●進行性下顎頭吸収とは
進行性下顎頭吸収(しんこうせいかがくとうきゅうしゅう、PCR)は、下顎骨の一部である「下顎頭」が失われていく病気です。1990年代後半に概念が示された新しい病気で、下顎頭が失われることで下顎骨の高さが低くなったり、下顎が後方に移動します。
その結果、上顎前突(じょうがくぜんとつ、出っ歯)、開口(かいこう、前歯でかめないかみ合わせ)、顔面の非対称(顔のゆがみ)がおきます。また、前歯でかめないために奥歯に力が集中して、かむと痛みが生じたり、あごの関節に痛みが生じたりします。
発症時期は10歳代が最も多く、合併症状のない10〜20歳代と自己免疫疾患(関節リウマチなど)を合併する50歳代以上の患者さんが多い傾向にあります。性別では女性が圧倒的に多く、男性は1割以下とされています。特発性下顎吸収(ICR)ともいいます。
進行性下顎頭吸収の特徴、症状
10〜20歳代、女性の発症例が多い/病気が知られていないので診断されにくい/原因は不明/下あごが後退してきている/前歯でかめない/うまくかめない/かむと痛みがある/あごの関節に痛みがある
下顎頭(かがくとう)は下顎骨(かがくこつ)の端(赤色の部分)にあります
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●進行性下顎頭吸収の原因
原因は不明ですが、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患、矯正治療、矯正治療時の手術(発生頻度は4.5〜21%)※1、外傷、悪習癖(頬杖、TCH、うつ伏せ寝など)との関連が報告されています。
矯正治療時に発症することが多く、治療時に下顎頭にかかる力が発症の原因と考えられています。初期の進行性下顎頭吸収では発見が難しく、単なる上顎前突、開口と診断されて矯正治療をおこなった結果、症状が悪化することもあります。
大規模な調査では、歯科大学病院が矯正治療の検査をおこなった患者さん(1143人)を調査したところ、1%(11人)が進行性下顎頭吸収と診断されました。矯正治療経験者は0.5%(6人)、顔面外傷の経験者は0.3%(4人)、悪習癖をもつ人は0.9%(10人)でした。
関連するページ TCH(歯列接触癖) 健康保険適応の矯正治療(矯正治療時の手術)
●進行性下顎頭吸収の治療
確立した治療方法はありませんが、かみ合わせを安定させるのがよいとされています。治療は長期間かかることが多い傾向があります。治療は歯科、口腔外科でおこないます。
1)認知行動療法
認知行動療法を応用することにより、頬杖、TCH(歯列接触癖)、日中の食いしばりなどを改善し、下顎頭に対する負担を軽くします。
2)薬物療法
あごの関節に痛みがある場合は、消炎鎮痛薬を服用することによって痛みを軽くします。
3)マウスピースの装着
マウスピース(スプリント)を作製、装着することにより、かみ合わせを安定させていきます。
4)手術
ルフォーT型骨切り術、下顎骨延長術などの手術をおこなことにより症状を安定させていきます。2020年に人工の関節を入れる「顎関節人工関節全置換術」が健康保険適応になりました。
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健康保険適応の矯正治療(ルフォーT型骨切り術) 睡眠時無呼吸症候群の新しい治療(骨延長術)
※1 顎変形症診療ガイドライン(日本口腔外科学会)
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