●感染性心内膜炎(IE)とは
感染性心内膜炎は、心臓が細菌感染して炎症がおきている状態です。致死率が高く、
細菌の侵入経路として口内や歯科治療が多い傾向があります。一般の人の感染性心内膜炎の発症リスクは10万人あたり年7.9人程度となっていますが、
心臓に病気がある人の発症率は高くなります。
一般の人に比べると、人工弁手術後は42倍、感染性心内膜炎をおこしたことがあると94倍、ペースメーカー初回埋め込み後は13倍、ペースメーカーの電池交換後は41倍の感染性心内膜炎の発症率となっています。
心臓に病気がある人の感染性心内膜炎発症率(一般の人を1としたときの発症率)
※感染性心内膜炎の疫学 化学療法の領域34 225−230
感染性心内膜炎の発症リスクが高い心臓の病気等
高い発症リスク |
人工弁置換/感染性心内膜炎の既往/チアノーゼ性先天性心疾患/シャント手術 |
中等度の発症リスク |
ほとんどの先天性心疾患/後天性弁膜症/弁逆流を伴う僧帽弁逸脱/閉塞性肥大型心筋症/ペースメーカー埋込 |
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歯科治療と抗生物質(抗菌薬)
1950年代から感染性心内膜炎の発症リスクが高い患者さんは、発症予防のために歯科治療時に抗生物質を投与されていました。1990年代半ばから見直しがおこなわれ、以前に比べると歯科治療時に抗生物質を投与されることは少なくなりました。見直しがおこなわれた理由として下記が挙げられます。
1)歯科治療で発症するリスクよりも日常生活での発症リスクの方が高い。
2)抗生物質の服用はあまり大きな効果を発揮しない。
3)口内の衛生状態を良好に保つほうが重要(歯みがき、歯科検診)。
日本小児歯科学会会員へのアンケート調査では、
感染先生心内膜炎の予防のため抗生物質を投与したことのある歯科医師は97%、心臓に病気があるお子さん全てに投与する歯科医師は1/4、高い発症リスクのあるお子さんのみ投与する歯科医師が3/4でした。
「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」(日本循環器学会ほか)によると、日本では歯科治療時の服用を推奨しているものの、欧米では推奨しないこともあります。
歯科治療時の抗生物質の服用にあたっては、医師、歯科医師と相談のうえで決めていきます。
歯科治療時の抗生物質の服用
|
従来 |
日本 |
アメリカ |
ヨーロッパ |
高い発症リスク |
推奨 |
強く推奨 |
弱く推奨 |
弱く推奨 |
中等度の発症リスク |
推奨 |
弱く推奨 |
推奨しない |
推奨しない |
※下記団体のガイドラインをもとに記載
日本:日本循環器学会、日本心臓病学会ほか アメリカ:アメリカ心臓協会 ヨーロッパ:ヨーロッパ心臓病学会
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抗生物質の種類
感染性心内膜炎の予防のために
歯科治療時に投与される抗生物質としては、アモキシシリン(サワシリンほか)が最も多くほとんどを占めます。その他の抗生物質としてアジスロマイシン(ジスロマックほか)、クラリスロマイシン(クラリスほか)が投与されます。多くは歯科治療開始の1時間前に服用します。
●
抗生物質以外の予防方法
歯科治療前に抗生物質を服用したから、低リスクの心臓の病気だから感染性心内膜炎を発症しないわけではありません。口内が汚れていたり、虫歯が多かったり、歯肉に炎症がおきていると、感染性心内膜炎の発症リスクが高まります。日ごろから自宅や歯科医院で十分な予防処置をおこなうことも重要となります。
関連するページ 歯科検診
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