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『子どもが出会う犯罪と暴力―防犯対策の幻想―』


       
 目からウロコの新書です。

「子どもを守る」を合言葉に広がる防犯対策。足立区でも他聞にも
れず、「危機対策管理室」が設けられ、駅や商店街には防犯カメラ
が設置され、子どもたちの学校の校門は施錠されインターホンが
設置されました。

その主眼は路上に現れる不特定の「不審者」に向けられています。
この本を読んでハッとしたのは、子どもをめぐる刑法犯罪も凶悪犯
罪も明確に減少しているという事実。そして、現実に子どもが出会う
犯罪や暴力は、路上ではなく、圧倒的に家族や知人からのものだ
ということでした。

つまり象徴的な事件をマスコミが過熱報道をし、「危機管理」意識を
あおっているけれども、今の処方が本当に最適なのかを考えさせら
れたのです。監視社会、みんながパトロール、そんな社会の中で、
本当は不審者ではない、黒めがねの障害者や汚い身なりをした人
…悪意はないのに、不審者を作り出してしまう集団心理が働くこと
…。教師や保護者や大人が、警察からの溢れるばかりの不審者情
報に一喜一憂し、路上の不審者探しに忙しいとき、子どもたちは路
上よりもむしろ家庭や学校内の暴力に傷つき苦しみ、自傷・他傷、
ひきこもりを繰り返している。そうすることで大人たちにメッセージを
送っている。

子どもを犯罪から守る効果的な方法は、防犯カメラやICタグ監視シ
ステムや防犯ブザーやさすまたや、その他の防犯グッズに頼ること
ではなく、危機管理の基本は、コミュニケーション。

私の中でモヤモヤと感じていたことを、言葉にし論証してくれた感じ
でした。


この本では、森田ゆりさんが、多年にわたって培ってきたCAP(子どもへの虐待防止)プログラムなどの実践から得た
知見に基づき、マスメディアが煽る不安が何なのかを問いかけ暴き、さらに子どもに安心を自身をもたらす処方箋も明
らかにしているのです。

(『子どもが出会う犯罪と暴力―防犯対策の幻想―』生活人新書 森田ゆり、)