子供は、転んだり、ぶつけたりするなどして、歯を怪我することが少なくありません。歯の怪我をそのままにしておくと、痛みの原因になるだけでなく、乳歯であれば後から生えてくる永久歯にも悪影響を及ぼします。
歯の怪我に気付いたら、早めにかかりつけの歯科医院に受診して治療を受けることが重要となります。
●歯の怪我の発生率
子供の歯の怪我は非常に多く、18歳の20〜30%は経験があり、1/3は永久的な障害を引きおこすほど深刻な状況となっています。世界での歯の外傷の有病率は永久歯列は15%、乳歯列は22%とされ、世界で発生する外傷のなかでは5番目に多い外傷となっています。
●歯の怪我の状態
1)部位
ほとんどは上の前歯4本(中切歯、側切歯、乳中切歯、乳側切歯)です。まれに下の前歯(中切歯、乳中切歯)が受傷します。
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2)年齢、性別
乳歯は1〜4歳が多く、永久歯は7〜9歳、男の子が多い傾向にあります。
3)発生場所、原因
0〜2歳は家庭内、3歳以上では保育園、幼稚園、公園、小学生は学校での休憩時間、中学生は学校での休憩時間と課外活動(スポーツ)、高校生は課外活動(スポーツ)に多い傾向があります。
半数以上が転倒で、次いで転落、衝突が原因となっています。転んだり、椅子や階段から落ちたり、テーブルの角にぶつけるなど、様々な原因で怪我をします。下記は当クリニックに来院されたお子様の一例です。
歯の怪我の原因
つまづいて転んだ/自転車から落ちた/鉄棒から落ちた/友達と激突した/ジャングルジムから落ちた/滑り台から落ちた/ボールが当った/喧嘩/テーブルに衝突/椅子から落ちた/階段から転げ落ちた/浴室で転んだ/転んでおもちゃにあたった ほか
4)怪我の状態
0〜1歳児は怪我の症状が軽いことが多く、年齢が上がるにつれて活発に運動するため、怪我の状況も深刻になる傾向があります。
乳歯はグラグラ(脱臼、動揺)になることが多く、半数を占めます。そのほかには、乳歯が抜け落ちたり、折れたり、歯肉に食い込んだりするなどの症状があります。永久歯にみられる「歯の破折」は、少ない傾向にあります。
永久歯は破折が多く、歯がグラグラになることは少ない傾向があります。
軟組織は口唇が最も多く、半数以上を占めます。そのほかには、上唇小帯(上唇の中央から歯肉に伸びる筋)、舌の怪我が多い傾向にあります。
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●歯の怪我の予防
1)乳幼児
身体機能、精神的機能が十分でなく、頭が重いことがら転倒しやすい傾向にあります。テーブルに衝突、階段から転落、浴室での転倒など、似たような事例が頻発する傾向にあり、保護者の注意が必要となります。
2)小学生
原因の多くは衝突、転倒のため、室内での遊びを減らして、室外での遊びを増やし、運動能力を養うことが大切となります。
また、手を出して自分の体を支えられるようにする、はいはい、ぶらさがりなどの運動、転倒しにくいように歩く、走るといった運動を小さいころからくり返しおこなうことも有効です。歯の矯正治療(特に出っ歯)をおこなうことも予防に有効となります。
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3)中学生、高校生
運動中の歯の怪我が多くなるため、スポーツマウスガードの装着も有効となります。特に野球、サッカー、バスケットボールなどの球技系スポーツ、マウスガードの装着が義務付けられていない競技の発生率が高いので注意が必要となります。
日本スポーツ振興センターの調査によると、2009年〜2018年度に中学校、高校で体育活動中に発生した主なスポーツの障害は下記となっています。
競技 | 野球 | サッカー | バスケットボール | ソフトボール | バレーボール |
全障害 | 450 | 219 | 134 | 91 | 62 |
歯の障害 (%) |
157 (35%) |
33 (15%) |
47 (35%) |
30 (33%) |
23 (37%) |