●歯を失う原因※1
歯を失う最も大きな原因は歯周病です。7499人を対象におこなった大規模な国内調査によると、歯を失う原因の42%が歯周病、32%が虫歯、12%が破折という結果となりました。
虫歯による抜歯は減少する一方で、歯周病による抜歯は増加しているとされています。
特に40歳以上では、歯を失う原因の50%以上は歯周病となっています。
歯を失う原因
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●インプラント治療のリスク
歯周病の患者さんは、適切な歯周病治療をおこなっていたとしても、歯を支える骨(歯槽骨)はやせていることが多くあります。そのため、インプラントを入れる部位が制限されたり、インプラント治療の際に骨を増やす手術(骨の移植など)が必要になることがあります。
また、歯周病が原因で失った歯と同じようなリスクがインプラントにも存在し、インプラントが歯周病菌に感染しやすい傾向にあります。多くの研究論文において、歯周病の患者さんはインプラントの歯周病である「インプラント周囲炎」を発症しやすいことが指摘されています。
そのため、インプラント治療前に歯周病治療をおこない、インプラント治療後も歯科医院で定期的(3~6ヶ月毎)にメンテナンスをおこなう必要があります。
歯周病の人は、インプラントに炎症がおきやすい傾向にあります
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●インプラント周囲炎の発症率※2‐3
歯周病にかかっている人は、インプラント周囲炎を発症しやすい傾向にあります。
インプラント周囲炎を発症するとインプラント周囲の歯肉から血が出たり、膿が出るようになります。しっかり歯科医院での定期的なメンテナンスをおこなっていれば問題はありませんが、進行するとインプラントを支える骨が溶け、最悪の場合はインプラントが抜け落ちることもあります。
ペンシルバニア大学(アメリカ)の研究グループが149人に対しておこなった調査では、歯周病にかかっている人がインプラント周囲炎を発症する割合が21%だったのに対し、歯周病にかかっていない人はわずか8%でした。
ニューヨーク大学の研究グループが334人、1511本のインプラントを13年にわたっておこなった調査では、歯周病にかかっている人がインプラント周囲炎を発症する割合が25.6%だったのに対し、歯周病にかかっていない人はわずか5.4%でした。
研究によって多少のばらつきがあるものの、インプラント周囲炎の発症率は概ね上記と同様の結果となっています。
インプラント周囲炎の発症率
上記は定期的な歯科医院でのメンテナンスをおこなっていた人の結果です。歯科医院でのメンテナンスをおこなっていない人のインプラント周囲炎発症率は上記よりも高く、症状も悪いと思われます。
●インプラントの生存率※4‐6
歯周病の患者さんのインプラント生存率は、歯周病でない患者さんに比べると低いものの、ほとんどの研究において90%以上となっています。
一例として、イエテボリ大学(世界で最も有名な歯科大学の一つ)の研究グループがおこなった調査では、歯周病の患者さんのインプラントの生存率は92.0%でした。ニューヨーク大学の研究グループがおこなった調査でも、インプラントの生存率は91.8%と高いものでした。
ただし、歯周病の患者さんでも喫煙習慣のある人は、インプラントの生存率が低いものとなっています。
研究者 | インプラント 本数 |
生存率 | 観察期間 | |
歯周病患者 | 非歯周病患者 | |||
イエテボリ大学(スウェーデン) | 192本 | 92% | 96.7% | 5年 |
ベス・イスラエル病院(アメリカ) | 1511本 | 90.6% | 93.7% | ~13年 |
ニューヨーク大学(アメリカ) | 1925本 | 91.8% | 96.3% | 1~16年 |
歯周病患者のインプラント治療