いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療の一つに外科手術があります。外科手術は、扁桃肥大、口蓋垂が長いときなどに適応となります。
●口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP) 耳鼻咽喉科(入院が必要)
1978年に日本人の藤田史郎先生によって始められた、睡眠時無呼吸症候群の代表的な手術です。
口蓋垂を含めた軟口蓋を切除します。次に口側と鼻側の粘膜を縫い合わせ、突っ張るような緊張状態をつくります。これにより、空気の通り道が確保できます。扁桃肥大があり、軟口蓋が長い人に有効な方法です。
無呼吸や低呼吸の回数が50%以上減少するケースは、50%前後となっています。改善したものの、2〜3年で無呼吸が再発することもあります。
そのため、欧米では睡眠時無呼吸症候群の治療の第1選択とはならず、CPAPによる治療が主流となっています。日本でも1998年にCPAPによる治療が、2004年にスリープスプリントが健康保険適応になったため、現在ではこれらの治療法が多用されています。
適応症 ※下記項目全てに当てはまると、適応になる可能性が高いといえます。
睡眠時無呼吸症候群/扁桃肥大/肥満ではない/あごが小さくない/重症の睡眠時無呼吸症候群ではない(AHI50以下)/若い(45歳以下)
手術前(左)と手術後(右)
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※扁桃(へんとう)とは
以前は扁桃腺といいましたが、現在は「扁桃」といいます。口を大きく開けてのどの中をみると、口蓋垂の両側にあるのが一般にいわれる扁桃、正しくは口蓋扁桃です。扁桃には、他にものどの一番上にある咽頭扁桃(アデノイド)などがあります。
扁桃
●オトガイ舌骨前方牽引術(GA) 口腔外科、耳鼻咽喉科(入院が必要)
オトガイ舌骨前方牽引術(オトガイ‐舌筋/舌骨筋群前方牽引術)は、1984年にスタンフォード大学(アメリカ)の医師によって始められました。舌の根元からのどにかけての部位が狭いときにおこなわれ、睡眠時無呼吸症候群の患者さんに対してもおこなわれます。
舌の筋肉を前に引っ張ることで気道を広げる手術で、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)と併用することで効果はさらに高くなります。併用での無呼吸、低呼吸の減少率は70%程度とされています。口蓋垂軟口蓋咽頭形成術と同様に、全身麻酔での手術となり、入院が必要となります。
●いびきのレーザー手術(LAUP) 美容外科、耳鼻咽喉科
いびきのレーザー手術(レーザー口蓋垂軟口蓋形成術)は1986年に紹介され、1994年にフランスの耳鼻科医の論文発表によって世界で知られるようになりました。
レーザーで口蓋垂の下半分を切り取ることにより、いびきを改善する手術です。UPPPよりも切除する部分は少なく、手術後の痛みは少なく、出血はほとんどありません。手術に伴う入院の必要なく、20〜30分で終わります。健康保険適応外で、治療費は3〜20万円ほどです。
短期では症状が改善することはあっても、長期的には症状をかえって悪化させてしまうという、治療効果に否定的な意見が多くあります。そのため、2000年代後半には各学会により、治療を推奨しない声明が相次いでなされました。
アメリカ睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine)では、睡眠時無呼吸症候群を含む睡眠呼吸障害の治療にLAUPを用いるべきでないとの勧告をおこなっています。
日本でも日本睡眠学会、日本呼吸器学会、日本口
腔・咽頭学会など、関係する5つの学会が共同で作成した「睡眠時無呼吸症候群の診断と治療のガイドライン」で、「手術前後のデータが不十分、睡眠時無呼吸症候群への適応は慎重に判断する必要がある」としています。
黄色の部分をレーザーを利用して切除します
●ラジオ波(高周波)による治療(ラジオ波電気凝固治療) 耳鼻咽喉科
ラジオ波治療器(ソムノプラスティー、コブレーション、セロンなど)利用して、鼻の粘膜をラジオ波で蒸散し、鼻のとおりをよくすることで、症状を改善させます。1998年に始められ、電気メスやレーザーが750〜900℃で熱してしまうのに対し、ラジオ波は60〜90℃という低温で治療をおこなうことができます。
日帰りの10分程度の痛みの少ない簡単な手術ですが、欠点として1〜2年で症状が元に戻ってしまうことがること、適応症例が限られることが挙げられます。
●アデノイド・扁桃摘出術 耳鼻咽喉科(入院が必要)
アデノイド(咽頭扁桃)は4〜6歳頃、扁桃(扁桃腺、口蓋扁桃)は5〜7歳頃に最も大きくなります。小児の睡眠時無呼吸症候群の大半はアデノイド、扁桃が大きすぎることが原因のため、小児に対してはアデノイド・扁桃摘出術が非常に有効です。
成人ではアデノイド、扁桃は小さくなっていることが多いものの、感染を繰り返していると扁桃は小さくならないことがあります。中等度以上の扁桃肥大で有効なことがあります。
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●鼻中隔矯正手術、粘膜下下鼻甲介切除術 耳鼻咽喉科
鼻中隔(びちゅうかく)とは、鼻を左右に分ける壁のことです。この壁が曲がっていると鼻呼吸ができなくなり、口呼吸やいびきの原因となります。下鼻甲介(かびこうかい)は鼻の中にある突起物ですが、鼻炎の原因となることがあります。
曲がった鼻中隔を整えたり、下鼻甲介を切除することにより、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善されることがあります。九州の医科大学が鼻中隔矯正手術、粘膜下下鼻甲介切除術をおこなった患者さんを調査したところ、AHI(1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数)は27.6回から20.7回に、25%程度減ったとのことです。
CPAPやマウスピースがうまくつけられない原因が鼻であることは多くあります。最初に鼻中隔矯正手術、粘膜下下鼻甲介切除手術をおこない、鼻の通気をよくしてから、CPAPやスリープスプリントによる治療をおこなうこともあります。補助的な治療としておこなわれます。
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●その他
気管切開、舌の一部を切除する方法(舌縮小術)などがあります。気管切開は、CPAPが登場するまでは、重度の睡眠時無呼吸症候群の唯一の確実な方法でしたが、現在では緊急時以外はおこなわれなくなりました。
最近ではあごを大きくする手術(上下顎骨前方移動術、骨延長術など)が一部の医療機関でおこなわれています。
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睡眠時無呼吸症候群の外科手術は耳鼻咽喉科、口腔外科などでおこなっています。当クリニックではおこなっていません。受診する医療機関がお分かりにならない場合は、症状を診させていただいた後に、医療機関をご紹介させていただくことも可能です。
※いびき治療の受診をご希望の方は、お手数ですが事前にご予約ください。
※当クリニックへのアクセスについては、下記のページをご覧ください。
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