●ベーチェット病とは

ベーチェット病とは、口内炎、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍の4つを主な症状とする慢性の全身性の病気です。症状の消失と再発を繰り返します。病名はトルコのイスタンブール大学皮膚科、フルス・ベーチェット(Hulsi Behcet)教授が、1932年に報告したことに由来します。

アフタ性口内炎 口内炎(頬の粘膜)

当クリニックはベーチェット病を含む特定医療費(指定難病)助成制度の指定医療機関です。

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ベーチェット病の患者像

シルクロード病ともいわれ、地中海沿岸、中東、中国、韓国、日本で多くみられます。日本では北日本に多く、国内患者数は2万人以上とされています。

男女差はなく、発症年齢は10〜40歳代で、30歳代が最も多い傾向があります。

ベーチェット病の世界分布 ベーチェット病の世界分布

推定有病率を面積で相対的に示した  推定有病率が10万人当たり1人未満の地域
有病率は不明であるが、発症がまれである地域   ×これまでに発症の報告なし



●原因

病気の原因は不明ですが、白血球の型であるHLA−B51、HLA−A26をもつ患者さんが多いことから、遺伝的な要因に口内の細菌、公害や化学物質などの環境因子、ストレスが加わり、白血球の機能が過剰となって炎症をおこすと考えられています。



症状

口内炎、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍の4つの主症状のほか、関節炎、消化器や血管の異常、認知症などの副症状があります。

一度に3つ、4つの症状がそろって出るわけでなく、最初は1つの症状のみが多い傾向にあります。最初の症状は口内炎が多く、副症状はベーチェット病を発症してから数年後に出現することが多い傾向にあります。


1)口内炎
歯肉、舌、頬の粘膜などに口内炎ができます。痛みを伴い、再発を繰り返します。ほぼ100%の患者さんにみられます。

2)皮膚症状
にきびのような発疹が顔、胸などにできます。皮膚が過敏になり、ヒゲそり後に顔が真っ赤に腫れることもあります。ひざから足にかけてが赤く腫れることもあります。

3)眼症状
ベーチェット病は、ぶどう膜炎をおこす代表的な病気の一つです。目が充血したり、痛んだり、視力が低下したりします。

4)外陰部潰瘍
男性では陰茎から陰嚢、女性では外陰部から膣内がただれることがあります。

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診断方法

ベーチェット病を診断するための特別な検査はなく、口内炎を主とする病気のため、歯科医院で見つかることもあります。診断は、厚生労働省の診断基準をもとにおこないます。

4つの主症状全てがそろったものを「完全型ベーチェット病」、主症状2つ、副症状2つ、もしくは主症状1つと眼症状、副症状2つと眼症状があるものを「不全型ベーチェット病」といいます。

臓器病変が主体である場合は、症状に応じて血管型、神経型、腸管型に分類され、「特殊病型ベーチェット病」と総称されます。

ベーチェット病の診断ベーチェット病の診断



治療

皮膚病変には、ステロイド薬が使用されます。症状が強い場合や臓器の病気を合併する場合は、炎症を抑えるために免疫抑制薬が使用されます。十分な休養とバランスのとれた食事、禁煙も大切です。

主症状は良くなったり悪くなったりを繰り返しますが、10年ほどたつと症状は改善されて症状がなくなったり、軽度の口内炎のみになったりすることが多い傾向にあります。予後は良好といえます。

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●ベーチェット病と歯科

ベーチェット病の症状、薬の副作用は、口内炎ができやすい、虫歯が多い、歯肉が腫れやすいなど、歯と口の健康に大きな影響を及ぼします。


1)口内炎
口内炎の治療では、ステロイド軟膏、漢方薬、うがい薬の使用のほか、毎日の歯みがきをしっかりおこなったり、歯科医院で定期的に歯のクリーニング(PMTC)をおこなうことによって、口内を清潔にしていきます。

クリーニング前 クリーニング後 歯のクリーニング前(左)と後(右)

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2)虫歯

ベーチェット病の患者さんは、虫歯の既往が多く、口内の衛生状態が悪い人が多く、抜歯後や歯科治療にベーチェット病の症状が悪化したという報告や歯周病との関連が考えられています。

また、口内の細菌である「ストレプトコッカス サンギス(Streptococcus sanguis)」に対する過敏反応が、発症原因の一つと考えられています。そのため、虫歯の治療をおこなうのはもちろんのこと、口内を清潔に保つことも重要となります。

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3)歯肉増殖
ベーチェット病の治療で使用される免疫抑制薬(シクロスポリン)は、歯肉を増殖(かなり腫れます)させることがあり、その発症率は25〜30%とされています。口内を清潔に保つことが歯肉増殖の予防になり、増殖してしまった歯肉に対しては、歯のクリーニング、歯肉切除手術などをおこないます。


4)口腔カンジダ症
ステロイド薬や免疫抑制薬の影響により、口内にカビが繁殖する病気「口腔カンジダ症」を発症しやすくなります。カンジダが繁殖すると、口の中がヒリヒリ痛む、食べ物を口にしたときに痛む(接触痛)、食べ物の味を感じにくい(味覚障害)などの症状があらわれます。薬の使用により治療をおこないます。

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5)抜歯、歯周外科手術、インプラント手術
ステロイド薬や免疫抑制薬の影響により、抜歯、手術後に感染しやすかったり、傷の治りが遅い傾向があります。そのため、十分な感染予防などの処置が必要となります。

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6)顎骨壊死
ステロイド薬を長期間使用していると骨折のリスクが高まるため、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の薬を使用することがあります。

骨粗鬆症の薬を使用しているときに抜歯などの出血を伴う治療をおこなったり、合わない入れ歯を使用していたり、口内が汚れていると、あごの骨が細菌に感染し、腐ってしまう病気「顎骨壊死(がっこつえし)」をおこすことがあります。

薬

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当クリニックでは、ベーチェット病の方の歯科治療をおこなっています。ベーチェット病の方の歯とお口の健康、歯科治療について、ご不明な点等がありましたら、お気軽にご相談ください。



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