歯周病と喫煙
歯周病とタバコ。一見すると何の関係もなさそうですが、喫煙者は非喫煙者よりも歯周病にかかりやすく、重症化しやすい傾向にあります。また、歯周病治療の効果は非喫煙者に比べて25〜50%落ちるとされ、予後が悪く、歯周病により歯を失う確率も高くなります。

タバコを吸う人は、歯周病に対する定期的な予防処置や治療をおこなうことが大切です。



●タバコについて

喫煙はがんの原因の3割を占め、喫煙によって肺がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、喉頭がん、口腔がんなどの危険性が高まります。喫煙によって心筋梗塞、気管支炎、くも膜下出血などの病気や低体重児出産、流産の危険性も高まります。

また、受動喫煙によって、周囲の人のがん、肺炎、気管支炎、乳幼児突然死症候群などの危険も高まります。

日本では12〜13万人、世界では500万人もの人が毎年タバコが原因で死亡し、その数は増え続けています。国内の調査では、20歳よりも前に喫煙を始めると男性は8年、女性は10年も短命になることが明らかにされています。

2018年に厚生労働省が発表した調査結果によると、タバコによる損失は年2.5兆円で、医療費が年1兆6900億円、、これらの病気で必要になった介護費が年2600億円、たばこによる火災などの費用が年1000億円でした。

タバコ 海外のタバコには口腔がんを引きおこすと明記

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●日本人の喫煙率

健康意識の向上、公共場所での禁煙、広告規制、たばこ税の増税などによって、日本人の喫煙率は1966年から低下を続けています。1965年に男性82%、女性15%だった喫煙率は、2018年には男性29%、女性8%にまで減少しています。


喫煙率(2018年、厚生労働省)
   20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上
男性 25% 37% 37% 35% 30% 15%
女性 10% 9% 13% 10% 7% 3%

タバコ タバコ

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●喫煙による歯肉への影響

ニコチンによる血流阻害
タバコに含まれているニコチンは、歯肉の血の流れを悪くします。そのため、歯肉に酸素や栄養が行き渡らず、抵抗力が弱まり、歯周病を進行させます

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一酸化炭素による酸素供給阻害
タバコによって発生する一酸化酸素によって、歯肉に酸素や栄養が行き渡らず、抵抗力が弱まり、歯周病を進行させます。

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ニコチンや一酸化炭素による歯肉の硬化
ニコチンや一酸化炭素によって、歯肉が硬くゴツゴツしてくるために、歯周病が進行していても表面に炎症が現れず、見逃してしまいがちになります。


白血球の活動を抑制
白血球は歯周病菌と戦い、退治する役目を持っているのですが、タバコは白血球の機能を低下させる作用があります。その結果、歯周病菌に対する歯肉の防御機能が低下して、歯周病が悪化しやすくなります。


新しい組織を作る細胞の増殖を抑制
タバコは歯周病の回復に必要な細胞の増殖を妨げる働きがあります。


唾液の減少
唾液はタバコに含まれる有害物質を中和したり、歯周病菌の増殖を抑える働きがあります。タバコによって唾液が減少すると歯周病が悪化しやすくなります。

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免疫力の低下
タバコの中の有害物質により免疫力は衰え、炎症症状がでないまま歯周病が進行していくために、気付いた時には重度の歯周病になっていることが多くあります。また、免疫力の低下により、治療しても症状が改善しにくくなります。


歯肉の変色
タバコを吸うことにより歯肉にメラニン色素が沈着し、ピンク色の健康的な色から黒ずんだものにします。

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●歯周病と喫煙※3

下記はアメリカで12329人に対して8年間にわたっておこなわれた、過去に例をみない大規模、かつ信頼性の高い調査の結果です。歯周病と喫煙の関係が詳細に分析されました。


歯周病と喫煙の有無
中等度以上の歯周病の人は喫煙者で15.6%、過去喫煙者(過去にタバコを吸っていた人)は10.5%、非喫煙者4.9%でした。
同じ年齢や性別、同じような生活環境であっても、喫煙者は非喫煙者に比べて3.97倍(オッズ比)も歯周病になるリスクが高いという結果となりました。

歯周病と喫煙の有無(%)


タバコが原因で発症する歯周病の割合
歯周病にかかっている人の42%が現在吸っているタバコが原因で、11%の人が以前に吸っていたタバコが原因で歯周病になりました。

タバコが原因で発症する歯周病の割合


タバコの本数と歯周病のリスク
1日あたりのタバコの本数が多いほど、歯周病のリスクは高まります。非喫煙者と比較すると、1日に9本以下の喫煙者のリスクは2.96倍(オッズ比)なのに対し、1日31本以上の喫煙者のリスクは5.88倍(オッズ比)まで高まります。

タバコの本数と歯周病のリスク(オッズ比)


禁煙後の歯周病のリスク
禁煙をおこなうと歯周病のリスクは徐々に低下します。歯周病のリスクは、禁煙後0〜2年は3.22倍(オッズ比)ですが、11年後には1.15倍(オッズ比)まで低下します。禁煙をしても10年は歯周病のリスクは高いので注意が必要です。

喫煙後の歯周病のリスク(オッズ比)



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