●オッセオインテグレーションとは
あごの骨の中に埋入されたインプラントは、骨とくっつくことにより機能していきます。これを「オッセオインテグレーション(Osseointegration)」(下図)といいます。骨を表すラテン語のオス(os)と、結合を表す英語のインテグレーション(integration)が組み合わされてできた言葉です。
オッセオインテグレーションは、インプラントを骨に入れてからすぐに得られるものではなく、おおよそ2〜4週間後に始まり、3ヶ月後に安定してきます。現在では、インプラントの加工技術が発達して、より早く結合できるようになったため、インプラントと骨がくっつくまでの期間は、早まってきています。
インプラントと骨との結合
●インプラントの表面
同じように見えるインプラントの表面ですが、この表面性状がインプラントと骨との結合具合や結合の早さ、治療成績を左右します。そのため、インプラントの種類によって表面性状が異なり、各メーカーが研究を競い合っています。
1.機械研磨表面(マシーンサーフェス)と粗造表面(ラフサーフェス)
以前は、インプラント表面をザラザラにすると、細菌の温床となり、インプラントがダメになると考えられていました。そのため、細菌がインプラントにつかないように、インプラント表面を機械で磨いてツルツルにしていました(機械研磨鏡面)。
その後、1970年代になるとストローマンインプラントにより、表面をわざとザラザラにさせたインプラントが開発されました(粗造表面)。粗造表面がインプラントと骨との結合がよく、細菌に対しても問題がないことがわかると、他メーカーのインプラントも追随するようになりました。
世界最大手のブローネマルクインプラントも、2000年にはインプラント表面を機械研磨表面から粗造表面に変えました。機械研磨表面をもつインプラントは、現在ではほぼなくなりました。
機械研磨表面(上)と粗造表面(下)の結合力
RFA(平均値)-Hz
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2.チタンとハイドロキシアパタイト
インプラントの表面は、チタンのものとチタン表面にハイドロキシアパタイトをつけたものがあります。ほとんどのインプラントの表面はチタンですが、一部のインプラントはチタン表面にハイドロキシアパタイトをくっつけています。
チタン表面にハイドロキシアパタイトをつけたものは、骨とのなじみがよく、インプラントと骨がより早くくっつくという利点があります。そのため、骨の条件が悪い人に向いているとされ、日本人に向いているという意見もあります。
その反面、長期的にはハイドロキシアパタイトがチタン表面から剥がれてくる、細菌に対して弱いという意見もあります。日本以外ではあまり使用されていません。
ハイドロキシアパタイトを使用したインプラント
AQB(エーキュービー)インプラント /POI EX(ピーオーアイイーエックス)インプラント/プラントンインプラント/スクリューベントインプラント/スプラインインプラント
チタン表面にハイドロキシアパタイトをつけます
ハイドロキシアパタイトを使用したインプラントの表面
※ハイドロキシアパタイトとは
歯や骨を構成する物質で、歯の表面「エナメル質」の97%、歯の内面「象牙質」の70%はハイドロキシアパタイトでできています。
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3.代表的なインプラントの表面構造
SLA(エスエルエー)
世界シェア1位・ストローマンインプラントに使用されている表面構造。骨と結合しやすい構造となっているため、他のインプラントに比べると治癒期間が短く、2ヶ月ほどで骨と結合します。
SLActive(エスエルアクティブ)
SLAに代わるものとして開発された、ストローマンインプラントの表面構造。欧米を中心に2005年から使用され、高い実績をあげています。日本では2014年から使用が始まりました。骨とのなじみが極めてよく、1ヶ月ほどで骨と結合します。
SLA SLActive
ZLA(ゼットエルエー)
ストローマンインプラントのジルコニアインプラント(セラミックインプラント)の表面構造。セラミックでできていますが、表面構造はSLAに似ています。
関連するページ ジルコニアインプラント
TiUnite(タイユナイト)
ブローネマルクインプラント、リプレイスセレプトインプラントの表面構造。機械研磨に代わるものとして開発され、2000年から使用されています。
TiUltra(タイウルトラ)
Tiuniteに代わる表面構造として、日本では2020年から使用が始まったブローネマルクインプラントの表面構造。
ZLA TiUnite
TiOblast(タイオブラスト)
アストラテックインプラントに長く使用されていた表面構造。
OsseoSpeed(オッセオスピード)
タイオブラストに代わるものとして開発された、アストラテックインプラントの表面構造。欧米を中心に2007年から使用され高い実績をあげています。日本では2011年に使用が始まりました。表面にフッ素が配合されているのが特徴です。
OSSEOTITE(オッセオタイト)
3i(スリーアイ)インプラントの表面構造。
TiOblast OsseoSpeed OSSEOTITE
●光機能化技術(光機能化インプラント)
インプラント治療では、一般に製造直後のインプラントを使用することはなく、製造されてから数ヶ月後、あるいは半年後、1年後のインプラントを治療に使用しています。これまでは、製造時期は問題ないとされていました。
ところが、インプラントが骨と結合する能力は、製造直後が最も高く、製造後1ヶ月もたつと半分以下の能力しかもたないことが、2009年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の小川隆広教授により、世界で初めて明らかにされました。
また、特定の波長・強度をもつ複数の紫外線を一定時間照射すると、インプラントが骨と結合する能力は再び高まるとことが明らかにされました。※1
この技術は2011年に実用化、製品化され、歯科医院で紫外線を使用したインプラント治療が始まりました。これまで成功率の低かった難症例において、成功率が上がることが期待されています。
インプラントを再生させる装置(セラビーム アフィニー)
※1 Aita H, Hori N, Takeuchi M, Suzuki T, Yamada M, Anpo M, Ogawa T. The
effect of ultraviolet functionalization of titanium on integration with
bone. Biomaterials. 30(6):1015-25. 2009
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