バブル絶頂期によんだ同じ著者の「豊かさとは何か」には、頭を殴られ
たようなショックを受けました。同じ資本主義であっても、西ドイツ(当時)で
は、こんなにも人間が大切にされている、人間らしく働き生きられる―それ
まで「経済力世界第2位」「バブル」などの言葉に踊らされていた日本が、
本当の人々の暮らしは、決して豊かではなく、豊かなのはごく一部の部分
と、モノが溢れているということだけ―こんな想いを強くしました。私の生き
方に影響を与えた本でした。
本書は、その続編ともいえる本です。著者の暉峻淑子先生は、私もなじ
みの深い埼玉大学の教授でした。(現名誉教授)
効率と競争の追及によってのみ事態が打開できるといわんばかりの日
本の経済と社会。競争からはみ出たものは自己責任論で片付けられる。
その中で日々生活していると当たり前に感じることが、いかに異常なの
か、おかしいことなのか、気づかせてくれた一冊でした。
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日雇い派遣・ワーキングプア…結婚も子育ても未来も感じられないような働かせ方。「経費節減」で人件
費は極端に抑えられ、いまでは3人に一人が非正規雇用。正規に雇用されているものも、長時間過密労
働、世界に例のないサービス残業や過労死の横行。
年金も破綻し、かけた年金が宙に浮いている。これでは、将来に希望も夢も持てない。
高齢者はいじめにいじめられ、世界に例のない差別医療。75歳という年齢だけで、現役世代の医療保
険から切り離され、保険料も全員年金から天引きされる「後期高齢者医療制度」。年金額はふえるどころ
か目減りする一方。
子どもの世界も閉塞を極めています。
―この本では、著者のNGO活動の経験をふまえて、真に豊かな社会をもたらす互助の関係性をどうつく
りあげるか問いかけています。
(『豊かさの条件』暉峻淑子、)
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