●早産、低出生体重児とは※1
通常、妊娠37〜41週で出産しますが、妊娠37週未満での出産を「早産」といいます。また、生まれたときの体重が2500g以下の赤ちゃんを「低出生体重児」といいます。
日本では、医療技術の発達や高齢出産の増加などにより、低出生体重児の割合が年々高くなっています。1980年代は5%台であった全出生児に占める低出生体重児の割合は、2012年には9.6%まで増えています。
低出生体重児は、生まれてからの1〜3ヶ月間の入院が必要となることが多く、また長期にわたる障害(神経発達、呼吸器、行動的問題)の原因となることもあります。
全出生数中の低出生体重児の割合※1
低出生体重児の割合は、年々増加しています
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●歯周病と妊娠※2、3、4
歯周病にかかると、赤ちゃんが十分に成長していないにもかかわらず、出産してしまうことがあります。
このことは、1996年にアメリカ・ノースカロライナ大学の研究者によって世界で初めて報告されました。この研究では、妊婦の歯周病が進むと早産により低出生体重児が生まれるリスクが7.5倍(オッズ比)にも高まるという結果となりました。
喫煙、飲酒、年齢(17歳以下、35歳以上)によっても早産をおこすリスクが高まりますが、歯周病はこれらよりも早産により低出生体重児が生まれるリスクが高いという結果となりました。
アメリカ・アラバマ大学の研究グループが2001年に1311人の妊婦に対しておこなった調査では、歯周病の妊婦が32週未満で出産するリスクは7.07倍(オッズ比)にもなりました。
その後、世界で同様の研究結果が相次いで報告され、日本では2003年に鹿児島大学の研究グループにより初めて報告されました。
一方で、歯周病と早産との関連はないとの研究報告も一部であります。この研究報告の多くは白人を対象としたものとなっており、歯周病と早産との関連には人種、民族も関連しているのではないかと考えられています。
低出生体重児が生まれるリスク(オッズ比)※2
健康な妊婦と比較した歯周病の妊婦が早産をおこすリスク(オッズ比)※3
歯周病と低体重児出生は関連があります
●歯周病にかかると早産がおきる理由
歯科医院で歯石の除去などの歯周病の治療や予防をおこなっていなかったり、つわりや食生活の乱れなどによって口の中が汚れると、歯周病菌は繁殖します。歯周病菌が増えると、免疫反応の一つとして血管内に炎症性物質(IL-1、TNF-αなど)が多く出されます。
炎症性物質は出産に関わる物質と共通のものが多く、歯周病によって妊婦の体内でこれらの炎症性物質が多くなると、出産の合図となります。間違った合図によって、子宮の筋肉は収縮して早産、低出生体重児につながると考えられています。
また、口の中の歯周病菌が血管内に入り、出産に関する器官が感染して、胎児の発育不全を引き起こすとも考えられています。
歯周病と早産
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●早産の予防方法※5、6
早産の予防のために、歯周病の治療や予防は大切です。毎日の歯みがきはもちろんのこと、歯科医院で歯周病の治療を受けたり、定期的に歯のクリーニング(PMTC)をおこなうなどして、歯石や日常の歯みがきでは取りきれない汚れを除去してもらうことは大切です。
歯周病治療によって早産が減ったという研究報告は、2002年に南アメリカ・チリの研究者によって初めて明らかにされました。この研究では、妊娠中に歯周病治療を受けなかった妊婦の早産及び低出生体重児が出産する割合が10.11%だったのに対し、妊娠中に歯周病治療を受けた妊婦が早産及び低出生体重児を出産する割合は1.63%となり、8割も減少しました。
日本でも同様の報告がされています。一例として、熊本県天草市では2007年7月から2008年3月までの間に産婦人科医院を受診した妊婦720人全員に歯みがき指導や歯石の除去などの歯周病予防をおこないました。その結果、極低出生体重児(体重1500g以下)の出生が過去5年間に比べると7割も減少しました。
妊娠中の歯周病治療の有無による早産、低出生体重児の割合※5
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※1 厚生労働省人口動態統計 ※2 Offenbacher S, Katz V, Fertik G, Collins J, Boyd D,
Maynor G, McKaig R, Beck J : Periodontal infection as a possible risk factor
for preterm low birth weight. J Periodontol,67:1103-1113,1996. ※3 Jeffcoat
MK, Geurs NC, Reddy MS, Cliver SP, Goldenerg RL, Hauth JC : Periodontal
infection and preterm birth : results of a prospective study. J Am Dent
Assoc,132:875-880,2001. ※4 Hasegawa K, Furuichi Y, Shimotsu A, Nakamura
M, Yoshinaga M, Kamitomo M, Hatae M,Maruyama I, Izumi Y : Associations
between systemic status, periodontal status, serum cytokine levels and
deliver outcomes in pregnant women with a diagnosis of threatened premature
labor(TPL).J Periodontol,74:1764-1770,2003. ※5 Lopez NJ, Smith PC, Gutierrez
J : Periodontal therapy may reduce the risk of preterm low birth weight
in women with periodontal disease : a randomized controlled trial. J Periodontol,73:911-924,2002. ※6 西日本新聞
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