いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療方法の一つとして、生活習慣の改善があります。ちょっとした工夫と日々の努力で、いびきが改善されることもあります。無理のない範囲で、病医院や歯科医院での治療とあわせておこなっていくのがよいでしょう。



●減量
体重が増えて肥満になると、おなか周りだけでなく、のどや舌にも余分な肉がつきます。余分な肉によって気道は狭められ、ときには気道は塞がれて、いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因となります。

肥満がいびきや睡眠時無呼吸症候群の原因となっている場合は、体重の減量をおこなうことが基本治療として重要です。

減量は簡単そうにみえて難しいのが実情です。鼻マスクを使用する方法(CPAP)やスリープスプリントによる治療と併用しながら、あせらずじっくり取り組んでいくのがよいでしょう。また、栄養士、医師、歯科医師と相談しながらおこなうのも一つの方法です。

正常な気道 正常な気道    肥満によって塞がれてしまった気道 肥満によって塞がれた気道


食事療法
食事療法では、カロリーを抑え、脂質や糖質を控えた食事にすることが大切です。睡眠時無呼吸症候群の患者さんの中には、日中の眠気を紛らわせるために間食を多く摂ったり、缶コーヒー(砂糖入り)を1日に何本も飲む人がいますが、病状をさらに悪化させるので注意が必要です。

あくび


運動療法
食事療法と並んで運動療法も大切です。ただし、運動による消費エネルギーはそれほど大きくないため、減量単独では治りません。他の方法と併用します。また、高度の肥満を伴う「肥満低換気症候群」では、運動療法ができないことがあります。

運動療法では、ラジオ体操、散歩、ジョギング、自転車、水泳といった全身の筋肉を使う運動をおこないます。

水泳

※肥満低換気症候群とは
睡眠時無呼吸症候群の患者さんの10%にみられ、高度の肥満(BMI30以上)、昼間の眠気、高炭酸ガス血症(換気が十分におこなえず二酸化炭素が血液中にたまること)を伴います。心不全、血圧上昇、不整脈、腎機能低下、肝機能低下などの症状を伴うことがあり、突然死の原因になることもあります。ピックウイック症候群の同義語。

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●禁煙
喫煙は血液の中の酸素を減らし、のどに炎症を起こし、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させます。喫煙者はいびきの相対危険度が2.29倍、中等度〜重症の睡眠時無呼吸症候群の相対危険度4.44倍になるとされています。

また、タバコの成分であるニコチンには、強い覚醒作用があります。喫煙すると数秒後には覚醒作用が現れて数時間続くため、眠れなくなったり睡眠が浅くなるなど、不眠の原因となります。

煙草

関連するページ  ぐっすり眠る9つの方法  タバコ



●就寝前の禁酒
寝る前に少量でもお酒を飲むと、アルコールによって筋肉が緩んで、のどや舌が落ち込みます。その結果、気道が狭くなり、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状は悪化します。

また、アルコールは眠りを促す作用がある一方で覚醒作用もあるため、一晩全体でみると、睡眠の質は低下します。就寝の少なくとも4時間前からは、お酒は控えるようにしましょう。

寝酒の主な影響
いびきや睡眠中の無呼吸がひどくなる/むずむず脚症候群の症状がひどくなる/眠りが浅くなる/途中で目が覚めやすくなる/早朝に目が覚めやすくなる/体内時計がずれて、起床や就寝のリズムがくずれる/慢性の不眠症になることがある

麦酒

関連するページ  むずむず脚症候群



●睡眠薬などの使用制限
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、日中の強い眠気がある人がいる一方で、不眠、うつなどの症状がある人も多く、睡眠薬、抗うつ薬を服用していることもあります。これらの薬は、お酒と同様にのどや舌の筋肉を緩め、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させます。

日本は他の国に比べて睡眠薬の使用が多く(下図)、睡眠薬はタバコのように依存性があるため、安易に使用することには注意が必要です。服用を中止する場合は、主治医と相談しながらすすめていきます。

睡眠薬

※国際麻薬統制委員会(国連) ベンゾジアゼピン系睡眠薬の服用 DDD/1000人



●睡眠中の体位の工夫
上を向いて寝ると、重力によってのどや舌が落ち込みます。その結果、気道が狭まり、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状は悪化します。横向きに寝ることによって、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状が軽減されます。

横向きに寝るためのグッズも販売されています。簡単な方法としては、テニスボールやゴルフボールをストッキングに入れて背中に巻きつけたり、タオルをつめたリュックサックを背負って寝る方法もあります。

無呼吸症候群パット 安眠横向き支援帯 健眠くん 横向き支援グッズ



●口呼吸の改善
呼吸は本来鼻でするものですが、口で呼吸をすると気道が狭くなり、いびきや無呼吸の原因になり
ます。口呼吸が原因であれば、防止策として、就寝時に口にテーピングを使用したり、口呼吸を改善する器具(パタカラなど)を使用するとよいでしょう。

パタカラは歯科大学病院・いびき外来でも使用されており、スリープスプリント(マウスピース)との併用で、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状が大幅に改善したとの報告もあります。

鼻呼吸と口呼吸
鼻呼吸(左)に比べると口呼吸(右)は気道を狭め、いびきや 無呼吸の原因となります


パタカラ口呼吸を改善させる器具(パタカラ)  口閉じテープネルネル鼻呼吸を促進させるテープ

関連するページ  口腔筋機能療法器具“パタカラ”  スリープスプリント



●低位舌の改善
舌の先端が上の前歯の根元についていて、舌全体が上あごについていれば問題はありませんが、舌の筋肉が弱く、舌が下に落ちている状態を「低位舌」といいます。低位舌になると、気道が圧迫されて狭くなり、睡眠時無呼吸症候群になりやすくなります。

低位舌は、「あいうべ体操」など舌の体操、「パタカラ」などの器具を使用していくことで改善されます。また、スリープスプリント(マウスピース)による治療で効果がみられない場合は、低位舌を改善することで、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状が改善されます。

関連するページ  低位舌(あいうべ体操)



鼻の通りを良くするグッズの使用
鼻の通りが悪いと、通りの悪い部分に空気抵抗が生じて、いびきが発生します。薬局や通信販売などで販売されているグッズを利用して、鼻の通りをよくするのも一つの方法です。



●いびき防止枕の使用
自分に合った枕を使用することで、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状を軽減させることができます。代表的なものとしては山田朱織枕研究所が開発した「整形外科枕」があります。

いびき防止まくら  整形外科枕

関連するページ  整形外科枕



●サプリメントの使用
アミノ酸「グリシン」は睡眠の質を高める効果があります。別の研究でグリシンを使用したところ、いびきが減少し、目覚めがすっきりするなどの効果があったことが開発のきっかけとなり、2005年に味の素より「グリナ」として販売されました。

通信販売のみの商品ですが、質の良い睡眠を求める人が多く、口コミで人気が広がっています。グリシンは就寝から短時間で深い眠りの「ノンレム睡眠」に導くとされ、日中の疲労感や眠気が軽減する、作業効率が上がるなどの効果があるとされています。

そのほか、トマト酢とGABAを配合させた「グッスミン」(ライオン)も、睡眠の質を高める効果があるとして人気がある商品です。

グリナ グリナ   グッスミン グッスミン

関連するページ  睡眠のメカニズム(レム睡眠とノンレム睡眠)



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