●口腔がんとは
口腔がんは、舌、歯肉、頬粘膜、口唇など口の中に発生する悪性腫瘍のことをいいます。口腔がんは全てのがんの2〜3%を占めます。
日本頭頸部癌学会の調査では、口腔がんの中では
舌が最も多く60%を占め、次いで下あごの歯肉が11%、口底が9%、頬粘膜が9%でした(下図)。
男性が2/3を占め、
50歳以上が8割となっています。最近は20〜30歳代、女性が増加しています。
患者数は増加しており、国立がん研究センターの調査(2022年)によると、2019年に口腔がん(咽頭がんも含める)と診断された数は23671例(男性16463例、女性7208例)、2020年に亡くなった人は7827人(男性5547人、女性2280人)でした。
発生部位
当クリニックは、国立がん研究センター連携歯科医院、横浜市周術期連携歯科医院に認定されています。
関連するページ 舌がん 舌がんの治療 口腔がんの予防方法(白板症、紅板症など)
●
口腔がんと同時に発症するがん
口腔がんと他のがんを同時に発症(多発がん、重複がん)する人は増加しています。原因として患者年齢の高齢化、口腔がんの治癒率の向上、食生活などがあります。
口腔がんと同時に発症するがんとしては、咽頭がん、食道がん、胃がん、肺がんが多い傾向にあります。
関連するページ 口腔・咽頭がんとHPV
●
口腔がんのセルフチェック
自分自身でできる検査としては下記の項目があります。当てはまる項目が多いときは、歯科医院などの医療機関を受診して検査をおこないます。
口の中の粘膜が白く、もしくは赤くなっている部分がある。
口の中に「しこり」、「腫れ」など膨らんだ部分がある。
頬や舌が動かしにくい、痛い、違和感がある。
2週間以上も治らない口内炎がある。
口の中から出血がある。
入れ歯が合わない、痛みがある。
歯がグラグラするが原因は不明。
首の周りのリンパ節が腫れている。
しゃべりにくい。
舌側縁にできた舌がん
関連するページ 口腔がん Q&A 口内炎 口内炎の治療
●
口腔がん検診の方法
口は直接目で見て、手で触ることができるため、検診は問診、視診、触診が中心となります。口腔がんの特徴として首のリンパ節に転移しやすいことから、首のリンパ節の視診、触診もおこないます。
疑わしい病変が見つかった場合は、入れ歯やつめ物の調整、とがった歯を丸めるなどして、2週間ほど様子を見ていくこともあります。明らかに口腔がんと思える病変があったり、原因を除去しても変化がなかったり、病変が大きくなったりしているようであれば、歯科大学病院などで精密検査をおこないます。
精密検査では、細胞や組織を取り出して顕微鏡でがん細胞がないかを調べます(細胞診、組織診)。口腔がんと診断された場合は、がんの大きさや他の組織への広がりを調べるため、CTやMRIによる検査をおこないます。
口腔がん検診の種類
方法 |
診断 |
痛み |
当院の対応 |
視診 |
目で診査 |
当日 |
なし |
〇 |
触診 |
触って診査 |
口腔がん検査機 |
光を当てて診査 |
細胞診 |
細胞を取り観察 |
後日 |
あり |
×(紹介) |
組織診 |
組織をとり観察 |
CT MRI |
画像を撮影 |
なし |
口腔がん検診の流れ
※数字は神奈川県歯科医師会がおこなった口腔がん検診10697人の結果。
●
口腔がん検診のメリット
他のがん検診に比べると、口腔がん検診はレントゲン写真の撮影などが必要でないことが多く、簡単に検診ができます。発見できるがんの割合も、他のがん検診と変わりません(下図)。
口腔がんの死亡率は日本では34%(2018年)となっており、アメリカ(19%、2016年)の2倍ほどとなっています。これはアメリカ比べると、口腔がん検診を受診できる体制が整っていないことが一因です。
日本では口腔がんの35%はステージ4(がんが大きくなり、転移した状態)で発見されており、ステージ4で発見される割合は公的健診のある胃がん、大腸がんの2倍、乳がんの8倍となっています。
口腔がんの発症までには通常5〜10年かかるとされ、多くは白板症などを経て発症します。
何らかの症状があらわれたとき、心配に思ったときだけでなく、歯科医院での虫歯や歯周病の検診の際などに、定期的に口腔がん検診も受けられることをお勧めします。
また、口腔がん検診によって白板症、紅板症、扁平苔癬(へんぺいたいせん)など、がんになることのある病気が、1%程度の人に見つかります。
がん検診の実績
※東歯大:東京歯科大学がおこなった口腔がん検診(2.08万人) ※神奈川:神奈川県歯科医師会がおこなった口腔がん検診(1.06万人) ※胃がん:市区町村における胃がん検診(2018年度、248万人) ※肺がん:市区町村がおこなった肺がん検診(2018年407万人)
関連するページ 口腔扁平苔癬 口腔扁平苔癬と口腔がん 歯科検診
●口腔がん検診の実施場所
口腔がん検診は、中川駅前歯科クリニックを含む一部の歯科医院、病院口腔外科、歯科医師会などでおこなっています。
2006年度から2016年度までの間に神奈川県歯科医師会がおこなった口腔がん検診では10697人が受診し、11人が口腔がんと診断されました。検診での発見率は0.10%となり、検診としては胃がん検診と同程度、肺がん検診より高い発見率となっています。
オーラルID
口腔がん検診を希望の方は、お手数ですが事前に電話(045-910-2277)にてご予約ください。当クリニックは口腔がん検診協力医が在籍しているほか、問診、視診、触診、オーラルID(口腔がん検査機)を使用して口腔がん検診をおこなっています。
口腔がん検診の費用は3割負担の方で1000〜2000円ほどです。
関連するページ オーラルID(口腔がん検査機)
●
もしも口腔がんが見つかったときは
もしも口腔がんが見つかったときは、がん治療が始まるまでに2〜4週間ほどの期間があります。その間に虫歯や歯周病の予防処置や治療を済ませておきます。
がん治療をおこなうと、口内炎、口腔粘膜炎、ドライマウス(口腔乾燥症)、味覚障害など、口の中に様々な合併症が発症します。口腔がんは生存率の高いがんではありますが、痛みが強く治療を中断することもあり、治療の中断は生命を脅かすことにもなりかねません。
がん治療前に虫歯や歯周病の予防処置や治療を済ませると、痛みが軽減され、感染症などの合併症の発生率が低下することが明らかにされています。治療の成功率を高め、入院日数を減らすこともできます。
がん治療前に歯科治療を
関連するページ がん治療前の歯科治療 がん治療前の歯科治療 Q&A
※当クリニックへのアクセスについては、下記のページをご覧ください。
交通アクセス・駐車場案内図(横浜市都筑区、港北区など近隣よりご来院の方)
青葉区・宮前区からのご来院(横浜市青葉区、川崎市宮前区からご来院の方)
小田急線沿線からのご来院(東京都町田市、川崎市麻生区、多摩区などからご来院の方)
横浜線沿線からのご来院(横浜市緑区、相模原市などからご来院の方)
南武線沿線からのご来院(川崎市中原区、高津区などからご来院の方)
広域路線図 広域道路地図(神奈川県、東京都からご来院の方)
新幹線・飛行機でのご来院(神奈川県、東京都以外からご来院の方)
関連するページ がん治療前後の歯科治療 舌痛症(舌の痛み、違和感) 歯科検診