女性の睡眠時無呼吸症候群
患者数  女性は男性に比べると患者数が少ない

女性の睡眠時無呼吸症候群の患者数は、のどや気道の形態、女性ホルモンの影響などから、男性に比べると少なく、全患者に占める女性の割合は30%程度といわれています。

睡眠  やせていても、小顔の女性は鼾をかきやすい傾向にあります



年齢
  女性は閉経以降に急増する


女性の睡眠時無呼吸症候群患者で最も多いのは50~60歳代です。男性に比べると30~40歳代の割合が少なく、50歳以上の割合が多い傾向があります。当クリニックに来院される患者様においても、同様の傾向がみられます。

30~40歳代の割合が男性に比べて少ないのは、呼吸を促す作用のある女性ホルモン「プロゲステロン」が関与しているためとされています。閉経後は女性ホルモン「プロゲステロン」が激減するため、女性の睡眠時無呼吸症候群患者が急増すると考えられています。


いびき・睡眠時無呼吸症候群患者の年齢
当クリニックにいびき・睡眠時無呼吸症候群治療を目的として来院された患者様(5000人)の年齢

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受診率
  女性は男性に比べると受診しない傾向にある

女性の睡眠時無呼吸症候群の特徴として、受診率の低さがあげられます。患者数に比べると、治療を目的として受診する人が少ないのです。

これは、夫のほうが先に寝てしまうことが多いこと、一人暮らしの女性が増えているなど、気付きにくいことが原因としてあげられます。また、いびきは「肥満」、「男性」というイメージが未だに強く、受診をためらう人が多いのも原因の一つです。

当クリニックにいびき・睡眠時無呼吸症候群の治療を目的として来院された5000人の患者様のうち、女性の占める割合はわずか25%にとどま
っています。千葉大学がおこなった1657人を対象におこなった大規模な調査でも、女性の受診者はわずか18%となっています。※1


来院者の性別
当クリニックにいびき・睡眠時無呼吸症候群治療を目的として来院された患者様(5000人)の性別



症状  男性に比べると症状が軽い傾向がある

女性のほうが男性に比べると症状が軽い傾向がみられます。

同じ身長と体重では、女性のほうが男性よりも無呼吸や低呼吸の頻度が低い傾向がみられます。また、同じ程度の肥満があっても、女性のほうが男性よりも睡眠時無呼吸症候群の程度は弱い傾向がみられます。

これは、のどや気道の形態、女性ホルモンの関与のほか、男性は睡眠時無呼吸症候群に影響する上半身肥満が多いのに対し、女性は下半身肥満が多いのも理由の一つとしてあげられます。

お腹 女性は下半身肥満が多い傾向にあります



睡眠時無呼吸症候群と女性ホルモンの変化
※2、3 女性ホルモンが無呼吸に関与

閉経後の女性は閉経前の女性に比べると、同じ年齢、体重であれば睡眠時無呼吸症候群に3倍もかかりやすくなることが、多くの研究により明らかにされています。これは、前述のとおり女性ホルモン「プロゲステロン」が、睡眠時無呼吸症候群の発症防止に関与しているためです。

アメリカ・ペンシルバニア州立大学が女性1000人、男性741人を対象におこなった大規模な調査では、睡眠時無呼吸症候群の有病率は閉経前の女性が0.6%だったのに対し、閉経後の女性は2.7%にもなりました。

その一方で、閉経後にホルモン補充療法を受けている女性の睡眠時無呼吸症候群の有病率は0.5%となり、閉経前の女性と変わらない有病率となりました。ホルモン補充療法の効果は、エストロゲンよりもプロゲステロン製剤で認められます。


睡眠時無呼吸症候群の有病率
睡眠時無呼吸症候群の有病率



睡眠時無呼吸症候群と妊娠、出産
※4,5etc.  タバコ並みの危険性がある

妊娠時は睡眠の状態が大きく変化します。頻尿により熟睡できなかったり、体重増加によりいびきをかくようになったり、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群を発症したりします。

特に睡眠時無呼吸症候群は注意する必要があります。睡眠時無呼吸症候群にかかっている女性が妊娠すると、妊娠による体重増加により気道は狭くなり、症状は悪化します。母親の睡眠中の無呼吸が胎児の酸素不足をもたらし、流産、切迫早産、発達障害児出産の原因になったとの研究報告も国内外でされています。

スウェーデンの大学病院が502人の女性に対しておこなった大規模な調査では、習慣的にいびきをかいている妊婦が高血圧(妊娠高血圧症候群、妊娠中毒症)を引きおこすリスクは2.03倍、子宮内で胎児が発育不全を引きおこすリスクが3.45倍にもなりました。いびきは、妊婦が喫煙するのと同じようにリスクが高いことが明らかにされました。

特に肥満を原因とする重度の睡眠時無呼吸症候群であれば、妊娠前に減量に取り組むことが大切です。


習慣的にいびきをかく妊婦が高血圧、胎児発育不全を引きおこすリスク(オッズ比)
習慣的にいびきをかく妊婦が高血圧、胎児発育不全を引きおこすリスク


妊娠の時期と睡眠
妊娠初期 睡眠時間は多くなり、眠気や倦怠感がおきます。しばしば居眠りをします。
妊娠中期 安定期は睡眠も正常化しますが、体重の増加に従っていびきや睡眠時無呼吸症候群の症状が悪化します。
妊娠後期 頻尿、心地よい睡眠体位の欠如などにより睡眠中に目覚めることが多く、安眠がとれません。
睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、胃食道逆流症を発症したり、症状が悪化することがあります。

マタニティ 妊娠時は鼾をかきやすい傾向にあります

関連するページ  肥満といびき むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群) 胃食道逆流症



※1 千葉大学でPSG検査(睡眠時無呼吸症候群の検査)をおこなった1657人を対象。 ※2 Young T, Finn L, Austin D, Peterson A. Menopausal status and sleep-disordered breathing in the Wisconsin Sleep Cohort Study. Am J Respir Crit Care Med. 2003 May 1;167(9):1181-1185. Epub 2003 Feb 13. ※3 Bixler EO, Vgontzas AN, Lin HM, Ten Have T, Rein J, Vela-Bueno A, Kales A. Prevalence of sleep-disordered breathing in women: effects of gender. Am J Respir Crit Care Med. 2001 Mar;163:608-613. ※4 Schoenfeld A, Ovadia Y, Neri A, Freedman S.Obstructive sleep apnea (OSA)-implications in maternal fetal medicine.A hypothesis. Med Hypotheses 1989;30(1):51–54. ※5 Karl A. Franklin,Per Ake Holmgren,Fredrik Jonsson,Nils Poromaa,Hans Stenlund, Eva Svanborg Snoring, Pregnancy-Induced Hypertension, and Growth Retardation of the Fetus Chest. 117(1):137-141, 2000.



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