・ファンを再現できているのはこの一角だけで、海停方面などには進めないようです」
「つまり、僕たちはあのもやのどっちかに入らないといけないってことだよね・・・・・・どうしよう、どっちにする?」
「じゃあ奥のやつにしようぜ」
特に理由はないけど、とアルヴィンが外来受付口の横にあるもやを指差した。
二言返事でそちらに行くことに決め、進路を塞ぐ魔物の討伐を開始する。
しかしこれが中々手ごわく、記憶の再現というわりに魔物はその限りではないようだ。
「最近魔物との戦闘も余裕になっちゃったから、わたしはこれぐらいが丁度良いかな!」
「もう、そんなに嬉々としないでよ・・・・・・まだ先長そうだよ?」
意気揚々としているレイアに釘を刺しつつも、確かにこれぐらい手ごたえがあったほうが
鍛錬にも丁度いいかもしれないとジュードも思いはした。
戦いなれていない相手に様子を窺いながらの戦闘となったが、さほど苦戦を強いられることはない。
魔物の群れを1つずつ着実に討伐していくと、このイル・ファンの一角からはその姿が見えなくなった。
「・・・・・・よし、これで制圧完了かな?」
タンッ、ととどめをさしたアルヴィンの銃撃音が響いたところで、ジュードは辺りを見回す。
エリーゼのナースでひとまず回復も終わり、早速と外来受付入り口の近くにあるもやへと近づいてみた。
もやの先に何も見えないのはファイザバード沼野からここへ来た時と同じようだ。
「これ、本当に大丈夫なのかな」
「何処に繋がっているのか分からないとはいえ、ここで立ち止まっているわけにもいかないからな」
ミラの言うことも尤もだと分かってはいるものの、ここは自分たちが知っている世界とはどうにも違うらしい。
へたなことはしたくないと思う自分と、とはいえ進むしかないと思う自分との葛藤で、ジュードは首を捻った。
「びびってないではやく行こうぜ?」
「・・・・・・はぁ、分かったよもう」
いつものようにアルヴィンに肩を抱きこまれる格好となり、ジュードは大きな溜め息とともに肩をがくりと落とす。
皆が楽観的かつ前向きすぎるのか、それとも自分が懐疑的すぎるのだろうか。
そんなことをジュードが考えているうち、肩に感じていた重量感も離れ、それぞれがそのもやの中へと向かっていった。
いつまでもここでぼんやりしていてもそれこそ仕方がない、とジュードもまたもやの中へと飛び込んだ。
ふっと、周囲の空気が変わったように感じて、無意識ながら瞑っていた目を開いてみた。
そこに広がっているのはリーベリー岩孔で、今いる位置は一番上層の吊り橋の上だ。
「・・・・・・あれ?」
そこにいると思っていたはずの人影がなく、ジュードはあたりをきょろきょろと見回す。
視界の中にはミラも、レイアも、エリーゼも、そしてローエンとアルヴィンの姿もない。
一瞬下に落下してしまったのだろうかと、慌ててその吊り橋から下を覗き込んでみたが、やはりその姿がなかった。
「え、まさか置いていかれ・・・・・・るはずないよね、さすがに」
レイアあたりがいたずら半分に、というのはあるかもしれないが、こんなところでそのようなことはしないだろう。
そもそもミラやローエンがさすがに引き止めるはずだ、と信じたい。
つまるところ、現状可能性が高いことといえば、あのもやに進入した段階でばらばらになってしまった、ということだ。
「もう・・・・・・不安的中だよ」
盛大な溜め息をついたところで、ジュードはもう一度あたりを見回してみた。
あちこちに魔物の群れがいくつかあり、同じ高度にひとつ、下層にひとつの合計ふたつ、例のもやがあるようだ。
ジュードはとん、と右の人差し指でこめかみを突く。
下層まで行くには何度か坑道内の通路を通る必要があるが、
イル・ファンでのことを考えると、現状見えている範囲でしか行動ができない可能性が高い。
つまるところ、無理に下層へ向かうよりは同じ高度にあるもやを目指した方が確実だ。
「ひとりで行くしかないよね・・・・・・はぁ」
こうなっては尚のこと、他のメンバーと合流を急がなければ危険は増すばかりだ。
なるべく魔物を刺激しないようにしながら、ジュードは吊り橋の上を歩き始めた。
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この話は、マグナ・ゼロでもっとイベントほしかったなという妄想の産物です。
アルジュはくっつきそうでくっついてない感じです。