●ラテックスアレルギーとは
ラテックスとは、ゴムの木の樹液のことをいいます。生産の7割はマレーシア、インドネシア、タイで採取され、採取された樹液は天然ゴムの原料として、様々な製品に使用されています。
ラテックスは250種類以上ものタンパク質を含み、成分は製品に残留することがあります。ラテックスアレルギーは、これらの一部タンパク質(14種類が原因として登録、Hev b1〜14)と皮膚が反応しておきるアレルギーで、製品に接触してから30分以内に症状があらわれます。
パウダー付きゴム手袋(ラテックスグローブ)では、手袋の着脱時に空中に浮遊したパウダーを吸い込むことでも症状があらわれます。
ラテックスアレルギーの症状としては、ラテックスに触れた部位の腫れ、発赤のほか、じん麻疹、かゆみ、喘息発作、アナフィラキシーショック(血圧低下、意識不明など)があります。
ゴムの幹に溝を掘り、出てくる樹液を採取します
関連するページ アレルギーとは(T〜W型アレルギーについて)
●ラテックスアレルギーの歴史
ラテックスアレルギーは、1927年に世界で初めて報告されました。このときの報告は、歯科治療使用するゴム製治療器具との接触によるじん麻疹、のどの腫れでした。
その後、1972年に即時型(T型アレルギー)であることが証明され、1989年にラテックス・フルーツ症候群が初めて報告されました。
1991年にはアメリカ食品医薬局(日本の厚生労働省に相当する機関)から、ラテックスアレルギーによりショック死をおこすことがあるとの注意喚起がなされました。また、1992年までに15人が死亡、1000例以上のアナフィラキシーショックの症例報告がされました。日本では、1992年に初めてラテックスアレルギーが報告されました。
1980年代以降に、エイズ、ウイルス性肝炎、院内感染などの関心が高まり、医療従事者がゴム手袋を着用するようになってから、ラテックスアレルギーをもつ人は増加しています。
●ラテックスアレルギーになりやすい人
医師、歯科医師、看護師、歯科衛生士などの医療従事者は、ゴム手袋(ラテックスグローブ)を使用する機会が多く、ラテックスアレルギーになりやすいとされています。
一方で、ラテックスアレルギーだと思っている医療従事者の多くは、ラテックスアレルギーではなく、製造工程で使用される加硫
※1促進剤による接触性皮膚炎など、他の原因とされています。
ラテックスアレルギーは即時型(T型アレルギー)で、30分以内に症状があらわれるのに対し、加硫促進剤によるアレルギーは遅延型(W型アレルギー、接触性皮膚炎)で、接触してから1〜2日後に症状があらわれます。
アトピー体質やアレルギーがある人、天然ゴム製造に関わる人、二分脊椎症の患者さん、食物アレルギー(口腔アレルギー症候群)の患者さんもラテックスアレルギーになりやすいとされています。
医療従事者の治療用ゴム手袋の種類
ゴム手袋の素材 |
アレルギーの原因物質 |
パウダー |
ラテックス |
加硫促進剤 |
天然ゴム |
パウダー付き |
あり |
パウダーなし |
なし |
あり |
合成ゴム |
ポリイソプレン系 |
なし |
あり |
ポリクロロプレン系 |
なし |
※医療従事者が使用するパウダー付きゴム手袋は、2018年末で製造、販売が中止されます。
医療従事者の手荒れの原因
※2013年日本手術看護学会アンセルブースアンケート調査
ラテックスアレルギーになりやすい人
医師/歯科医師/看護師/歯科衛生士/歯科助手/手術室スタッフ
二分脊椎症の患者さん/何度も手術をおこなっている小児/アレルギー性気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎の患者さん/天然ゴム製造従事者(他の項目よりは頻度が低い)/食物アレルギーの患者さん(特にバナナ、アボガド、栗、キウイ) ほか
※1 加硫とは、ゴム系の原材料を加工する際に、伸びを大きくするために硫黄などを加えることをいいます。
関連するページ 口腔アレルギー症候群
●
パウダー付き医療用ゴム手袋
医療従事者が使用するパウダー付きゴム手袋(ラテックスグローブ)では、手袋の着脱時に空中に浮遊したパウダーを吸い込むことでも症状があらわれます。また、患者さんがラテックスアレルギーだけでなく、パウダーによって炎症がおきることがあります。
ドイツ、イギリスでは、2000年頃には医療機関でのパウダー付きゴム手袋は使用禁止、2016年にはアメリカでも使用禁止となり、
日本では2018年末までにパウダー付きゴム手袋の製造、販売が中止されます。
パウダー付きゴム手袋の使用制限により、医療従事者のラテックスアレルギーは減少する可能性があります。
手術用ゴム手袋の市場(日本、2016年)
※日本グローブ工業会
●
ラテックスアレルギーと食品
ラテックスアレルギーの人の3〜5割は、バナナ、アボガド、栗、キウイといった食品を摂取した際に、アレルギー反応(即時型)を経験します。この現象は、ラテックス・フルーツ症候群と呼ばれます。
ラッテクスと交差反応をおこしやすい食品
交差頻度 |
食品 |
高い |
バナナ アボガド 栗 キウイ |
中等度 |
セロリ トマト メロン じゃがいも 人参 パパイヤ |
低い |
マンゴー ピーマン 大豆 小麦 ソバ 桃 パッションフルーツ |
アボガドとキウイにアレルギーのある人は、ラテックスにも注意
●歯科治療時に使用されるラテックス
歯科治療で使用されるラテックスの代表的なものは、歯科医師や歯科衛生士が使用するゴム手袋(ラテックスグローブ)、虫歯治療で使用されるラバーダムシートがあります。
歯科治療時のラテックスアレルギーの報告としては、小児が多い傾向にあります。
歯科治療で使用されるラテックス製品
ゴム手袋(ラテックスグローブ)/ラバーダムシート/開口器(バイト・ブロック)/歯間研磨カップ/矯正用ゴム/ガッタパーチャ(歯の根の材料) ほか
ラテックスグローブとラバーダムシート
歯科治療時のラテックスアレルギーの報告例
年齢
性別 |
原因 |
症状 |
既往歴 |
3歳
女児 |
開口器のゴム |
口周囲がかぶれる |
アトピー性皮膚炎
食物アレルギー |
5歳
男児 |
ラバーダムシート |
口唇の腫れ
アナフィラキシーショック |
アトピー性皮膚炎
喘息 |
7歳
男児 |
ラバーダムシート
ゴム手袋 |
口周辺の発赤 目の充血
咳、息苦しさ |
二分脊椎症 |
55歳
女性 |
ゴム手袋 |
舌、頬粘膜の腫れ |
食物アレルギー |
●ラテックスアレルギーの方の歯科治療
ラテックスアレルギーの治療は、現在のところ回避しかありません。診断がつけば症状が進まないように日常生活、医療用具に注意します。完全に除去されれば、ラテックスアレルギーの改善が得られることがあります。
ラテックスアレルギーがある場合は、ニトリル(合成ゴム)製手袋、クロロプロン(合成ゴム)製手袋、ビニール手袋など、ラテックスが含まれない手袋を使用して歯科治療をおこないます。また、ラテックスを含まない器材を使用して治療をおこないます。
明らかなラテックスアレルギーがある方は、アナフィラキシー補助治療剤「エピペン」を常時携帯するようにします。携帯していない場合は、歯科医院で完備していることを確認したうえで治療をおこないます。
ラテックスアレルギーがあると、対応ができないために診察を断られたり、治療に制限が生じることがあります。また、医療従事者が使用するゴム手袋も、使いにくいものになります。ラテックスアレルギーが疑われる場合は、自己診断せずに専門の皮膚科に受診して、ラテックスアレルギーかどうかを診断してもらうことが大切です。
エピペン
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関連するページ 歯科金属アレルギー