●歯周病と歯周病菌
歯周病は、主に歯周病菌が悪さをしておきる病気です。他の感染症のように1種類の細菌が悪さをして病気を引きおこすのではなく、歯周病の発症には複数の細菌が関与しています。
口の中には数百種類の細菌がいますが、歯周病に関与している細菌(歯周病菌)は10〜20種類ほどとされています。歯周病にかかると、歯周病菌は時には1000倍以上にも増えるともいわれています。
慢性的な歯周病では、ポルフィノモナス・ジンジバリス、トレポネーマ・デンティコーラ、タンネレラ・フォーサイセンシスの3種類の菌が多くみられます。これらの菌は「レッド・コンプレックス(red
complex)」と呼ばれ最も悪さをします。
進行性の歯周病ではアクチノバチラス・アクチノミセテムコミタンスが、妊娠時の歯周病ではプレボテラ・インターメディアが増加する傾向にあります。
●歯周病菌の栄養源
歯周病菌の主な栄養源は、歯と歯肉の間の溝「歯周ポケット」の歯肉から出てくるアミノ酸を主な栄養源としています。
その他には、唾液の中のアミノ酸、食べ物と共に入ってくるショ糖(砂糖の主成分)、ブドウ糖、果糖を栄養源としているものもあります。
歯周ポケット 歯周ポケット内の歯周病菌
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●歯周病菌の繁殖
歯周病菌は細胞分裂して繁殖していきます。口の中は温かく、湿度があり、栄養源も豊富なため、歯周病菌にとっては繁殖しやすい環境にあります。歯周病が進行して歯と歯肉の間にある溝(歯周ポケット)が深くなると、歯周病菌にとってさらに繁殖しやすい環境となります。
しかしながら、唾液や歯肉からでてくる液(浸出液)には免疫物質が含まれ、細菌どうしの縄張り争い(拮抗作用)もあり、条件が良ければ20分に1回ほど細胞分裂できる歯周病菌でも、実際には4〜5時間に1回程度の細胞分裂となります。
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●代表的な歯周病菌
ポルフィノモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)
強い悪臭を放つ歯周病菌。名前は「歯肉(gingiva)」に由来します。歯肉を構成するコラーゲン組織を分解したり、白血球がもつ細菌を食べる作用や殺菌作用を弱める酵素をもちます。また、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かす毒素(内毒素)をもちます。認知症、心臓病、関節リウマチなど、様々な病気の発症や症状悪化に関与しています。
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プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)
女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンによって発育する歯周病菌。女性ホルモンの分泌が活発な思春期や妊娠時には爆発的に増殖することがあります。歯を支える骨(歯槽骨)を溶かす毒素(内毒素)をもちます。
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アクチノバチラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)
進行性の歯周病によくみられる歯周病菌。最近になって、アグレガチバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)に名称が変わりました。歯を支える骨(歯槽骨)を溶かす毒素(内毒素)をもちます。
トレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola)
歯と歯肉の間の溝(歯周ポケット)が深くなると爆発的に増殖し、歯が全くなくなるまで住み着く歯周病菌。歯周病が進行すると歯肉の中に入り込み、歯周病の症状を急激に悪化させます。
タンネレラ・フォーサイセンシス(Tannerella forsythensis)
名前はアメリカ・フォーサイス歯学研究所(Forsyth Dental Center)のターナー(Tanner)という研究者が報告したことに由来します。歯と歯肉の間の溝(歯周ポケット)に生息します。
※検査(健康保険外)により、ご自身の口の中にいる上記5種類の歯周病菌の量を測定することができます。
●歯周病菌の歯や歯肉に対する作用
歯周ポケットは「歯周病菌の巣」ともいわれ、多くの歯周病菌が住み着いています。そして、歯周病菌が出す毒素によって歯肉が腫れたり、出血したりします。
歯周ポケット深くに入り込んだ歯周病菌は、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かし、歯をグラグラにしたり、歯肉を下げることがあります。最後には歯が抜け落ちます。
歯周病菌の歯や歯肉に対する作用
歯肉の腫れ、出血、痛みをおこす/歯を支える骨(歯槽骨)を溶かす/口臭/歯をグラグラにする/歯肉を下げる/歯をしみやすくする/歯が抜け落ちる
歯周病菌は強烈な悪臭成分「メチルメルカプタン」を大量に産生します
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●歯周病菌の全身に対する作用
歯周病菌は歯や歯肉だけでなく、時には命さえも奪います。歯周病は早産、心臓病、糖尿病、肺炎などの病気にも関与しているとされています。
例えば、歯周病が悪化すると、歯肉の血管が切れて出血しやすくなります。そこから歯周病菌は血管に入り込み、血液を介して心臓まで運ばれます。
心臓まで達した歯周病菌は、血管の内側を狭くしたり、つまらせ、狭心症(きょうしんしょう)や心筋梗塞(しんきんこうそく)などの心臓病をひきおこすことがあるとされています。
歯周病菌の全身に対する作用
早産(低出生体重児)をひきおこす/心臓病(狭心症、心筋梗塞)をひきおこす/糖尿病を悪化させる/骨粗鬆症(こつそしょうしょう)に関与/認知症をひきおこす/バージャー病に関与/肺炎(誤嚥性肺炎)をひきおこす/肥満、高脂血症に関与/皮膚疾患(掌蹠膿疱症)に関与/関節リウマチの発症や症状悪化に関与
歯周病菌は早産、心臓病、糖尿病などに関与しています
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●歯周病菌を繁殖させないために
歯周病の予防処置・治療では、歯のクリーニング(PMTC)などの処置によって歯周病菌を減らしたり、歯周病菌の巣である歯周ポケットを浅くして、歯周病菌が住みにくい環境にしていきます。
歯周病菌を減らす予防処置、治療
毎日のしっかりした歯みがき/正しい食生活/規則正しい生活リズム/きれいな歯並び/ストレスの少ない生活/鼻呼吸/歯のクリーニング/歯石の除去などの治療/全身の病気(糖尿病など)の治療/禁煙/歯周病の手術(フラップ手術、エムドゲイン、GTRなど)
毎日の歯みがきのほか、歯科医院での歯のクリーニングをおこないます
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