筋・筋膜性歯痛とは

顔や首の筋肉が疲労すると筋肉にしこりができ、そこからの痛みが歯やあごの痛みとして感じられることがあります。これを筋・筋膜性歯痛(きん・きんまくせいしつう)といいます。

何もしなくても歯に鈍い痛みがある、重苦しい痛み、うずく痛み、あごが痛むなどの症状があり、痛みは筋肉の活動で増す傾向があります。痛みは軽いことが多いものの、時には強い痛みが生じることもあります。

歯が原因ではない歯の痛み(非歯原生歯痛)の多くは筋・筋膜性歯痛とされ、原因不明の歯痛の78%は頭頸部(頭や首)の筋・筋膜痛を併発しているとされており、頭頸部の筋・筋膜痛の半数以上は歯の痛みをおこすとされています。


筋・筋膜性歯痛の特徴
数本の歯に痛みがあることが多い/片側の奥歯の痛みが多い/軽〜中等度の鈍い痛み/食事のときや食事後に悪化することが多い/入浴やマッサージで楽になることが多い/起床時や夕方に痛みが増すことがある/時に肩こりや頭痛がある

痛み 歯が原因でない歯の痛みの多くが筋・筋膜性歯痛です

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筋・筋膜性歯痛の患者さんの性別、年齢

筋・筋膜性歯痛の患者さんは、性別では女性、年齢は20歳以下は少なく、加齢とともに増加し、50〜60歳代が多い傾向があります。

女性のほうが多いのは、男性に比べて痛みをより強く、何度も、長く訴える傾向にあること、身体感覚が敏感であることなどが原因として考えられています。筋肉や関節の痛みは加齢とともに患者数が増加する傾向にあり、筋・筋膜性歯痛も同様の傾向があります。



筋・筋膜性歯痛の診断を受けるまでの経過

他の非歯原性歯痛と同様に、筋・筋膜性歯痛の患者さんも原因が分からず、診断がつくまでに様々な検査をおこなったり、抜歯や歯の神経除去(抜髄)などの治療を受けています。

ある歯科大学がおこなった調査では、筋・筋膜性歯痛と診断されるまでに3ヶ月以上かかった人が63%、診断前に痛みを治すために歯科治療を受けていた人が52%(歯の根の治療:46%、抜歯:18%)もいました。



筋・筋膜性歯痛の原因

原因はかみ合わせに関与する筋肉を酷使したためにおこります。不安や精神的緊張などのストレスによる神経の緊張が続くことによっておきることがあります。睡眠時の歯ぎしりや、長時間のスマートフォンやパソコンの使用などは、かみ合わせに関与する筋肉を酷使するため、注意が必要となります。

かみ合わせに関する筋肉(咬筋、側頭筋)が多いものの、首や肩の筋肉(胸鎖乳突筋、僧帽筋)が原因であることもあります。

スマートフォン 長時間のスマートフォンの使用は要注意です



筋・筋膜性歯痛の治療

治療は薬物療法、理学療法など、顎関節症(あごの関節の病気)に準じた治療となります。歯が痛くてもかみ合わせの治療をおこなったり、歯を抜いたり、歯の神経を取っても治ることはないため、これらの治療はおこなわないようにします。治療は主に歯科でおこないます。


1)薬物療法
痛みが強い場合は鎮痛薬を服用します。長期投与となることがあり、その場合は体への負担の少ないカロナールなどが使用されます。

緊張した筋肉を緩めるために筋弛緩(きんしかん)薬(テルネリンほか)を使用したり、治りにくいときは抗うつ薬(トリプタノール)や神経障害性疼痛治療薬(リリカほか)が使用されることもあります。

薬 薬の服用により痛みが緩和されることがあります

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2)理学療法
血流をよくするためにストレッチ、マッサージ、温熱療法、姿勢訓練、電気治療、超音波治療、ソフトレーザーなどの治療がおこなわれます。上下の歯を離しておく(TCH)、あごを使いすぎないなど普段から自分で気を付けておくことも大切です。

マッサージは自分自身でもできます。1日2回、朝晩に5〜10分程度おこないます。筋肉は温めた方がよいので、お風呂の中でマッサージをおこなうのも方法です。マッサージ方法については、来院時にお問い合わせください。

痛み 頬の筋肉のマッサージ

関連するページ  顎関節症(がくかんせつしょう)  TCH(歯列接触癖)


3)カウンセリング、認知行動療法
自覚症状のない食いしばりなどにより痛みがある場合は、歯科医師の指導のもとで生活習慣の改善をおこなったり、かみあわせ日記をつけるなどして治していきます。


4)マウスピースの作製
効果はないという意見もありますが、歯ぎしりに対する急性の筋・筋膜性歯痛には効果が得られることがあります。特に朝に症状が強い人には有効です。

マウスピース マウスピース

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5)原因となっている筋肉への麻酔(トリガーポイント注射)
原因と思われる筋肉に局所麻酔をおこないます。痛みを弱める効果がありますが、効果期間が短くあまりおこなわれません。


6)食事
食事では硬い食べ物、特にフランスパン、するめ、ビーフジャーキーなどの繊維質の硬い食べ物の摂取を控えます。強くかんだときに歯がすべり、筋肉にダメージを与えると考えられています。

あごによい、認知症予防によい、身体によいと聞いて、起きている間はずっと1日中ガムをかんでいたために、筋・筋膜性歯痛を発症する人もいます。原因が筋肉痛のため、長時間かまないことも大切です。

フランスパン フランスパン、するめ、ビーフジャーキーは要注意


7)そのほか
運動療法などがおこなわれます。

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