以前は抜歯した部位にインプラント治療をおこなう場合は、2〜6ヶ月待ってからインプラントの埋入をおこなってきました。そのため、インプラント治療が終了するまでに期間がかかっていました。
抜歯即時インプラントは、歯を抜くのと同時にインプラントを埋入する方法です。これにより、治療期間が短縮できます。
●抜歯即時インプラントの治療方法
歯を抜くのと同時にインプラントを埋入します。インプラント殖立するための骨の量が不足する場合は、骨を足す治療(骨再生誘導法、GBR)を併用します。
インプラント手術
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●使用するインプラント
世界2位のシェアをもつストローマンインプラントを例とすると、特殊に開発されたインプラントが使用されます。抜歯した部分がインプラントで埋まるように、インプラントの上半分が斜めに大きくなっています。また、骨との結合をより安定させるため、ねじ山の間隔が狭められています。
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1.通常のインプラント:上から下までまっすぐです。
2.抜歯即時インプラント:インプラントの上半分が斜めになっています。
●抜歯即時インプラントの利点
治療期間が短縮できます。
抜歯とインプラントの埋入が同時におこなえるので、治療回数を減らすことができます。
骨の削る量を少なくできます。
●抜歯即時インプラントの欠点
適応症例が限られます。歯周病が悪化して膿がでる部位などはインプラントが細菌感染をおこしやすく、抜歯即時インプラントはリスクを伴うため、通常は1〜2ヶ月待ちます。
通常のインプラント埋入手術に比べると、高度な技術が要求されます。
以前は骨がやせるのを防ぐことができると考えられていましたが、最新の研究論文の多くはこれを否定しています。抜歯即時インプラントでも、抜歯に伴い骨がやせていくのを防ぐ
ことはできません。
追加の手術が必要になることがあります。
●抜歯即時インプラントの生存率
抜歯即時インプラントは、通常のインプラント手術と変わらない生存率(インプラントが抜け落ちずに残っていること)となっています。多くの研究論文では、生存率は90〜100%であったと報告されています。
しかしながら、中には90%以下の低い成功率であったという研究報告もあります。成功率が低い原因の多くは「歯周病」が関与していると報告されています。抜歯即時インプラントの失敗理由の67%が歯周病であったという報告もあります。
そのため、歯周病を伴う抜歯即時インプラントは慎重に進める必要があります。
研究論文 | インプラントの種類 | インプラントの本数 | 生存率 |
1 | ブローネマルク | 217本 | 上顎92% 下顎94% |
2 | 97本 | 91% | |
3 | フリアリット2 | 322本 | 90% |
4 | 124本 | 97% | |
5 | ストローマン | 116本 | 100% |
抜歯即時インプラント