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疾患と症状

心療内科・精神科の疾患とは

睡眠障碍

一般の不眠症は原発性不眠症と呼ばれます。なかなか眠りにつけない入眠困難、途中で目が覚めてしまう中途覚醒、朝早く目が覚める早朝覚醒があります。不安や緊張が高まると入眠困難を起こしますし、抑うつ的な状態では早朝覚醒が認められます。

規則正しい生活、ストレスの軽減、リラックスを心がける、カフェインやアルコールの摂取を減らすなどの工夫によって改善しますが、それでも不眠が続くようであれば、睡眠薬の服用を検討します。依存性の少ない非ベンゾジアゼピン系が推奨されます。

十分な時間眠っているはずなのに、昼間強い眠気を感じて、会議中や運転中に眠ってしまう疾患が睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。睡眠中に気道が狭まり無呼吸を起こすことが原因です。肥っている方に多い病気です。無呼吸⇒睡眠が浅くなる⇒呼吸再開⇒睡眠が深まる⇒無呼吸 というパターンを繰り返し睡眠の質が低下します。当院で睡眠時無呼吸症候群の精密検査はできませんが、疑いがあれば専門医をご紹介します。

うつ病・うつ状態

抑うつは感情状態のひとつで人間を成長させ洞察に向かわせる働きを持っていますので、そのような場合には必ずしも病的ではありません。しかし抑うつが意欲や行動を阻害し、そのことがより一層抑うつ体験を深めるような悪循環を引き起こすとうつ病と呼ばれる状態になります。

憂うつな気分(抑うつ気分)が続き、意欲がなくなり(意欲低下)、考えや行動が緩慢(思考運動制止)になり、生き生きした感覚が失われて(生命感情の喪失)自分を責める気持ちになり(罪責感)死ぬことすら考える(希死念慮)ようになります。睡眠も不規則となり暗いうちに目覚めてしまいます(早朝覚醒)。

うつ病状態では中枢神経系神経伝達物質の生理学的アンバランス(ノルアドレナリンやセロトニンの働きの低下)が起きています。それを誘発するのは、神経生理学的障碍、職場環境などのストレス、親密な関係にある人たちとの葛藤、執着気質と呼ばれる完璧主義的な性格傾向などです。様々な要因が関係しています。

うつ病の治療には薬物療法と休養が必要です。うつ状態を増悪させる悪循環を断ち切るためです。

抗うつ薬(SSRI、SNRI、NaSSA)は全て即効性はなく効果が出るまでに少なくとも2週間は必要であり根気よく服用を続ける必要があります。これらは精神を直接活性化させるのではなく、心身のエネルギーが回復する働きを持っています。服用するとハッピーになる訳ではありません。

治療開始から暫くは十分な休養が必要です。まず抑うつ気分が軽減し、不安緊張も徐々に緩和されます。その後少しずつ意欲の改善がもたらされます。この時期には適切な休養と、多少の心身への刺激(軽い運動や散歩、あまり負担のない気晴らし)のバランスを取りながら、心身のエネルギーの回復を待ちます。

はっきりとしたストレス要因があるなら、それから距離を置かなければなりません。現実の中でストレス対処を工夫するだけでは不十分であれば、休職や休学をすることも必要となります。

パニック障碍

不安障碍の代表的な疾患がパニック障碍です。主症状はパニック発作と空間恐怖です。

パニック発作とは、自律神経症状(動悸、息切れ、胸痛、発汗、痺れなど)を伴う強度の不安が発作的に出現することです。発作時の恐怖はこのまま倒れて死んでしまうのではないかと感じるほど強いものです。身体疾患の精密検査を行っても何も異常がみつからないのが特徴です。パニック発作の原因は、緊急時だけに必要とされるパニックを起こす中枢神経系の回路が、平常時に誤作動を起こしてしまうことです。

一度パニック発作を体験すると、発作がおさまった後も、「また発作が来るのではないか」という不安(予期不安)から、助けを呼べないあるいは逃げ出せない場所(新幹線や高速道路など)を避けるようになります。これが空間恐怖です。パニック発作は一度起きると二度三度と続けて起きやすくなり、発作が起きるのではないかと意識すると本当に発作が起きてしまうのが特徴です。つまり発作を巡る悪循環が形成されてしまうのです。

パニック障碍の治療には、SSRIなどでパニック発作の出現を防止し、それと同時にもし発作が起きても慌てず抗不安薬の頓服を服用し発作がおさまるのを待ては大丈夫であることを学習することが必要です。そうすれば発作を巡る悪循環を断つことができます。そして不安の程度が軽減すれば、発作を怖れすぎず徐々に避けている場所にも慣れていくことが大切です。 ば、休職や休学をすることも必要となります。

社交不安障碍

従来は対人恐怖症と呼ばれていた症状です。会議や大学のゼミなど特定の場面で強い不安緊張を感じてそのような場を避けたくなります。手が震え赤面すること、うまく喋れないことを怖れるようになります。

このような不安は、お互いに知っているが親しくはないという中間距離の人間関係の場で起きます。都会の雑踏など互いに関係ない人の集まりでは症状は起きませんし、親しい友人や家族に対しても大丈夫です。

誰でもある程度はこのような不安緊張を体験したことがあるでしょう。ですがあまり症状が強いようであれば、薬を服用することになります。その上で中間距離の人間関係に慣れていくことが大切です。

全般性不安障碍

生きている以上は誰でも不安を抱えていますが、普段は不安に圧倒されないように我々の自我が不安をコントロールしています。何かの要因でこれがうまくいかなくなることがあります。必要以上の不安や理由の定まらない不安や心配が続くようになります。不安の対象は、家庭生活、仕事、学校、近所づきあい、地震などの天災へと拡散していく傾向があります。それと共に動悸、頭痛、めまいなどの身体症状も起きてきます。

このような状態を全般性不安障碍と言います。

不安によって日常生活に支障があるようなら、薬が必要になります。

適応障碍

環境にうまく適応することができず、さまざまな心身の症状があらわれて社会生活に支障をきたしている状態です。職場での人間関係、職務上の責任、結婚生活における葛藤、学校生活に馴染めないことなどから引き起こされます。不眠、食欲不振、全身倦怠感、易疲労感、頭痛などの身体症状が自覚され、不安感が高まり、抑うつ感を自覚するようになります。社会人の方であれば、仕事上のミスや不注意が誘発され、次第に対人関係や社会的機能が低下して行きます。そうすると症状もより一層顕著になります。

この悪循環が続けばうつ病や不安障碍になりますから、適応障碍はそれらの準備状態と言うことができます。

ストレスが軽減されるよう環境調整を行う必要があります。薬のの服用も有効です。

身体表現性障碍

嘔気、手足の麻痺、痛みや痺れなどの症状が起持続しますが、症状を裏付ける身体医学的基礎疾患が見当たらない、あるいは基礎疾患があっても症状の強度と一致しない場合に身体化障碍と診断されます。背景に何らかのストレス要因が関与していると言われていますが、臨床的には明確でない場合も多いようです。慢性的に軽度に続いていた症状が、ストレスによる負荷が高まることでより強く感じられるようになることが発症のメカニズムです。

身体表現性障碍は慢性症状であることがほとんどなので、薬を服用しながらうまく症状と折り合いをつけていくことが必要です。

摂食障碍

拒食症・過食症のことです。二つのタイプがあります。

☆ストレス反応としての過食症

職場のストレス、身近な人との葛藤が引き金となり、過食になることがあります。お腹が一杯のはずなのに強い空腹感を感じて、パンやスナック菓子などを衝動的に食べてしまいます。あまりおいしいという感覚はありません。ストレス対処ができるようになると収まることが多いのですが、嘔吐する習慣がつくと慢性化するので注意が必要です。抗うつ薬が補助的に有効です。ほとんどが女性です。

☆ダイエットを契機とする拒食症、そのリバウンドの過食症

かつては極度のやせを維持しようとする拒食主体の例が多かったのですが、現代ではダイエットが一時的に成功したが故のリバウンドによる過食あるいは過食・嘔吐が主体の方が激増しました。ほとんどが女性です。やせていることをよしとする価値観があるためです。無理にダイエットをすると、体重減少とともに過食衝動も高まりますので、ある限界を超えると過食が始まります。いわゆるリバウンド現象です。無理なダイエットをやめればある程度肥りますが自然に改善するものです。しかし肥ることを怖れて嘔吐するようになると、過食嘔吐が習慣化して改善が極めて困難になります。食べても吐けばいいので食衝動とやせを維持したい願望が妥協してしまうからです。抗うつ薬や抗精神病薬を服用し食衝動をある程度緩和し、少し冷静になってやせること以外の本当の価値を見つけていくとよいのではないでしょうか。

統合失調症

統合失調症は非常に多い精神障碍です。生涯有病率は約0.7%です。

中枢神経系の障碍によって発病する慢性疾患で、急性期には被害的内容の幻聴(例えば「見張っているぞ」という脅しの声が聞こえる)や妄想(例えばマスコミに私生活が暴露されていると確信する)が顕著になり、精神運動興奮や行動障碍が引き起こされます。幻覚や妄想が改善し残遺期(慢性期)になると、思考障碍(思考のまとまりが悪くなる)や引きこもりが目に付くようになります。人格全体に病気の影響が及びます。

病気の原因には、神経伝達物質ドパミンの代謝異常が関係しているという説が有力です。
急性期には幻聴や妄想が著しくなりますが、急性期が過ぎて幻聴や妄想が改善しても病気そのものが消滅したのではないことに注意が必要です。統合失調症には抗精神病薬が著効しますが、服薬中断から再発しやすいことを知っておく必要があります。

根気強く治療することが大切です。

双極性障碍

双極性障碍は、躁状態とうつ状態を反復する疾患です。生涯有病率は研究によって相当の差があり、0.4%-4%です。うつ状態では、うつ病との鑑別が困難なことが多く、躁状態になって初めて双極性障害の診断が確定することも珍しくありません。

双極性障害はストレスによって発症するのではなく、何らかの中枢神経系の異常によるものと言われています。

躁状態になると、気分が高揚し、過活動・攻撃的になるために、自分では快調だと感じていても、破壊的・攻撃的な言動を取ってしまいがちなために、社会生活にダメージが及ぶこともしばしばあります。うつ状態では、抑うつ気分・意欲低下・思考運動制止が一定期間持続します。

幸いにも、感情調整薬を継続して服用することで、躁状態・うつ状態の反復はかなり予防できます。

自閉スペクトラム症

発達障害とも言われます。

生まれつきの中枢神経系の障碍で、養育や環境が原因ではありません。
社会的関係の障碍、言語コミュニケーションの障碍、想像力の障碍が認められます。自閉症では知的障害が伴います。

こだわりが強く特定のことに偏った興味関心を示します。他人の考えや感情に共感することが困難です。友達付き合いに興味が薄く一人遊びを好みます。

定形発達のお子さんと比較して、発達検査上のアンバランスが大きいのが特徴です。
ご家族や周囲の方々が広汎性発達障碍の特徴を理解し、子供なりのペースで発達していくことを援助することが必要です。

成人に達した方で自閉スペクトラム症であると診断するためには、幼少期に上記の特徴があったことを確認する必要があります。

注意欠如多動症

ADHDと略称されます。

原因はまだわかっていませんが、何らかの中枢神経系の不安定によると考えられており、養育や環境が原因ではありません。

落ち着きがなくじっとしていられない多動性、思ったことをすぐに実行する衝動性、忘れ物やうっかりが多い不注意が症状です。年齢とともに多動性・衝動性は軽減しますが、不注意は持続することが多いです。

幼稚園・保育所や小学校で、学校生活に支障をきたすことをきっかけに、医療機関を受診されることが多いです。症状のために基礎学力の獲得が困難になったり、人間関係が難しくなったりすることが最大の問題です。

その場合にはいくつかの治療薬がありますので、ご相談下さい。