口腔扁平苔癬
自覚症状としては接触痛が最も多く、食べ物が当たると痛い、舌を少し動かすだけで痛い、触ると痛いので歯をみがけないといった症状が現れます。そのほかの症状としては、口の中の荒れや出血、灼熱感、味覚障害(味覚異常)、摂食障害(痛くて食べられない)などがあります。
口腔扁平苔癬の概要※1−5ほか
医療機関 | 対象患者数 | 概要 |
新潟大学 | 46人 | 女性が89%。60歳代が最も多く、次いで50歳代が多かった。発症部位は頬粘膜が58%、歯肉が30%、舌が6%であった。 |
東京医科 歯科大学 |
135人 | 女性が78%。60歳代が最も多く、次いで50歳代が多かった。主訴は接触痛が27%、灼熱感が15%、痛みのための摂食障害が12%。 発症部位は頬粘膜が30%、歯肉と頬の境界が24%、歯肉が23%。78%が両側に発症。 |
大阪大学 | 167人 | 女性が72%。50歳代が最も多く、次いで60歳代が多かった。発症部位は頬粘膜が71%、歯肉が14%、舌が7%。 |
岡山大学 | 62人 | 女性が60%。60歳代が最も多く、次いで50歳代が多かった。主訴は接触痛が30%が最も多かった。発症部位は頬粘膜が66%、下顎歯肉が16%、口唇と舌が各9%。 |
明海大学 | 100人 |
女性が74%、60歳代が最く、次いで50歳代が多かった。発症部位は頬粘膜が69%、歯肉が21%であった。症状はしみる、灼熱感が29%で最も多く、接触痛が18%であった。
|
当院 | 100人 | 女性が81%。60歳代が最も多く、次いで50歳代が多かった。医科の医療機関で治らなかった患者様が、金属アレルギーの治療を希望しての来院が多い。主訴は接触痛が最も多く、発症部位は歯科金属に接した頬粘膜と歯肉が多い。 |
原因は不明とされていますが、金属アレルギー、口内の汚れ、喫煙、ガルバニー電流(口内の金属間に生じる電流)、ストレス、C型肝炎ウイルス、薬剤アレルギー、移植片対宿主病(GVHD)、ビタミンA欠乏などが原因、あるいは症状を悪化させる因子と考えられています。
1)金属アレルギー
金属アレルギーは発症に大きく関与しているとされ、銀歯や入れ歯の金属バネなど金属に接する粘膜がただれたり、潰瘍ができることが多い傾向があります。金属を除去すると症状が改善することがあることがあります。
歯科金属のなかでは、アマルガム合金(水銀が含まれた銀歯)に接する部位の発症率が高い傾向があります。
アマルガム合金
関連するページ 歯科金属によるアレルギーについて アマルガム合金
2)口内の汚れ、ガルバニー電流、喫煙
口内の汚れやガルバニー電流は、銀歯などの金属が腐食して溶け出す要因となるため、間接的に関与しているとされています。歯科医院で口内をきれいにしたら症状が改善されたとの報告は多くあります。
喫煙やストレスは免疫力を低下させるため、口腔扁平苔癬の症状を悪化させる要因となっているとされています。
関連するページ ガルバニー電流 タバコ
3)C型肝炎ウイルス
C型肝炎ウイルス感染者に患者さんが多いことから、C型肝炎ウイルスも口腔扁平苔癬の発症に何らかの関わりがあると考えられています。
4)薬剤アレルギー
薬剤アレルギーでは、非ステロイド性抗炎症薬(ステロイドではない抗炎症剤、鎮痛・解熱剤)、経口血糖降下薬、β遮断薬(血圧の薬)、利尿薬などが報告されています。
●口腔扁平苔癬の検査と診断
がんのほか、白板症、紅板症、慢性カンジダ症といったがんになりやすい病気「口腔潜在的悪性疾患(OPDM)」のほか、悪性腫瘍、たばこやウイルスを原因とする口内炎との鑑別が必要なこともあります。
検査は、発症部位の組織を切り取り、顕微鏡などを使用して調べます(病理組織検査)。病院の口腔外科や皮膚科などの医療機関でおこないます。
金属アレルギーの検査(パッチテスト)は、歯科治療に使用される金属に対応した絆創膏(ばんそうこう)を皮膚に貼り、どの金属にアレルギーがあるかを調べます。主に皮膚科でおこないます。
病理組織検査 パッチテスト
当クリニックでは口腔扁平苔癬の病理組織検査はおこなっておりません。検査をおこなっている医療機関がお分かりにならない場合は、症状を診させていただいた後に、適切な医療機関をご紹介させていただくことも可能です。
関連するページ 口腔扁平苔癬と口腔がん 口腔がん検診 口腔カンジダ症
●口腔扁平苔癬の治療
薬による治療のほか、金属の交換、歯周病治療、歯の清掃、歯の形態修正などがおこなわれます。難治性のため、治療は長期にわたることがあります。
自覚症状がなければ、治療をおこなわずに経過観察をしていくこともあります。治療をおこなわなかったときに自然に治る割合(自然治癒率)は、2〜3%程度とされています。
頬の粘膜にできた口腔扁平苔癬(白くなっている部分)
関連するページ 口腔扁平苔癬の治療 口腔扁平苔癬の治療の流れ
●口腔扁平苔癬の診療科
口腔扁平苔癬は一部の歯科、口腔外科、皮膚科、耳鼻咽喉科などで治療をおこないます。
お気軽にご相談ください
当クリニックで口腔扁平苔癬の治療やご相談をご希望の方は、お手数ですが事前にご予約ください(電話番号:045-910-2277)。
※1 ITO Daisuke、SATO Masaru Clinical Study on 135 Cases of Oral Lichen Planus Journal
of Japanese Society for Oral Mucous Membrane 15(1)22-28 ※2 吉川文弘、椿本有利子、森山知是、墨哲郎、菅原利夫、作田正義 過去10年間に当科を受診した口腔粘膜疾患678例の臨床的検討 日本口腔科学会雜誌
46(3)244-250 ※3 IWATA Masahiro、NISHIJIMA Yutaka、NISHIJIMA Katsumi Clinical
Evaluation of Oral Lichen Planus Journal of Japanese Society for Oral
Mucous Membrane 2(2)95-101 ※4 SHIGEMATSU HISAO、NOGUCHI KAZUHISA Clinical
Investigation of Oral Lichen Planus Japanese journal of oral diagnosis/oral
medicine 12(2)347-352 ※5 齋藤太郎,小山貴寛,黒川 亮,木律男:新潟大学医歯学総合病院顎顔面口腔外科における口腔扁平苔癬患者の臨床統計的検討.新潟歯学会誌 48(1):23-27
※当クリニックへのアクセスについては、下記のページをご覧ください。
交通アクセス・駐車場案内図(横浜市都筑区、港北区など近隣よりご来院の方)
青葉区・宮前区からのご来院(横浜市青葉区、川崎市宮前区からご来院の方)
小田急線沿線からのご来院(東京都町田市、川崎市麻生区、多摩区などからご来院の方)
横浜線沿線からのご来院(横浜市緑区、相模原市などからご来院の方)
南武線沿線からのご来院(川崎市中原区、高津区などからご来院の方)
広域路線図 広域道路地図(神奈川県、東京都からご来院の方)
新幹線・飛行機でのご来院(神奈川県、東京都以外からご来院の方)
関連するページ 歯科金属アレルギー 扁平苔癬 舌痛症(舌の痛み、違和感)