●歯周病治療による糖尿病の改善効果※1、2etc.

1997年、アメリカ・ニューヨーク州立大学の研究者らによって、歯周病治療をおこなうことで糖尿病の症状が改善することが明らかにされました。それまでいくつかの症例報告はあったものの、本格的な研究報告としては最初のものとなりました。

この研究報告では、糖尿病の人に対して歯石の除去や歯のクリーニング(PMTC)、投薬などの歯周病治療をおこなった結果、ヘモグロビンA1c(HbA1c)は0.51%〜0.94%も改善し、最大で1%近くも改善しました。

同様の研究報告は、その後日本や世界で相次いで報告されました。歯周病治療により、血糖値やヘモグロビンA1cが改善します。


歯周病治療によるヘモグロビンA1c(HbA1c)の改善効果
研究者 治療開始時のHbA1c 歯周病治療の効果
(歯周ポケットの変化)
HbA1cの
改善効果
ニューヨーク州立大学
(アメリカ)
9〜10% 5mm以上が40%から20%に減少 0.5〜0.9%
サンパウロ大学(ブラジル) 8.8% 平均3.2mmから2.3mmに減少 0.3〜1.2%
スュレイマン・デミレル大学
(ドルコ)
7.3% 平均2.3mmから1.8mmに減少 0.8%
マドリード・コンプルテンセ大学
(スペイン)
7.2% 平均4.1mmから3.0mmに減少 1.3%
岡山大学(日本)※JDS値 7.9% 0.5mm減少 0.8%

※ヘモグロビンA1c(HbA1c、ヘモグロビンエーワンシー)とは
赤血球の中にあるタンパク質「ヘモグロビン(Hb)」とブドウ糖が結合したものがグリコヘモグロビンです。グリコヘモグロビンにはいくつかの種類かあり、糖尿病と関係があるのがヘモグロビンA1cです。
ヘモグロビンA1cは過去1〜2ヶ月の平均的な血糖値を示す値です。6.5%以上であれば糖尿病である可能性が高く、糖尿病患者では6.5%未満を維持できれば合併症がおこる危険は少なくなります。
血糖値は検査前後の食事内容、体調などによって変化しやすい不安定な値のため、糖尿病治療には、ヘモグロビンA1cの値を下げることを目標とするほうがよいとされています。

※歯周ポケットとは
歯と歯肉の間にある溝。通常、歯周ポケットの深さは1〜2mmですが、歯周病が進行すると溝は深くなります。



診察 歯周病の治療をおこなうと糖尿病の症状も改善

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●ヘモグロビンA1c(HbA1c)が1%改善したときの効果※3

イギリスで4585人を対象におこなわれた大規模な調査(United Kingdom Prospective Diabetes Study)では、ヘモグロビンA1c(HbA1c)が1%改善すると、末梢血管の障害による手足の切断や死亡を43%、心筋梗塞を14%、脳卒中を12%低下させることが可能としています。

また、糖尿病に関連した全死亡も21%予防できるととしており、ヘモグロビンA1c(HbA1c)1%の改善は大きな意義をもちます。


ヘモグロビンA1c(HbA1c)が1%改善したときの効果※3
ヘモグロビンA1c(HbA1c)が1%改善したときの効果



●歯周病の治療をおこなうと糖尿病の症状が改善する理由※3、4、5

「TNF-α(ティーエヌエフ・アルファ)」という物質は、インスリンの働きを悪くさせ(インスリン抵抗性)、糖尿病の症状を悪化させる作用があります。

肥満の人の内臓脂肪組織にはTNF-αが多く見られます。これは、TNF-αが脂肪組織でつくられるためです。

歯周病が進行すると、TNF-αが多くなります。これは、歯周病菌が毒素(内毒素)をたくさんつくり、この毒素による反応として細胞(マクロファージ)がTNF-αを大量につくるためです。

歯周病の治療をおこなうと、歯周病菌が減り、細胞がTNF-αをつくるのを抑えることができ、結果的にインスリンの働きがよくなり、糖尿病の症状も改善します。


歯周病の治療をおこなうと糖尿病の症状が改善する理由 歯周病治療の効果

※インスリンとは
インスリンは血糖(血液中に含まれているブドウ糖)を下げるホルモンです。食後に血糖が上がらないように調節するほか、血液中のブドウ糖を体内の細胞に送り込んで、エネルギーに変えたり、脂肪に変えてエネルギーとして蓄える働きがあります。
インスリンの働きが悪くなるとブドウ糖が体内の細胞に送り込まれず、血液中のブドウ糖が利用されなくなります。その結果、血糖が上がります。血糖が上がると、筋肉や内臓にブドウ糖(エネルギー)が運ばれないため、体がだるくなるなどの症状がでます。


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●医科歯科連携

糖尿病治療をおこなうためには、歯周病の治療が欠かせないものとなっています。2007年に日本糖尿病協会と日本歯科医師会が連携を始めたほか、全国各地で医師会と歯科医師会が連携して、糖尿病治療にあたる取り組みが進んでいます。

神奈川県では、横浜市医師会と横浜市歯科医師会が協定を結び、連携して糖尿病治療をおこなっています。当クリニックもこの連携治療に参加しています。


月間糖尿病 糖尿病第6の合併症:歯周病 糖尿病に携わる医師が読む専門誌でも歯周病を特集



※1 Grossi SG, Skrepcinski FB, DeCaro T, Robertson DC, Ho AW, Dunford RG, Genco RJ : Treatment of periodontal disease in diabetics reduces glycated hemoglobin. J Periodontol 68:713-719.  ※2 Iwamoto Y, Nishimura F, Nakagawa M, Sugimoto H, Shikata K, Makino H, Fukuda T, Tsuji T,Iwamoto M, Murayama Y : The effect of anti−microbial periodontal treatment on circulating tumor necrosis factor−alpha and glycated hemoglobin level in patients with type2diabetes. J Periodontol, 72: 774-778.  ※3 Stratton IM, Adler AI, Neil HA, Matthews DR, Manley SE, Cull CA, Hadden D, Turner RC, Holman RR : Association of glycaemia with macrovascular and microvascular complications of type2diabetes(UKPDS 35):prospective observational study. BMJ,321:405-412,.  ※4 Uysal KT, Wiesbrock SM, Marino MW, Hotamisligil GS : Protection from obesity−induced insulin resistance in mice lacking TNF−alpha function. Nature,389:610−614.  ※5 Hotamisligil GS, Peraldi P, Budavari A, Ellis R, White MF, Spiegelman BM : IRS−1−mediated inhibition of insulin receptor tyrosine kinase activity in TNF−alpha−and obesity−induced insulin resistance. Science,271:665−66.



当クニックは日本歯周病学会、日本糖尿病協会に所属する歯科医師が在籍しています。また、横浜市医師会、横浜市歯科医師会がおこなう「横浜市糖尿病医科歯科連携」の登録医に認定されています

当クリニックでは管理栄養士が在籍し、糖尿病の方の栄養相談、食事相談をおこなっています。お気軽にご相談ください。



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