新しい歯周病の治療法(リグロス、エムドゲイン、GTR法)
歯周病で失われた骨の再生治療

厚生労働省の統計によると、日本人成人の8割は歯周病にかかっています。歯周病治療の目的は病気の進行を止め、もとの健康な歯肉にすることです。

軽症の歯周病であれば、歯の清掃(歯のクリーニング)をおこなうことで改善することができますが、中等度から重症の歯周病では手術が必要となることがあります。手術では深い歯周ポケット(歯と歯肉の間の溝)を浅くするなどして健康な歯肉にしていきます。

以前は手術では歯周病で失われた骨(歯を支える骨)を回復させることは殆どできませんでしたが、1980年代以降に歯周病の再生治療が開発され、失われた骨を回復させることが可能になりました。

診察

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●新しい歯周病の治療法

日本では1990年代はGTR法が、2000年代以降はリグロスの登場まではエムドゲインが多く使用されてきました。2016年にリグロス、2024年にブルーラジカル P-01による治療が始まりました。当クリニックでは下記全ての治療をおこなっています。お気軽にご相談ください。


1)ブルーラジカル P-01  世界初の歯周病治療器  健康保険適応外
東北大学で17年の歳月をかけて研究、開発され、2023年に厚生労働省に認可、2024年に販売が始まった革新的な歯周病治療器です。

細菌を99.99%殺菌でき、重度の歯周病にも効果があると認められた世界で初めての歯周病治療器として注目されています。他の方法と異なり手術が必要ないため負担が軽いのも特徴です。


治療方法
ラジカル殺菌

超音波の振動で歯周ポケット内の歯垢や歯石を除去するのと同時に、過酸化水素水とレーザー照射によって殺菌をおこないます

<お知らせ(2024年8月)>
ブルーラジカル P-01は2024年8月現在、全国65施設の歯科医院で導入されています。当クリニックは2024年8月に導入、横浜市では2番目に導入させていただきました。


関連するページ  ブルーラジカル P-01  ブルーラジカル P-01 Q&A   メディア情報



2)リグロス  世界初の歯周組織再生薬  健康保険適応
リグロス(一般名:トラフェルミン)は傷を治したり血管をつくる成長因子の一つ「FGF−2(bFGF)」を使用した薬です。FGF−2は血管をつくり歯肉に栄養を供給して、歯周病によって失われた骨(歯を支える骨)など、歯肉の組織を再生させます。

健康保険適応の治療で、歯周病の手術時にリグロスを使用することで歯周病の症状が改善します。手術方法はエムドゲインとほぼ同じです。

臨床試験(下図)では、エムドゲイン、通常の歯周病手術(フラップ手術)に比べると骨の再生能力は高いとされていますが、それぞれ特徴があるため適応症をみたうえで治療を進めていく必要があります。

リグロスは1990年代前半に大阪大学で研究が始まり、歯科大学病院を中心に国内25施設で臨床試験をおこなった後、2016年に厚生労働省に認可され治療が始まりました。日本で開発された世界で初めての歯周組織を再生させる薬です。


<市販直後調査の結果について>
2016年12月に販売が始まったリグロスは、2017年5月まで市販直後調査(臨床試験の次の段階)が当クリニックを含む241施設の医療機関でおこなわれました。5月までに約1500名の患者様に使用され、副作用は0件との結果でした。


<使用成績調査について>
市販直後調査にご協力させていただいたのに続き、2018年3月から使用成績調査に参加(当クリニックを含む歯科大学病院など300施設)、ご協力させていただきました(2021年5月まで)。


リグロス リグロス


骨の再生量の比較(手術36週間後の歯槽骨の平均増加量、mm)
歯周病手術の比較

関連するページ  リグロス Q&A  歯周病治療の流れ(中等度から重度の歯周炎)



3)エムドゲイン  タンパク質を塗ることで歯槽骨を再生 健康保険適応外
歯周組織再生誘導材料「エムドゲイン(エナメルマトリックスデリバティブ、EMD)」は、歯がつくられる時期に重要な役割を果たすタンパク質の一つ「エナメルマトリックスタンパク質」を使用した材料です。歯周病によって失われた骨(歯を支える骨)を再生させることができます。

1995年にスウェーデンで治療が始まり、日本では1998年に厚生労働省に認可されました。2024年までに世界で250万人以上に使用され、1000以上のエムドゲインに関する研究論文が発表され、高い実績、研究成果、安全性があります。

歯周病の手術時にエムドゲインを骨に塗ることで、失われた骨の再生を可能にします。健康保険適応外の治療です。

エムドゲイン エムドゲイン


治療方法
エムドゲイン治療前 エムドゲイン治療前(レントゲン写真) エムドゲイン治療中 エムドゲイン治療後 エムドゲイン治療後(レントゲン写真)

1.治療前
歯周病により骨(歯を支える骨)が失われています。深い歯周ポケット(歯と歯肉との間の溝)があります。

2.治療中
GTR法は膜を入れることによって骨の再生を促しますが、エムドゲインは薬剤を塗ることによって骨の再生を促します。

3.治療後
骨が再生。歯周ポケットも浅くなりました。

関連するページ  歯周病治療(GTR法、エムドゲイン、リグロス、ブルーラジカルP-01)の比較


治療結果
以下は歯科大学付属病院を含む国内171施設でおこなった956症例の結果です。手術時間は1時間前後、多くの症例において手術後は歯周ポケットが浅くなり、歯のグラグラも改善しています。一方で、タバコを吸っている人は治療成績は悪い傾向がみられます。


手術時間と歯のグラグラ度(動揺度)※1
エムドゲインの手術時間 歯の動揺度


総合評価※2と歯槽骨(歯を支える骨)の回復
エムドゲインの手術評価 歯槽骨の回復

※1 歯の動揺度(Millerの分類) しない:0度、生理的動揺(0.2mm以内) わずか:1度、頬舌的にわずかに動揺(0.2〜1mm) 少し:2度、頬舌的に中等度、近遠心的にわずかに動揺(1〜2mm) かなり:3度、頬舌的、近遠心的のみならず、歯軸方向にも動揺(2mm以上)  ※2 総合評価は歯科医師が検査を元に評価したもので、患者様の評価(自覚症状)とは異なります。

当クリニックはエムドゲイン認定歯科医師が在籍しています。

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4)GTR法(歯周組織再生誘導法)
  膜を使用して歯槽骨を再生  健康保険適応外
GTR法(ジーティーアールほう、Guided Tissue Regeneration Technique)は、歯周病によって失われた骨(歯を支える骨)を再生させる治療方法です。

メンブレンという特殊な膜を使用することにより、骨が再生するためのスペースを確保、骨の再生を邪魔する歯肉の侵入をブロックすることにより、失われた歯槽骨を再生させます。

1982年にスウェーデンで治療が始まり、日本では1992年に厚生労働省に認可され治療が始まりました。2008年からは健康保険が適応になり、厚生労働省が定める施設基準を満たした歯科医療機関(全体の1割ほど)で、健康保険でGTR法がおこなえるようになりました。

条件が良ければ骨をかなり再生させることが可能ですが、適応症が限られること、手術がリグロス、エムドゲインに比べると難しいという欠点があるため、2000年代後半からは使用される機会が減りました。

コーケンティッシュガイド GTRメンブレン(いくつかのメーカーから販売)

当クリニックは厚生労働省が定める「歯周組織再生誘導手術」(GTR法)の施設基準を満たしており、当クリニックでのGTR法は健康保険が適応になります。また、ゴアテックス認定歯科医師が在籍しています。


治療方法
GTR法治療前  GTR法治療中  GTR法治療後

1.治療前
歯周病に歯周病により骨(歯を支える骨)が溶けています。深い歯周ポケット(歯と歯肉との間の溝)があります。

2.治療中
メンブレンという特殊な膜を使用することによって骨の再生を促します。

3.治療後
骨が再生。歯周ポケットも浅くなりました。


再生できる骨の量には限界があるため、グラグラで今にも抜けそうな歯など、極めて重度に進行した歯周病 には、ブルーラジカルP-01、リグロス、エムドゲイン、GTR法は適応になりません。手術が適応になるかは診査及び歯周病の検査を等おこなう必要があります。



※当クリニックへのアクセスについては、下記のページをご覧ください。
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