●認知症とは※1

「認知症」とは、物忘れ、日付を間違えたり、場所や人を覚えられなくなったりするなどの症状をもつ脳の病気です。

超高齢化社会となり、認知症高齢者は急増しています。厚生労働省の調査によると、認知症高齢者は2012年は462万人、2025年には700万人以上になるとされています。

高齢者の15%が認知症、4人に1人は認知症とその予備軍(軽度認知障害、MCI)とされています。年齢が上がるにつれて認知症の高齢者は増加し、85歳以上の40%以上が認知症となっています。

認知症高齢者462万人 歯周病で症状悪化 歯周病で認知症の症状悪化

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●認知症の種類

認知症で最も多いのがアルツハイマー型認知症で、認知症全体の半数以上を占めます。次いでレビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症となっています。

脳血管性認知症の割合は、治療や予防方法の進歩によって減少傾向にありますが、アルツハイマー型認知症は増加傾向にあります。


アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病) 認知症の50〜60%
脳の細胞が減っていき、記憶障害、学習障害などがおきる認知症。やたら食べたり、食べ物に無関心にり食べなくなったりします。

少しずつ症状は進行していき、重度になると食べることや着替えができなくなり、最終的には寝たきりとなります。原因は解明されていませんが、加齢、遺伝、環境、生活習慣が要因になっているとされています。


レビー小体型認知症 認知症の15〜20%
横浜市立大学の教授が1976年に発見した認知症。よだれがたくさん出たり、飲み込み障害(嚥下障害)がおきます。

症状の変動が大きく、運動障害(手のふるえ、動作が遅くなる他)、幻視、睡眠障害(レム睡眠行動障害)などの症状があらわれます。

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脳血管性認知症 認知症の15〜20%
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)によってあらわれる認知症。脳の血管がつまったり、破れたりして、その部分の脳の働きが悪くなることによっておきます。歯周病が進行し、歯肉の炎症がおきやすくなります。

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前頭側頭型認知症 認知症の5%
人格障害(怒りっぽくなる他)、食行動の異常(同じものしか食べない他)、食べ物の無関心、言語障害(失語)があらわれる認知症。他の認知症とは異なり、初期には記憶が保たれているため、気付かないこともあります。


その他 認知症の5%以下
脳腫瘍、シェーグレン症候群、ベーチェット病、慢性腎臓病(透析脳症)などの病気も認知症の原因となることがあります。

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歯周病と認知症

2017年に九州大学の研究グループは、歯周病菌(Porphyromonas gingivalis)が出す毒素「ジンジパイン」が脳の炎症を引きおこし、アルツハイマー型認知症の症状悪化に関与していることを発見しました。

アルツハイマー病は発症25年前からアミロイドβ(脳細胞を傷つけてしまう物質)の蓄積が始まり、発症15年前から脳(海馬)の体積減少し、軽いもの忘れが始まるとされています。認知機能の低下が進み、発症5年後には要介護になるとされています。

若い時期からの歯周病の予防や治療がジンジパインが作られるのを抑え、アルツハイマ―型認知症の発症予防や症状悪化を防ぐ可能性があることが示されました。アメリカではジンジパイン阻害薬が開発され、2021年に臨床試験を終える予定で、新たな認知症治療薬として期待されています。

歯周病とアルツハイマー病 歯周病と認知症の関係

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●歯の本数と認知症の関係※2、3、4

歯周病の予防や治療をおこなうことは、認知症を予防することにもつながります。歯の本数の多い人ほど認知症になりにくい傾向にあります。

名古屋大学の研究グループがおこなった調査では、70歳後半の健康な高齢者の歯の本数は平均9本だったのに対し、脳血管性認知症患者の歯の本数は平均6本、アルツハイマー型認知症患者の歯の本数は平均3本でした。かむことが脳を活性化させ、認知症を防ぐと考えられています。

また、同時に頭部をCT(コンピュータ断層撮影)で撮影してその画像を調べてみると、残っている歯の本数が少ない人ほど記憶や学習能力に関わる海馬や、意志や思考に関わる前頭葉が小さくなっていること、歯周病がアルツハイマー型認知症の症状を悪化させることが明らかにされました。


歯の本数と認知症の関係※2
歯の本数と認知症との関係


歯を失うと認知症になりやすい傾向にあります。疫学調査では、歯を失うとアルツハイマー型認知症は2.89倍、脳血管性認知症は1.44倍も認知症になりやすいことが明らかにされました。


認知症のなりやすさ(オッズ比)※3
認知症のなりやすさ

歯のない人 認知症1.9倍 歯のない人は認知症1.9倍

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●認知症の予防のために

歯周病は歯を失う最大の原因ですが、歯の本数が少ないほど、認知症になりやすい傾向にあります。また、歯周病は認知症最大の要因であるアルツハイマー型認知症を悪化させるとされています。

毎日のしっかり歯をみがくだけでなく、定期的に歯科医院で歯のクリーニング(歯の清掃)等をおこなうことにより、歯周病の予防や治療とも大切です。

歯ブラシ 毎日しっかり歯をみがくだけでなく、定期的に歯のクリーニングをおこないます

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●認知症と診断されたときは

認知症の症状が進むと、口を開くことを拒むなどして、治療が難しくなることがあります。認知症と診断されたら早めに受診して、必要があれば歯科治療をおこなうことが大切となります。

また、歯科医師や歯科衛生士による専門的な口腔ケア(歯の清掃)をおこなうことは、認知症の症状の進行抑制に効果があることが研究報告されています。定期的に口腔ケアをおこなうことが大切となります。

歯科治療や口腔ケアは歯科医院での通院が困難であれば、訪問歯科診療として自宅や施設(介護老人保健施設、老人ホームなど)でおこなうことができます。

訪問歯科 口腔ケアは様々な効果があります

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※1 厚生労働省研究班(代表者・朝田隆筑波大教授)調査  ※2 河野和彦 口腔と全身の健康との関係U アルツハイマー型痴呆症への対応は歯科と医科の共同作業、8020推進財団  ※3 重富俊雄、口腔と全身の健康との関係U 臼歯喪失は学習記憶能力に影響を与える、8020推進財団  ※4 石田直之、加藤佳子、磯田竜太朗、多田浩之、石田和人、石原裕一、道川誠、野口俊英、松下健二 アルツハイマー病と歯周病との関連性に関する研究 第56回春季日本歯周病学会学術大会


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