タイでオートバイの免許を取得する

鉄道網がほとんど整備されていないタイでは、特に田舎に行くとオートバイは必須です。 しかし私は日本では車やオートバイは一切運転したことが無く、従って免許証も持ってませんでした。
この無免許状態から、タイで新規にオートバイの免許を取得することが出来たので、情報をまとめてみます。

なお私は、タイの日本語書店で「タイ車読本」という本を買いました(800バーツ)。免許取得のための情報、交通標識や法律、運転に必要なタイ語、簡単な選択問題などが書かれています。

車やバイクの免許取得に必要な書類

免許取得の試験に行く前に、以下の書類をそろえなければなりません。
  • 住居(コンドミニアムなど)の在住証明
    これは、住居の受付などに言えば発行してもらえます。私の場合は、入居時の契約書を受付に持って行ったら、滞在日数だけ書き換えられて終わりになりました。
  • 居住証明
    居住証明 上記の在住証明書をイミグレーションに持って行って、正式な居住証明を発行してもらいます。
    居住証明の申請用紙は普通の用紙置き場には置いてありません。受付に言ってもらってください(右の写真)
    写真が2枚必要です。料金は500バーツ。
  • 健康診断書
    病院に行き、「免許証取得のための健康診断書を作りたい」と言えば、案内してもらえます。 タイ語や英語で言えない場合は、下の文章をインフォメーションに見せてください。
    อยากเอา ใบรับรองแพทย์ (เพื่อใบขับขี่)
    私は、チェンマイラームという日本語の通じる病院に行ったのですが、通訳の看護婦さんが検査の間ずっと付き合ってくれました。
    検査項目は、体重、色弱、聴診、血圧(両腕)でした。身長は自己申告。車の運転に一番必要そうな視力検査が無いんですけど問題無いんでしょう。
    検査が終わり、費用(100バーツ)を払うと、「各項目は問題ありません」と書かれた診断書がもらえました(せっかく検査した数値は一切書かれていません)。所要時間は40分ほどでした。
  • パスポートのコピー
    顔写真のページ、入国日スタンプのあるページ、ビザのページのコピーを取ります。 いつものように、全てのコピーにパスポートの著名と同じ(漢字なら漢字の)サインをします。
    試験の時には、パスポート自体も持って行きます(実は外国人は、常に携帯していた方がいいらしい。私は通常はコピーを持ち歩いてます)。
以上の書類が揃ったら、発行日から1ヶ月以内に運輸局へ行って試験を受けます。
上記以外に、顔写真2枚が必要と書かれている情報もありましたが、実際には不要でした。

試験場での流れ

試験は、適性試験、選択試験、実技試験があります。
実技試験で使う車やバイクは、試験を受ける人が持って行く必要があります(2人乗りなどで来てないほとんどの人は、無免許で車を運転して試験場に来ているんですね ^o^;)。私はレンタルのバイクを使いましたが、パスポートを預けなければいけないレンタル屋では免許取得に行けないので、友人などに借りてもらう必要があります。

上記の書類を試験場のインフォメーションに提出すると、係の人が受け付け票を書いてくれます。このとき「車の試験か、バイクの試験か?」と聞かれるので、自分の受けたい試験を答えます。
タイ人は受付番号が書かれた札をもらっているのですが、外国人には何も無しです。以下の各処理で名前が呼ばれたりすることは無く、アナウンスはタイ語のみなので、自分がどうすべきか分かりづらいです。係員に確認しながら処理を進めてください。

  • 適性検査
    適性検査の項目は3つあります。
    • 赤青黄の小円がバラバラに描かれたポスターを係員が指し示すので、示された色を答える。 答えは英語でも大丈夫ですが、ジャパニーズイングリッシュだと通じにくいかもしれません。
    • 椅子に座り、係員の号令と同時にアクセルを踏む。前方の装置が赤信号になったらブレーキを踏むテスト。赤信号への反応が遅いと不合格ですが、すぐにやり直しさせてもらえます。
    • 立っている棒を前進・後進させるスイッチを操作して、棒がもう一本の棒と同じ距離になるようにする。同じ距離になったと思ったら右手を挙げて係員に合図する。
  • ビデオ教習
    タイ人はまとめて教習を受けますが、外国人は別室で教習ビデオを見させられます。
    約1時間の交通法規ビデオを見させられると、道路標識などの説明が書かれたパンフレットを渡されます。 このビデオやパンフレットの内容が次の選択試験に出されるので、記憶力の良い方は事前に勉強しないでも試験に合格できるかもしれません(ビデオ中にメモを取っていても注意されませんでした)。
    ビデオは各国語が用意されており、日本語版もあります。パンフレットの方は複数の言語で説明が書かれてあり、日本語も併記されてます。但し、訳が付いていない部分もあるので、不安な所は英語を読むと良いでしょう。
パンフレットを渡されると、強制的に昼食休憩になります。休息中にパンフレットを読んで勉強しなさいということなのでしょう。
なお、試験場室内にはE-Learnig機械も置いてあり、誰でも自由に使うことが出来ます。残念ながら日本語表示はなく、タイ語と英語のみですが、他人のを横から見ているだけでも出題傾向が分かるかもしれません。

選択試験

選択試験は、コンピュータを使った4択問題です。係員に名前を付けると機械を動かすためのIDカードが渡されます。このカードを機械に挿入すると、ちゃんと日本語で操作説明・試験問題が出されました。
バイクの試験は20問出される…と本には書いてあったのですが、実際には(車と同じ)30問が出されました。コンピュータ内の50問ぐらいの中からランダムで出題されるようで、たまに同じ質問も出てきます(このとき、選択肢もランダムに選ばれているので、同じ質問が出てきたら選択肢を見比べれば正解が絞られます ^^;)
30問中、25問以上の正解で合格です。「Finsh」ボタンを押すと即座に合否が判定されます。また間違った回答に対しては、正解が何だったかの表示もおこなわれます。

私は一度目は21点で不合格 orz..。約1時間後におこなわれた再試験は27点で合格しました。
試験を2回受けたため、結構情報ネタが集められました。日本では、バイクや車の試験は引っかけが基本ですが、タイでは別の面に注意する必要があります。以下の設問と回答を見てください。

設問回答と解説
次の内、公道を走ってはいけないのはどれか。
  1. 戦車
  2. ブレーキランプが壊れた車
  3. (略)
正解は[2]です。
日本人の感覚からすると戦車が間違いな気がしますが、ちゃんと講習ビデオの中で「軍の車は通れる」と説明があります。他人を事故に巻き込む可能性のある車は走ってはいけないので[2]が間違いなのですが… 実は私はこれを間違えました。というのは、ビデオの中で「ウインカーやブレーキが壊れている時は次のように手で合図します」のような説明があったので、それならブレーキが壊れている車も公道を走れるんじゃんと考えてしまったのです。他の選択肢はいかにも怪しそうだったのに、つい、日本的な引っかけを想定して回答してしまいました。
右折あり←の標識が見えたら、どのようにすれば良いか。 これは「前方に右折あり」の注意標識ですね。速度を落としてカーブにそなえる…というのがイメージですが、正解は「注意して右に進入しなければならない」と、まるで一方通行のような表現のものでした。
遮断機のない踏切注意←の標識が見えたら、どのようにすれば良いか。 タイでは、踏切には必ず遮断機があるとは限りません。設問の標識は「遮断機のない踏切注意」で、遮断機がある場合は遮断機のある踏切注意の標識です。
日本の場合は踏切の手前で必ず一時停止しますが、タイでは遮断機のない踏切では「左右を確認し、汽車が来ないのを確認して渡る」が正解です。「一時停止」が書かれている選択肢は間違いなので注意しましょう。
一時停止←の標識が見えたら、どのようにすれば良いか。 この標識はタイ語で「止まれ(yùt)」と書いてあります。すなわち一時停止の標識ですね。
…ところが、回答の中に「一時停止」が書かれている選択肢がありません。正解は「周囲を見て注意して進む」でした。 あのー、それなら交差点注意とかの注意標識とどう違うのでしょう??
直進禁止←の標識の意味は?これは簡単、直進禁止ですね。 …直進禁止のハズなのですが… 選択肢にありません。なんと正解は「追い越し禁止」だったのです! イヤ、そんなバカな!?
ちなみに、追い越し禁止の標識問題も出題されました。こちらは「追い越し禁止」で正解です。
これはまちがいなく、設問側のミスです。しかし、コンピュータに入っている正解を示さないと点数がもらえないので、再試験では追い越し禁止を選びましたとも。
最高時速?←の標識の意味は? 試験前に渡されたパンフレットで、この標識の説明は「最時速制限」と書かれていました。最低時速制限なんてものがあるのかとびっくりして何度も見直しましたが、高速道路などではありえるか?と納得して覚えていたのです。
ところが正解は、「最高時速制限30キロ」だったのです。
あのー〜 最高時速の看板と、どこが違うんでしょうか?? というか、パンフレットか回答のどちらか(あるいは両方)が間違ってるでしょ。

試験問題やパンフレットの、日本語訳を作った人が間違えているケースがかなりありますね。上に書いたもの以外でも、図では「A・B」なのに、設問が「1番・2番」と書かれている物があったりして軽く混乱します。 日本だったら、試験問題にこんな間違いがあったら大騒ぎになる所です。しかしタイではきっと、次の大幅なシステム改正までは直されないで同じ物が使われていくのでしょう。

選択肢問題は、「車の駐車で正しいのはどれか」と、「荷物の積み方で正しいのはどれか」の質問が多く出ているようでした。それぞれ2つ以上は設問が用意されてます。
バイクの免許試験の時でも車の停車の問題が出るのは、横断歩道やバス停の近くで駐車してはいけないというのは共通しているためです。しかし、荷物の積み方はどうなんでしょうね? ちなみに荷物制限は、横幅は車体の幅を超えてはならず、高さは3mまで。長さは車体を2.5mまではみ出して可能ですが、その場合赤い旗をつけなければいけません。

実技試験

選択試験に受かったら、実技試験です。
オートバイの場合、

  • デコボコ道を走る試験
    高さ3〜4cmほどのカマボコ状の棒が30cm間隔ぐらいで10本ほど並んでいる道の上を、転倒しないで走ります。
  • コーンの間をスラロームしながら走る試験
    ハンドルをさばけるかを見るのでしょう。
  • 一本橋を落ちずに渡る試験
    一本橋は、幅12cmぐらい、高さは2cm、長さは10mくらいでしょうか。落ちても転ぶほどの高さはありません。
をおこないます。
3つの道を通って(途中にS字っぽい道や踏切もある)、出発点までぐるっと回って帰って来ればお終いです。
1人当たりの試験時間は5分もかかってないと思います。

タイには原付に当たる二輪車は無く(原付っぽい二輪車は、タイ人は乗って良いそうですが外国人が乗ると没収されるそうです)、自動二輪はだいたい排気量90cc〜120ccぐらいのようです。 このため、自転車しか乗ったことのない私にはかなり重たく感じましたが、事前に数回練習させてもらっていたので転倒することもなく、一発で合格しました。バイクの練習および試験会場の送迎に付き合って頂いたOさんに深く感謝します。

免許証取得

実技試験が終わったら、試験官の合格サインが入った書類をインフォメーションに持って行き、支払いのための整理券をもらいます。タイでは、全ての試験に合格するまでは費用はかからないのです。
支払い時にパスポートと申請書などの綿密な突き合わせがおこなわれます(免許証の名前などが違うと大変なことになりますからね)。
チェックが終了し、免許取得費用 55バーツ、免許証作成費用 100バーツの合計 155バーツを払うと、次は写真撮影の整理券を取って順番を待ちます。写真撮影が終わると、その場で免許証が作成されます。このとき、免許証を入れる簡易ケース代金として 10バーツが必要です(買わなくても良いのかもしれませんが)。

以上で運転免許取得は終了です。朝9時から開始して、終わったのは16時でした。
最初は1年間の暫定免許しかもらえないので、免許の期間が切れたら、再び居住証明と健康診断書を作って免許の更新に来ます。すると、5年間有効の運転免許証が与えられます。