厚生労働省は5〜6年に1回、歯科疾患実態調査という大規模な歯に関する調査をおこなっています。下記の大部分は、厚生労働省が2016年10〜11月に調査をおこない、2017年6月に発表された結果の一部です。ご自身のお口の中の状態と比較するうえで参考になれば幸いです。



虫歯

虫歯の本数(治療済みの歯、失った歯を含める)は、20歳前後の人では平均で3本ですが、30歳前後の人は同7本、40歳前後の人は同12本あります。

齢を重ねると共に虫歯の本数は増加する傾向にありますが、虫歯の本数は5年前、11年前の調査に比べると減少しています。

1人あたりの虫歯の本数  ※親知らずを除くと、永久歯は28本あります。
人あたりの虫歯の本数(平成28年歯科疾患実態調査)
資料:平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省) ※治療済みの歯、失った歯を含める




歯周病

歯周病にかかっている人は、日本人成人の8割もいます。年齢が増すにつれて重症化していき、50〜60歳代の人の半数以上が中等度〜重症の歯周病となります。70歳以上は、歯が全くない人が増えるため、歯周病にかかっている人の割合も減ります。

歯周病の罹患率歯周病の罹患率(平成28年歯科疾患実態調査)
資料:平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省)

※中等度の歯周病:歯周ポケット4−6mm 重症の歯周病:歯周ポケット6mm−



●歯をみがく回数

毎日歯をみがく人が98%、1日2回以上歯をみがく人は77%もいます。一方で、1日1回しか歯をみがかない人は減少を続けています。

歯みがき回数
歯を磨く回数(平成28年歯科疾患実態調査)
資料:平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省)


関連するページ  毎日歯を磨いているのに虫歯や歯周病になってしまう理由



ブリッジ、インプラント、入れ歯

歯を失うと、ブリッジ、インプラント、入れ歯による治療がおこなわれます。一般に失った歯の本数が少ないときはブリッジによる治療が、失った歯が多くなると入れ歯による治療がおこなわれます。

50歳代の4割、60〜70歳代の半数がブリッジを使用し、70〜80歳代の4割が部分入れ歯を使用しています。インプラントを使用している人は、高額な費用がかかることもあり、ほとんどいません。

ブリッジ、インプラント、入れ歯を使用している人の割合
ブリッジ、インプラント、入れ歯(平成28年歯科疾患実態調査)
資料:平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省)

関連するページ  インプラント人口  入れ歯人口



残っている歯の本数

歯は28本、親知らずを含めると28本あります。虫歯や歯周病などで歯を失っていき、60〜64歳では4本、70〜74歳では8本、80〜84歳では13本の歯を失います。

残存歯数
残存歯数(平成28年度歯科疾患実態調査)
資料:平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省)




8020(はちまるにいまる)

8020は、厚生労働省と日本歯科歯科医会がおこなう「80歳になっても20本以上の歯を保とう」という取り組みです。20本以上の歯があると、食生活にほぼ満足することができると言われています。

2016年におこなわれた歯科疾患実態調査では、80歳で20本以上の歯がある人が51.2%と、初めて50%を超えました。1993年におこなわれた同調査では、わずか10.6%でしたので、歯が残っている高齢者は増加しています。

20本以上歯がある人の割合
8020(平成28年度歯科疾患実態調査)
資料:平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省)



歯の本数と医療費

歯は全身の健康にも大きく関与します。北海道歯科医師会が70歳以上の高齢者、レセプト(診療録)16.7万件を対象におこなった調査では、歯が20本以上ある人は、歯が0〜4本の人に比べて医療費が月額14730円も安く済むという結果となりました。

香川県が65歳以上の高齢者、レセプト(診療録)8.1万件を対象におこなった調査では、歯が20本以上ある人は、歯が0〜4本の人に比べて医療費が月額12199円も安く済むという結果(下図)となりました。

歯がたくさん残っている人のほうが健康に過ごせるだけでなく、医療費も安く済んでいるのです。

1カ月の医療費と歯の本数
1ヶ月の医療費と歯の本数
資料:北海道歯科医師会の広報、香川県のホームページ

関連するページ  歯を失うことによる損失



●歯の本数と食べ物のおいしさ

歯があると食事がおいしく感じられます。55〜75歳の人(1518人)におこなった調査では、「食事がとてもおいしい」と感じている人は平均20本の歯が残っていたのに対し、「食事がおいしくない」と感じている人は平均11本しか歯が残っていませんでした。

歯があると、おいしく食事をすることもできます。

食事のおいしさの感じ方と歯の本数
食事のおいしさと歯の本数
資料:「食の満足度および歯科保健行動と現在歯数との関連について」(8020推進財団 指定研究事業報告)




歯の本数と癌のリスク

愛知県がんセンターが、おおよそ5000人の癌患者を含む16000人を対象におこなった調査では、歯の本数の多い人ほど癌になるリスクが低いことがわかりました。

歯が0本の人は歯が21本以上ある人に比べると頭頚部癌(舌癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌)にかかるリスクが3倍、食道癌にかかるリスクは4.4倍も高いという結果となりました。

歯の本数が多くよくかめることは、癌予防にもつながります。

歯の本数と癌になるリスク(歯が21本以上ある人が癌になるリスクを1としたときのオッズ比)
歯の本数と癌になるリスク
資料:第68回日本癌学会学術集会ほか

関連するページ  卑弥呼の歯がいーぜ 〜かむことの大切さについて〜



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